たゆまなく変化しながら輝く音楽

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たゆまなく変化しながら輝く音楽

 


 

溶岩ランプはかなり常識を超えたしろものだ――そして蛍光色でさまざまに形を変え続けるその塊は、バンドの音楽性をよく表している。Mark Lightcapは承知の上だ。彼はロサンゼルスに本拠を置くトリオ、Acetoneのギタリスト兼ヴォーカルリスト。「いつも照明ショウやディスコパーティなんかから、ライヴギグ用のアイデアをかき集めてる。観客がサイケデリックな雰囲気を楽しめるようにね」

ここ10年ほど、Acetoneは多様な音楽を取り入れてきた。カントリー('94年の快挙となったEP『I Guess I Would』にはGram Parsons、John Prine、Kris Kristoffersonらのカヴァー曲を収録)や、パンクロック('97年のAcetoneツアー)だけでなく、4枚目となる最新アルバム『York Blvd.』はNeil Youngスタイルで一見けだるく、催眠効果をねらっているようだ。

このアルバムは多少、Youngのあの地味で見過ごされがちな傑作『On The Beach』に似ている。そう言うとLightcapはすぐに反応した「あれはずっと僕のお気に入りだったんだ。あのアルバムからはすごく大きな影響を受けたし、今でもいろんな形となって僕の中で生き続けていると思う

今ではAcetoneは、Neil Youngの“Six Degrees Of Separation”に目一杯近づき、Young傘下のVapor Recordsと契約。Lightcapは「まったく謎の人物だよ」と評するが、この伝説的ミュージシャンにまだ会ったことはない。「あのレーベルは(Jim Jarmusch監督の)『Dead Man』のサウンドトラックをリリースするためだったってことだ。現在はYoungのマネジャーが取り仕切っている

Acetoneは'80年代、Spinoutという愉快なサーフパンクバンドとしてスタートしたが、失敗や成功を経て、今では大きく成長した。気まぐれな音楽業界がどういうものかよく心得ている――何しろあのOasisでさえ、彼らのオープニングを務めたことがあるのだから。

そりゃあ、大金は欲しいに決まってる」とLightcap。「でも、名声の内実は案外、惨めなものみたいだし、ロックスターそのものがなんだか安っぽいマンネリに過ぎなくなったんじゃないかと思う。Oasisがいい例さ。ロックスターになろうとして、結局Stonesの安っぽい猿マネになりさがった。華麗で謎めいた雰囲気を出そうとしても、たいていの場合、無理してるのが見え見えなんだよね

このトリオにはもう2人、ベース/ヴォーカルのRichie LeeとドラムのSteve Hadleyがいるが、誰も何も無理などしていない。『York Blvd.』はAcetoneが昨年冬にレコーディングしたのだが、発売日が延期されたため、メンバーはプライベートの計画を入れたほどだ。Lightcapは5カ月間カリフォルニアの山中へ出かけ、大工仕事をしていたという。「気分転換にちょうど良かったよ

こういう突飛なことをやるから、Acetoneはいまだに楽しく、謙虚でいられるのだ。Mazzy StarとSpiritualizedと共にツアーを行なったことで、ヨーロッパやアメリカのあちこちで評判が上がっている。ショウは毎回、何が起きるか本人たちにもわからないという。

初めてのヘッドライナーツアーは2年前、フェニックスが皮切りだったんだけど、これが最悪でね。場所は前にも出たことのあるクラブ。僕たちは通りをはさんで向かいの、油でギトギトの中華料理屋で腹ごしらえしてた。そこへプロモーターがやってきて、こう言うんだ。『誰も来ないぜ、それでもやりたきゃやってもいいが、早めに切り上げてくれ、スタッフを帰してしまいたいから』ってね。だから、あのツアーの初日はプレイせずじまいさ」とLightcapは笑う。「もうやめちまおうかって思ってたら、アルバカーキーでの2日目は最高で、会場はなんと満席だった

このバンドはステージ上の溶岩ランプと同じだ。得体の知れないワックスの塊が空中で溶け、形を変え、融合し続ける。それはAcetone自体が常に変化し続ける姿だ。そして、その音楽はいつも輝いている。

 

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