※全ての画像と文章の無断転用を禁止します。 | ――まず2年前に遡って、1stアルバムの『エンドルフィン』を振り返ってもらいたいんだけど。 鈴木(DJ): 初めてだったからねぇ、どうやってアルバム作っていいか分からなかった。 和田(MC): 出だしとか、こりゃ絶対できねぇや、みたいな。 坪井(MC): だってさぁ、1年にシングル1枚しか出したことなかったんだよ、自分たちの曲が10曲とか並んだこともないのに1ヵ月とか2ヵ月で10何曲も作ってさ。それに、明日までに何小節書いてとかテーマは何にしようかとか、そういう生活にまだ馴れてなかったんだよね。 ――ビートルズや宇多田ヒカルと同じレコード会社のアーティストとは思えない発言だね……で、基本的に去年は何にもやってないよね。 坪井: 去年? いっぱいやったよ! ――シングル2枚出しただけでしょ。 鈴木: それすげぇ言われるんだけど、そんなにサボってたわけでもないんだよね。クラブ・ツアーもやったたりしたし。 ――夏に新宿リキッドルームでワンマン・ライヴがあったけど、その後からアルバムの制作に入ったって感じ? 鈴木: シングルを作るために合宿に入ったんだけど、そこで3曲ぐらい録る予定だったんだよね。でも、結局シングルしかできなくて。 坪井: よく考えたら俺らが録り貯めみたいなことできるわけないんだよ。 ――合宿に入った時点で、どういうアルバムにしたいとか構想はあった? 鈴木: 全然無かったね。 ――何か話し合ったりしなかったの? 例えば明るい内容にしたい、とか。 和田: いや、どちらかというと暗い方向でいこうって。基本は愚痴だな。 坪井: 愚痴とか不満を「俺ら最悪だよ……ダメだ俺ら」って言うんじゃなくて、「最悪だ! 最悪だよ、俺ら!」って言える強みみたいな。 鈴木: 俺らが一番底辺だから、これ以上の下は無いなぁって。下から突き上げてるみたいなね。テレビ見ててもポジティヴな奴が出てくるとムカついちゃうんだけど、すっげぇネガティヴで毒々しい奴の方が逆にポジティヴに見えるっていうのが何か俺らにはあるかな。 ――そういう人はあんまりテレビに出てこないだろ。 鈴木: そうね(笑)。 ――それにテレビに文句言うなら消せよ。 坪井: テレビ消したら消したでさ、ハンバーガー買ってきたらソースが入ってなかったりして、もう二度とあんなクソなところには行かねぇとか。 ――で、合宿ではどんな成果があったの? ターニング・ポイントになったんでしょ? 和田: 初日から寿司頼んだりして。 坪井: 行ったのが湖のほとりの一軒家だったんだけど、とりあえずずっとゲームやって、飯食って、川に入って、湖に入って……3日もあったからさ、どこか1日の2~3時間でやればいいだろって。 和田: ホント遊んでたよなぁ、2日目とか7時間ぐらいゲームやってたもん。 ――俺だったら契約解除だね。 坪井: でもさ、その3日間ずっ~とどうするどうするってやってたら曲なんかできないんだよ。で、頑張りすぎてもしょうがないんだよってことで出来上がったのが「ガンバリスギDEナイト」。 ――買った人はマジで落ち込むと思うけど……どの辺がターニング・ポイントなわけ? 坪井: 頑張りすぎても意味ないんだよって口にしてから、すごい正当化できるようになってきたんだよね。悩んだって出ないときは出ないんだから思いつくまで遊んでればいいんだよ。 ――そんなのターニング・ポイントじゃねぇよ! 鈴木: 真面目なことを言うとね、頭の中に思い描いていたことを結構忠実にできたのが「ガンバリスギDEナイト」だったんだよね。それまではあまり上手くいってなかったんだけど、これがサラッと出たのは俺の中ででかかったかもしれない。 ――先行シングルの「SPEED STAR」を録るときも合宿したんでしょ? これもすごい難産だったって聞いてるけど。 鈴木: もう、完全に八方塞がりになって……完全だよな? 途中から曲作りとかじゃなくて人の話の揚げ足をとるようになってきたりして。 ――まあでも、そういう合宿で経験したあれやこれやがアルバムにはちゃんと反映されてたりするんでしょ? 鈴木: うん、シングル作る合宿で苦労したからアルバムは結構楽だったよ。 ――そういう苦労があったことと関係あるか分かんないけど、今回のアルバムを聴いて、前より表現がシャープになってきたと思うんだよね。 一同(爆笑) ――笑うところじゃねぇよ! 今回は明確な到達点がある上で作ってる印象があって、前はもうちょっと拡散してる感じがするっていうか。 坪井: でも実際そうだと思う。前は経験のないことが多すぎたんだよね。 ――そういうのと関係あるかどうかはともかくとして、二人ともラップがエモーショナルになった気もするな。 鈴木: 前にも一度言われたよな、エモーショナルになったって話。 ――喜怒哀楽って感情があるとしたらさ、前のアルバムではそういうのを特定しにくかったんだけど、今回は分かるんだよね。 坪井: 前のときは感情出すのが嫌だったし、俺が何をどうしたいのかなんて分かってもらう必要ねぇなって思ってたし。分かられるのもむず痒いみたいなのは正直あった。 和田: 今回に関しては、やりきってやろうみたいな。怒ってる感じのトラックだったら怒っちゃおうみたいなね。 ――「DO DIG DO!!」('02年7月)には曲の最後に「かもね!」って入ってたでしょ? あれは真顔だと恥ずかしいから照れ隠しとして入れたって言ってたけど、今回はその「かもね!」に該当するような部分が見当たらないっていうかさ。 鈴木: そういうのを無くそうっていうのは今回あったかもしれない。だから、さっきコイツ(和田)が言ったやりきるっていうことかな。やりきる方が自然かなぁ、みたいな。器以上のことをやる気は無いけど、そこをやりきるっていうのは重要だってことに気づいてきた。ムカついてるんだったらムカついてるのを出せばいいし、楽しいな ら楽しいのを出せばいいし……さっきのエモーショナルっていうのはそういうところからきてるんじゃないかな。別に意識的ではないんだけど、こっちは。 ――そんなわけで、終盤の「COFFEE SHOP」とか「MISSTTAKE」みたいな感情的で真面目な曲がすごく印象に残るんだよね。 鈴木: 単に飽きたっていうのがあるのかも。包み隠したりとか、ちょっと難しくしたりとかアブストラクトにしたりとか……そういうものも面白いんだけど、単純なものの方が難しいしダイレクトに伝わるし、面白くもあるし。難しいのってすげぇ簡単だと思う。難しいことをやっていくのはすげぇ簡単なんだけど、ダイレクトに感情を出すのって逆に難しいんじゃないかなって。 取材・文●高橋芳朗 | |