若き日のGrant Nicholas(シンガー/ギタリスト)が初めて学校で演奏した曲は、The Policeの「Roxanne」とBlack Sabbathの「Paranoid」だったという。それから10年あまり、軽快な音楽と重厚な音楽をともに愛するNicholasの趣味は、トリオバンドのFeederでも変わっていない。『Polythene Girl』は、彼らがアメリカで初めてリリースしたアルバムだ。冒頭の「Polythene Girl」は、シンプルだがひねくれた曲で、痛々しい悲鳴を上げるブリッジが聴く者の目を覚ます。華麗で夢心地の「High」や「Change」と混在しているのは、緊迫するロック「Tangerine」と'60年代風の活気に満ちた「Crash」だ。そして、フックのあるシングル曲「Cement」の偏った歌詞が待ちかまえている。 「ぼくは、ポップミュージックの音とポップミュージックのギターが好きなんだ」とNicholasは熱く語る。「すごいからとしか言いようがないよ」。Nicholasは、ソングライターとして常に正反対の2方向に引っぱられている。そしてそれが、すばらしい音が生まれる理由だ。 サウスウェールズの少年がロックスターを目指すのに、特別なきっかけなど必要ない。Nicholasは、世界的に有名なロックフィールドスタジオに近いモンマスという町の学校に通っていた。「14歳のころ、町でよくRobert Plantを見かけたよ」と彼は振り返る。「友だちと走って行ってサインを貰った」 数年後、その小さい町を出なければならないとNicholasは感じた。「あの町には長く居すぎた」と彼は言う。そこで、John LennonとJudas Priestを愛する彼は、すばらしくひねくれた曲作りの才能を持ってロンドンに到着した。それ以前にバンドを組んでいた友人、Jon Lee(ドラマー)を呼び寄せたのは、まもなくのことだ。こうして、Feederの核が誕生した。その後彼らは、中古車売買やバンドメンバー募集などの個人広告新聞『Loot』を通して、日本人ベーシストのTaka Hiroseとめぐり会う。5年半前のことだった。 次々と流行が変わるイギリスの音楽界で、ポップとロックの両方を取り込んだFeederは、はじめのうち結果を出せなかった。英国風ポップとしては激しすぎ、ハードロックとしてはメロディックすぎる彼らの音楽は、質より流行を追いかける人々にとって得体の知れないものだった。しかし、しばらくして彼らは波に乗る。「半年か1年経ったころかな」とNicholasは嫌な顔をする。 「おれたちのことを見ようとしなかった連中、ライヴにも来なかったまさにその連中が近寄ってきて『最近Feederにハマってるよ』って言うんだ、口先で。だから、こんなふうになったのさ」。「My Perfect Day」や「Tangerine」の行間を読めば、Nicholasの苦痛と皮肉は明らかである。 初心を貫いたFeederは、ようやくトレンド人間たちを見返した。イギリスのEchoレーベルと契約した彼らは、数枚のシングル(「High」は最高24位)とEP「Swim」をリリース。彼らが制作を始めたフルアルバムは、Elektraレーベルを通して全米でリリースされることが決定した。いまや『Polythene』は文字通り、彼らを新世界へと導きつつある。彼らは、初の全米ツアーを開始したのだ。 はっきりとそうは言わないものの、Nicholasが本当に望んでいるのは、人々に音楽をもう少しよく聴いてほしいということ、そして、ポップは必ずしも甘くなくていいし、ロックは大音量でなくてもいいと分かってほしいということだろう。彼は、あるギター雑誌の最近のインタヴューを思い出して言った。 「好きなギタリストを訊かれたんで」と彼はニヤリとする。「George Harrisonとthe PoliceのAndy Summersだって言ったんだよ。そしたら『エッ、あなたはロックをやってるんじゃないんですか!』って言われたんで、『ああ、そうだっけ?』って言っといたよ」 By Janiss Garza/LAUNCH.com |