映画サントラ特集『私が愛したギャングスター』

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音楽と映像の密接な関係――。

アカデミー主演男優ケヴィン・スペイシーが演じるユニークでおちゃめな強盗!

そこにブラーのデーモン・アルバーンが音楽を乗せてポップに仕上げた映画が『私が愛したギャングスター』だ。

一流の俳優と、UKロック・ミュージシャンのさり気ない出会いが融合され、一層ポップ感と楽しさを高めている。そんな爽快、痛快な映画をご紹介しよう。



『私が愛したギャングスター』
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今年3月、映画『アメリカン・ビューティ』で一見平凡な生活を送りながらも常にアメリカ社会が抱える狂気と隣り合わせて生活するちょっぴりマッドな中年サラリーマンの悲哀を演じてオスカーを受賞、現在を代表する演技派男優の座を決定的にしたケヴィン・スペイシー。

そんな彼が次に演じるのは『アメリカン~』のトホホさ加減とは打ってかわった、クールでちょっぴりユーモアのセンスに富んだアイルランドの大強盗。監督はアイルランド人のサディウス・オサリバン。

ストーリーはちょっぴり曇ったアイルランドの空の下、展開される。

スペイシー演じるところのマイケル・リンチは、アイルランドの国中の警察が眼をつける大強盗。銀行の一つや二つはお茶の子さいさい。

そんな彼を捕まえようと警察は常に執拗な追跡を行うが、リンチは得意の頭の回転で裁判では無罪になるは壮絶なカー・チェイスからはスルリと抜け出すは。そして家に帰れば、美人の妻とその妹の何故か愛人が二人して待機。そして育ち盛りの幼い子供たち数人がベッドでパパのおとぎ話(実際犯罪者としての悪事話だったりするから笑えるのだが)を待ち、何故か大量に手に入る失業保険で豪勢な食生活を営んで……とまるでリンチ家は一家団欒の大家族。リンチの家での表情は完全に心優しき子煩悩なマイ・ホーム・パパ。

平凡なニコニコ・パパと大強盗ギャングのボス、という二面性の生活をリンチは順調に過ごすが、しかし、ある絵画強盗を展開中に警察に感づかれてしまい、事態は急転危機一髪。さてリンチの生命やいかに?

以下の息を呑むような警察チームとの攻防は映画館で確認してもらうとして、全体の印象を語ることにしよう。

これ、ハッキリ言ってアイルランド版の『ルパンIII世』。

こなす犯罪のスケールは“弱きを助け強きをくじく”大物以外は狙わない度胸の良さと、身内との人情味溢れる振る舞いはルパンだし、リンチを愛してやまないとにかく美しい妻は峰 不二子だし、リンチを執拗に追跡しながらもリンチにどこか強盗として評価してしまっている警部はどう見ても銭形警部だし。あと、リンチの名参謀を務める次元大介的な存在もいるし。そんな風に、日本でも絶大な支持と人気があった『ルパン~』と照らし合わせてみるのが一番良い観賞法であろう。

『私が愛したギャングスター オリジナル・サウンドトラック』
Atlantic 発売中
AMCY-7154 2,520(tax in)

加えて、この最後まで軽快さの消えないこの映画に相応しいのがBlurのデーモン・アルバーンの担当した映画音楽。

シーンの全体を埋め尽くす音は厚塗りのストリングスではなく、ヒップホップ調の小気味よい重さと軽快な跳ねを持つリズムで、それが特にカー・チェイスのシーンのスリルや危機一髪の脱出のシーンや、飄々と笑顔でピンチを切り抜けるリンチのクールさと相まってなんとも演出がにくい。

この音楽だけでも随分と楽しめるはずである。

文●太澤 陽

『私が愛したギャングスター』(1999年イギリス・アイルランド合作)
12月16日(土)より銀座テアトルシネマにて公開!

監督:サディウス・オサリヴァン
音楽:デーモン・アルバーン
主演:ケヴィン・スペイシー、リンダ・フィオレンティーノ、ピーター・ミュランほか
上映時間:1時間35分
配給:アミューズピクチャーズ

Special Thanx to www.amuse-pictures.com

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