【インタビュー】Nagie Lane、最小にして強靭に生まれ変わった3声のハーモニー

音楽ラジオ番組interfm「TOKYO MUSIC RADAR」は、今注目すべきミュージシャンをはじめ、未来を担う音楽業界の知識人など様々な人々を招き、注目の音楽と最新の音楽事情を届けるミュージックプログラムだ。
数多くのアーティストを紹介してきた「TOKYO MUSIC RADAR」だが、ゲストとフランクなアーティストトークを繰り広げていたのは、パーソナリティを務めるNagie Laneのmikakoである。
そしてこの度、ゲストとして番組にやってきたのはNagie Laneだった。baratti、mayu、mikakoという3人組のゲストだが、メンバーのひとりが番組のインタビュアーを兼ねるという、かなり異例な状況で番組はスタート。気心知れた3人のトークはただの楽屋話になってしまうのか、それとも他人行儀なちぐはぐインタビューになってしまうのか…前代未聞の一人二役のmikakoが送る、Nagie Lane全員による「TOKYO MUSIC RADAR」のトーク風景をお届けしよう。

Nagie Lane(左からmayu、mikako、baratti)
──(mikako)今回のゲストは、barattiとmayuです(笑)。「TOKYO MUSIC RADAR」が始まって、いつかNagie Laneで出たいと思っていたので念願の出演ですね。
mayu:毎週豪華アーティストが出演されているので、ついにNagie Laneを呼んでもらえて本当に嬉しいです。ありがとう。
──(mikako)どうですか?緊張してる?
baratti:いや、緊張は全然してない。
mayu:3人だからよく見る風景だね、これ(笑)。
──(mikako)逆に「よく見る風景すぎないようにしなきゃ」って思ってますけど、えと台本には「最近3人で会ったのはいつ?」とかあるんですが…。
baratti:さっきまでオンライン・ミーティングしてたんだけど(笑)。
──(mikako)ほぼ家族みたいになっちゃってますからね。とはいえ、皆さんにNagie Laneのことを知ってもらう大チャンスなので、色んな話をしていきたいと思いますが、まずはどのように結成されたのかというお話を。
baratti:説明したいけど…3人ともオリジナルメンバーじゃないっす(笑)。
──(mikako)そうよね(笑)。
baratti:アカペラのグループとして始まったんですけど、とある大会の出場に向けて組まれたのが前身のグループで、その大会で優勝したんですよね。
mayu:私たち以外の人たちが、ね(笑)。
baratti:で、「プロとしてやっていくか」という時にメンバーの入れ替えがあって、そこから入ってきたのが僕たちっていう感じ。そこからメンバーの変遷はいろいろありましたけど。

Nagie Lane
──(mikako)すごくありましたね。6回くらい(笑)。この3人になって初となる新体制ワンマンライブが2025年3月にあって、無事大成功に終えたんですけど、そのワンマンのタイトルも<654643>と、あえてメンバーの数を並べてタイトルにしたんですよね。メンバーが変わった瞬間とか、今振り返るとぶっちゃけどうでしたか?
mayu:変わるタイミングが、みんなでひとつの目標に向かって頑張っていこうっていうロングロングミーティングをした1ヶ月後とかだったりしたから、モチベーションが上がったところからいきなり墜落する青天の霹靂みたいな、そんな気持ちではあったかな。
──(mikako)そうだよね。
mayu:正直、切り替えがむずかった。
baratti:まあね。抜けるメンバーもそれはそれで必死に人生を考えているわけだし、送り出す気持ちはもちろんありつつ、でもそれをポジティブに変換してここまでやってきているかな。
──(mikako)なんかもう、何が起きても怖くないよね。もちろん3から2とか1にはなりたくないけど、それ以外だったら多分何が起きてももう大丈夫な気がするわ。
mayu:そうね。あと、3人になって予定が合いやすくなった(笑)。ミーティングもサクッとできるし、アーティストのライブを観に行こうってなったらすぐ集まれるし。そういう部分はね、かなりポジティブ。
baratti:意見も揃いやすくなったしね。
──(mikako)お互いが思っていることをより深く知れるようにもなった気もします。で、その3月のワンマンライブ<654643>は、ふたりの実感としてはどんなライブでした?

