'80年代半ばジュジュ(クイーンズ生)とサイコ・レス(サウス・ブロンクス生)の2人が、ビート・キングスとして活動し始めたのが、グループのキャリアのスタートだろうか…。
もともとネイティヴ・タン・ファミリー(注1)周辺のネタ師として、フレッシュなネタをジャングル・ブラザーズらに提供していたらしく、そのジャングル・ブラザーズのメンバー、アフリカ・ベイビー・バムからビートナッツ(ナッツ=キチ@イ)と命名される。そして同じくネイティヴ・タン周辺から出てきたガキ・ラッパー、チ・アリ(注2)が'92年にリリースしたアルバム『The Fabulous Chi-Ali』をほぼ全面で手掛けたことで、アンダーグラウンド・ヒップホップ・シーンで一気に注目を集め、その後、コモン(・センス)、ファット・ジョー、モニー・ラブらをプロデュースすることとなる。
ラッパー、ファッションの加入により新たにヒップホップ・グループとして活動を開始した彼らは、'93年にE.P.『Intoxicated Demons』でデビュー。ジャズを基調としたハードでロウなプロダクション、それに似合わぬ(?)徹底的なパーティ・スタイルにこだわったリリック(注3)は、当時絶頂を極めていた東海岸ハードコア・シーンを見事にリプレゼントした内容で、シーンでの注目度も一気に高まる。
そして翌年には待望のフル・アルバム『The Beatnuts』を完成! 「Props Over Here」や「Get Funky」などのクラシック・ヒットを放ち、待望の初来日を果たす。更に短いスパンで再来日(注4)も果たし、'95年にはなんと、現在ジャパニーズ・ヒップホップをリードするライムスターの曲「20世紀」のリミックスまで手掛け、日本のファンにもその存在をアピール。 このまま活動が軌道に乗るのかと思いきや…、メイン・ラッパーのファッションが突然の脱退。ヒップホップ・グループとしての活動は勿論、プロデュース・ワークも極端に減ってしまい、その存続すら危ぶむ声もチラホラ…。 そんな心配がされる中、'96年に脱退したファッションがアル・タリーク名義でリリースしたソロ・アルバム『God Connections』の大半をビートナッツがプロデュースし、徐々に息を吹き返す。そしてレーベル・コンピレーション『Relativity Urban Assault』に待望の新曲「Find That」を提供。 復活の兆しをより強く感じさせた後の'97年、2人になって初のアルバム『Stone Crazy』をリリースし完全復活を遂げる! このアルバムから本来の彼ららしい「Give Me The Ass」、「Off The Books」と言ったパーティ・アンセムを生み、健在振りを証明。'98年にはシングル・リミックスなどを収めたE.P.『The Spot』をリリースし、その後レーベルをラウドに移籍。'99年にはグレッグ・ナイスやビズ・マーキー、トニー・タッチらが参加した傑作『A Musical Massacre』をリリース。そして2001年にはE.P.を含めると実に6枚目のアルバムとなる『Take It Or Squeeze It』をリリースし、再び来日も果たす。 そして2002年、初のベスト・アルバム『Classic Nuts Vol. 1』を出す運びに! "タイトルに偽りなし!"と言いきれるほど、数々のクラシック~パーティ・アンセムをコンパイルした作品。シングル・ヒット曲を基本として、アルバムの中でも人気だったアンカット(プロモのみのカット)な「Beatnuts Forever」や、メソッド・マンとの共演曲「Se Acabo(REMIX)」辺りまでも収録。モチロンこの手の企画にお約束な新録(未発曲)もバッチリ2曲アリで、こちらもナッツ・フレイヴァたっぷりなミッド・ファンク・チューン。 さらに日本盤にのみYKZとのセルフ・リメイク・ジョイント「Reign Of The Tec 2000」までも収録とは至れり尽せり…。捨て曲ナシの濃縮ナッツを味わえる一品なだけにファンならばもちろん、これまでナッツを味わう機会のなかった人にとっては最良の入門編となるはず。
この機会にぜひオススメしたい。 文●升本 徹 |