有望新人の修業時代
有望新人の修業時代 |
| Eve 6のメンバーにとってこの2年間は重要な時期だった。 「ツアーに出る前の自分と比べると、まったく違った人間になったような気がする」とギタリストのJon Siebels。 「そんな時期なんだとも思う。高校を卒業した後に誰でも経験するようなね。つまり、普通の人の大学1、2年の頃と似たようなものだけど、僕の場合ちょっとだけ風変わりで、ずっと高いレベルへと急に持ち上げられてしまったのさ!」 彼とヴォーカリスト/ベーシストのMax Collins、ドラマーのTony Fagensonによるロサンゼルス出身のトリオが1988年の同名アルバムでRCAからデビューしたとき、彼らは前の年に高校を卒業したばかりであった。友人の大半が大学や短大で学業を続けている時期に、3人はレコーディングとプロモーション、ツアーに開け暮れていたのである。“実生活”と呼ぶには少し違うかもしれないが、『Eve 6』がプラチナディスクとなっただけに、彼らにとって修業の経験になったことは確かだろう。 「本当の友達が誰なのかとってもはっきりわかるようになるよね。昔からよくある話さ」とSiebelsは説明する。 「それでも、本物の友人だった人たちは親友になれるんだ。だから差し引きゼロってところだね。高校時代の親しい友人のグループは、今でも親しく付き合っているよ」 そのうちの一人が9年生のときのPEクラスで出会ったバンドメイトのCollinsである。3人の間の友情は彼らを正気に保ってくれた要因のひとつでもある。 「成功がどんな形にせよ僕たちの友情に悪い影響を与えることはなかった。ツアーに出ていないときもつるんでいるしね。僕らは楽屋でののしり合っているようなタイプのバンドじゃないよ。とっても民主的だし、お互いの感情を害さない方法も知っている」とSiebels。 こうした友情は彼らがいつもグループ外の誰かに頼るわけにもいかないことを考えれば良いことであろう。Siebelsも認めるように、典型的なアーティストらしい気まぐれに陥らないようにするのは時として非常に難しい。 「ストリートのロックスターというイメージが常に付きまとうのさ。そしてそのポジションに収まってしまうと、どんなに大勢の無用な人々に対処しなければならないかを思い知らされるんだ! 大勢の人々の全体を思いどおりに動かすのはとっても大変だ。だからわがままアーティストの気分にならずに過ごすのは難しいのさ」 ツアーはエキサイティングな経験であったが、常に意義深いというわけにはいかなかったようだ。 「僕たちが訪れた場所のほとんどで、何も見ることはできなかったも同然さ」 Siebelsは笑って言う。 「見れたのは薄汚いダウンタウンとクラブにホテルにラジオ局、そんなところだね。思い出もぼやけてしまうわけさ」 したがって帰郷してセカンドアルバム『Horrorscope』に取り掛かることは、ある意味での救いになったのである。 今回は予算もあり、もっと良いスタジオを使って、同じプロデューサーのDon Gilmoreを迎えた。 ニューアルバムはデビュー作を論理的に発展させたものになっている。つまり同様にパンチのあるキャッチーなハードロックだが、品質が向上しているのだ。いくつかの曲では80年代初頭のポップに暗いひねりを加えるなど、新たに取り入れた要因も少しは見られるが、基本線は新曲の「Promise」や「On TheRoof Again」のようにバンドのファーストを気に入った人々が飛び付くようなサウンドである。彼らはいい仕事をしたと言えるだろう。 ここで振り返ってみよう。 高校時代の仲間たちがカレッジの2年生を終えようとしているときに、Eve 6はセカンドアルバムを完成させて、若冠21歳の3人組としては異例の規模と言えるヘヴィーなツアーに乗り出した。 Siebelsは未来のヴィジョンをどのように描いているのだろうか? 「僕は30歳で燃え尽きてしまうだろう! 僕の寿命は終わっているよ!」と彼はジョークで結んだ。 by Janiss Garza |