mayu:正直、最高のライブになりましたね。最高だったな。今までアカペラのみでのワンマンライブしかやってこなかったので、トラックを入れてのライブの反応が気になって、やるまで怖かった。
baratti:どんな感じで迎えてくれるのかなって不安だったから、だからこそ1曲目始まった瞬間のいい感じのムードに、最初からメンバー3人とも泣きそうになるっていう事件(笑)。泣く曲じゃないんだけど(笑)。
mayu:あれは危なかった(笑)。ダンスしながらmikakoと顔を合わせるシーンがあるんだけど、「ダメだ、こんなタイミングで泣いてはいけない」って思いながらやってました。
──(mikako)私も結構声が震えちゃって必死だった。
baratti:僕なんかパート自体が変わったし。



──(mikako)barattiは、アカペラ時代はボイス・パーカッションをやっていたんですけど、今回全部リアレンジしてトラックを作ったことで、バラッチはどうしていこうかっていう話でね。
baratti:今回はボイパしなかったからね。ライブでの立ち位置を探りつつ、やっと形が見えたかなみたいな。
──(mikako)この3人になってから、私とmayuがフロントでbarattiはトラックをいじったりしているんだけど、ワンマンならではのことをしたいということで、barattiが歌うセクションを増やしたじゃないですか。個人的にはあそこが鬼熱かった。
baratti:後半からの流れでちょっとスイッチ入ったよね。この熱量をいつも出したいなって思った。

──(mikako)そんなNagie Laneですが、メンバーの数が6→5→4→6→4→3と変遷があったなかで、ぶっちゃけ「もうNagie Laneダメかもしれない」って思った瞬間はあった?
mayu:私は、自分自身も「どうするのか」って問いかけられていたタイミングもあったから、ほんとに辞めた方がいいのかもしれないって思った時期はあったんだけど…mikakoが止めてくれました。あれに救われて、続けることを決めました。
──(mikako)止めたね。「どんなに引かれても構わない」という思いで、長文のLINEを送ったという(笑)。
mayu:あれは心にぐっときましたね。
──(mikako)私は私であそこでそうしないと絶対後悔するって思ったから。結構忙しい時期で、家に帰って休むので精一杯という状態だったから、会って話す時間もあんまなかったじゃん?でも、悩んでいる暇ないやと思って長文で送りました。barattiはどうだった?
baratti:僕は別に辞めるというところにはならなかった。自分が表現する場としてすごく大切なものだし、何かしら続けていくべきだなと思っていたし。いろんな悩みはあったけど、自分の性分としてコツコツやることが好きなので、もっと結果を残していきたいって時に「今が辞め時ではないな」って思ってた。後ろ向きにはならなかったかな。
──(mikako)そうだね。私もそうかな。弱音を吐いた瞬間もあったけど、でもだからこそ余計に「絶対私は諦めないぞ」っていう気持ちが強かったかな。メンバーがちょっとずつ減るたびに「ここで終わりには絶対にさせたくない」って。私はbarattiは絶対辞めないって思っていたし、mayuは絶対に辞めてほしくなかったから、私にはNagie Laneがなくなる未来はなくて、まず自分が強い気持ちで続けようって思った。だから今は、すごくいい状態に落ち着いたなって思っているよね。
mayu:3人で話し合うきっかけにもなったよね。お互いのほんとに思っていることとか、人生通してやりたいこととかを考え直すとか、腹を割って話す時間になったから、今となってはよかったかもね。

