予想以上のモノを見せてほしいというキモチは、もちろんオアシスにも言えるわけで、イギリスのみならずアメリカでもブレイクしているんだから、それを期待したって当然だろう。 ファンに言わせると、今回のオアシスは久々に日本でプレイする曲もあって、とてもよかったらしい。ふむ。そんなふうに言われると、イギリスの2大バンドを楽しめない自分は、どこかおかしいんじゃないか? とも思えてくる。 ▲Oasis いい曲だし、いいバンドなんだけど……。やっぱりもう少しメリハリがほしい | オアシスのライヴにおける合唱率はズバ抜けて高いと聞く。実際、今回、前の方で見ていた友人は「客の合唱ばかり聞こえて、バンドの演奏が全然聞こえなかった」と言っていた。つまり一緒になって歌えるか歌えないかが、オアシスのライヴを楽しむポイントになる。確かに曲単位で考えれば、親しみやすい、それこそ一緒に歌いたいと思えるいい曲ばかりだ。だけど、いくらいい曲でも、ほとんど同じテンポの曲を延々と、言葉は悪いけどダラダラと演奏されても……。 きっとオアシスの辞書には「メリハリ」って言葉はないんだろう。ステージはヒット・ナンバーや代表曲を織り混ぜながら終始、同じテンションの高さと、ゆったりしたテンポで淡々と進み、しかも鍵盤奏者を含む6人のミュージシャンが、ただつっ立って黙々と演奏しているだけ。その中で1人嬉々として演奏しているアンディ・ベルの姿を見ていると、別の意味で僕は複雑な気持ちに囚われてしまうんだけれど、まぁ、それはここでは関係ない。 1曲1曲はワッと盛り上がるけど、盛り上がりはそれのブツ切りだから、ライヴ全体の流れとしてダイナミックな波を描くことはない。逆に言えば、それは各曲のクオリティの高さに対する、バンドの自信の表れでもあるんだろう。ファンと一緒に歌える曲を、どれだけ持っているか? そういう意味では、オアシスは非常にすぐれたロック・バンドだ。しかも、ファンにしてみれば、常にハズレはない。でも、僕に言わせれば、逆にスリルもない。 一向に盛り上がらないなぁと思っているうちにステージは終わり、あっけにとられていると、メンバーがぞろぞろと出てきて、アンコールにビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」を演奏した。巨大なカラオケ・マシーン。演奏終了後、友人がポツリと言った一言が印象に残っている。 文●山口智男 |