mikako

mayu

baratti
──(mikako)そもそもの音楽ルーツもそれぞれで紹介したいんですが…。
baratti:僕は幼少期からピアノとかやっていたんですけど、その頃は音楽がそんなに好きになれていなくて、好きになり始めたのは、中学校で吹奏楽部に入ってトロンボーンでアース・ウインド&ファイアーの「セプテンバー」とかクール&ザ・ギャングの「セレブレーション」とかファンク/ディスコ・ミュージックをやる機会があって、それからですね。そういうのを教えてくれる名物先生がいたんですよ。それきっかけでブラック・ミュージックが好きになった。同じ頃に、実家のテレビがケーブルTVになって音楽チャンネルを観れるようになったの。それでジャミロクワイとかオアシスとかも入ってきて、洋楽のロック、ポップ、R&B、その後ヒップホップも好きになった。今思うと、中学校のときにいろんなものを好きになったね。
──(mikako)mayuは?
mayu:両親が音楽大好きで、ミュージカルが大好きな母によく連れて行ってもらったので、ミュージカルの音楽とかは全般大好きだったのと、父がジャズ・ギタリストでジャズとかボサノバとかR&Bとか全ジャンルが家で流れている家庭で育ったので、ジャンルレスに耳にしていました。中~高校のときにバンドがめちゃ流行って、高校で軽音楽部に入ったので、あらゆるバンドのコピーをしてました。阿部真央さんとかsuperflyさんとか…。
baratti:どっちもバンドじゃない(笑)。
mayu:いやいやその…バンド・サウンドね(笑)。で、英語の授業で、アヴリル・ラヴィーンの歌詞を日本語訳するっていうことがあって、先生からアヴリルのCD『Let Go』をもらったんだよね。
baratti:なんでmayuだけもらえたの?
mayu:私、英語ができたの。で、すごい先生と仲良かったから、なぜかプレゼントしてくれて、それで洋楽のロックバンドとかも結構聴くようになった。それをきっかけに、メッセージを歌に乗せて力強い歌い方で伝えるみたいなアーティストがめっちゃ好きになって、アヴリル・ラヴィーンとかP!NKとかビヨンセとかも大好きになって、そこから歌をたくさん練習するようになったかな。
──(mikako)洋邦問わずだね。
mayu:そうだね。今の歌い方の雰囲気で言うと、阿部真央さんには影響を受けている。自分の思っていることを歌に乗せて、しかもすごいいろんな種類の声色で表現する人だから。mikakoは?
──(mikako)私は5歳から11歳までオーストリアのウィーンに住んでいたのもあって、聴ける音楽が割と限られていたんで、父親が日本から持ってきていた唯一のCDだったaikoさんの楽曲をめちゃくちゃ聴いていたかな。小3の頃、ラジオで流れていた曲は、それこそアヴリル・ラヴィーンとかMAROON5とか、ヒップホップもすごく流行り始めてて帰りのスクールバスでみんなでエミネムを歌ったりとかしてた(笑)。
mayu:エミネムをみんなで歌う小3って、やばすぎる(笑)。
──(mikako)今思えばね。で、一時帰国したときにCDショップで気になるCDを一気に買ったのね。お店でたくさん視聴して、絢香さんとか平井堅さんが気になって聴くようになったかな。日本に完全帰国してからは、宇多田ヒカルさんにどっぷり浸かって、その後はK-POPにめちゃくちゃはまるようになって、BIGBANGを通してさらにヒップホップ好きになって。あとDef Techさんを聴くようになったので、そういうところからR&Bとかソウルの色を持つJ-POPをめちゃくちゃ聴いたり。あとね、案外と私、ウイーンにいたので、クラシックはめっちゃ聴いてた。クラシック・ピアノもやっていたので、そこも好きだなっていうのを最近改めて感じましたね。私も結構ジャンルレスで聴いていたな。ふたりの音楽活動はそれぞれいつ始めたんですか?barattiはNagie Laneに入る前は?

baratti:僕は、日本の大学を卒業した後にバークリー音楽大学に留学をして、そこでジャズの作編曲の勉強をしていたんですよ。ビッグバンドのアレンジをしたり、ジャズらしい曲を作ったり。で、日本に帰ってきてから、いくつかバンド活動だったりアカペラのグループで自主制作でCDを作ったりツアーしたりしていたんだけど、ちょっとうまくいかないところもあって、ぼちぼち裏方的な仕事でやっていこうかなって思ったタイミングでNagie Laneのプロジェクトに誘ってもらったんだよね。そこからはもうNagie Laneの活動が中心で。
──(mikako)mayuは?
mayu:高校の時からバンドがやりたくてしょうがなかったから、バンドが強い高校を受験して3年間ガールズバンド活動をしてたのね。その延長で大学1年ぐらいまで一生懸命ライブもやってプロを目指していたんだけど、メンバーそれぞれ一旦休止しようって話になって、そこから…ちょっと夢を諦めてた。でもアカペラはサークルでずっと続けていて、オーディションとかも受けたりとかはしていたんだよね。で、Nagie Laneに誘ってもらって「ここで新たな挑戦ができるかもしれない」と思って加入しましたね。
──(mikako)ふたりとも「続けていきたい」というタイミングでNagie Laneと出会ったんですね。私もちっちゃい時から歌手になりたいって思って、弾き語りができるようにピアノやギターを練習したりしていたけど、大学で1年休学してどういう風にやっていこうかなっていう時にNagie Laneの話を聞いて、これはチャンスかもしれないと思って入ったの。縁ですよね。
mayu:出会えてよかった。
──(mikako)そんなNagie Laneの曲に関してですが、私たち、曲作りはどのように行っていますかね?
baratti:変な質問(笑)。
──(mikako)私、今は質問者側だから(笑)。
baratti:曲はメンバー内でアイディアを出し合って作っていくこともありますし、グッドなメロディーメーカーに提供してもらうこともありますし、そこは両輪走らせて作っている感じですかね。
──(mikako)ですね。今のNagie Laneのメインボーカルはmikakoとmayuですけど、歌の割り振りとかはどういう風に?
baratti:一連の流れとしては、新しい曲が上がったら一旦ふたりに歌ってもらって、より曲を輝かしている方を選ばせていただきます、と(笑)。そこから本番レコーディングに入っていくという感じですね。いやでもほんとね、ふたりの歌は実際に当ててみないとわかんないところはあるのよ。
──(mikako)曲を作るにあたってインスピレーションはどういうところから?
baratti:自分のライティングの癖というか発想元は、特定のアイテムや行動に「これって面白いな」って思う瞬間に降りてくることが多いので、幅広いテーマを書くのはまだそんなに得意ではないかな。それよりはひとつのことで「フラペチーノ、美味いな」って思ったらフラペチーノの歌になるし。
──(mikako)「ふらぺちる」っていう曲がありますね。
baratti:「サウナ気持ちいいな」って思ったらサウナのことを歌うし。まあ、人生観を表すようなことを思うと歌にしたくもなるから、そういうタイプかな。
mayu:そこをストーリーにするのが、すごくうまいよね。
baratti:そのほうがメロディーも湧きやすいかな。それがふたりの雰囲気とも合っていると、よりやりやすいし。
──(mikako)コーラスハーモニーもbarattiがアレンジしていますけど、そこでのこだわりは?
baratti:ジャズ・ハーモニーが好きだし専門でもあったから、小難しさによるお洒落さみたいなのはあるけど、3声だとそれはあまりできない。けど「ポップに聴こえるけど、ちょっと面白いことしてるぞ」というポイントは残したくてね。
mayu:一工夫あるよね。面白く3声をハモらせていて、毎回すごいと思うよ。
baratti:「この響きが好き」っていうのがあるから、それを出したくなるし、そこに気付く人は「なんか癖になる」って思ってくれると信じてやっているよね。鼻歌で作れるようなものにはあんましたくない。
mayu:結構難しかったり、急にぶつかたりするよね。
──(mikako)そう。3度上から急に11thとか13thを担当しなきゃいけなくなった時、鋭いところに狙っていかないと3声しかないから誰も両隣支えてくれないし…みたいな、すごく鍛えられている気がする(笑)。
mayu:そうだね。普通の3度ハモリから急にそういうのが来たりして、障害物競争みたいよね。
──(mikako)そこはNagie Laneがこだわっているところでもあるので、皆さんに注目して聴いてみてほしいなと思います。今後、個人的な目標などはありますか?
baratti:そうね、いっぱいある。どれにしようかな。
mayu:私は、歌唱の幅を広げたい。今までいろんな音楽を聴いてきて、やっぱりバンドが大好きだからロック系の歌とかJ-POPとかも得意だけど、よりグルービーなサウンドに乗せた歌とか、ボサノバみたいなささやくような静かで繊細な歌声とか、いろんな音楽に交わえるような歌唱をもっと身に付けたいなと思ってます。
──(mikako)私もそう。いろんな音楽に触れていく中で、まだまだ知らないことがいっぱいあるし、この数年で国境も越えた活動をしたことで今まで以上に意欲が湧くというか、なんて言うんだろ、痒いところに手が届く歌声をしていきたい…この日本語大丈夫かな(笑)。
mayu:痒いとこに手が届くアーティスト(笑)?
──(mikako)いや(笑)、まあシンプル言えば「もっといろんな引き出しを増やしていきたい」っていうのもそうだし、スタジオ・ライブ・セッションの経験もあったことで、他のアーティストの皆さんとのコラボみたいなことをNagie Laneとしてもボーカリストmikakoとしても増やしていきたいなって思って。それによって得られるものもたくさんあるし、いろんな方のライブを観させていただくと、「ここでNagie Laneがこういうコーラス入れたらおもしろいな」とか勝手に思っちゃったり、「自分だったらこういう風に歌を入れてみたいかも」みたいな気持ちが出てくるので、そういうアンテナをもっともっと広げていきたいって思いますね。
mayu:そうだね。個人としての活動の幅も広げていきたいよね。私は幼少の頃からずっとミュージカルが好きだから、ミュージカルに出たいな。
──(mikako)いいね。barattiは?
baratti:僕は今までやりたかったトラック制作がここ1~2年でやっと挑戦できるようになったから、面白さやこだわりたいポイントが分かってきていて、よりいっそう追求していきたい。あとね、ライブでかっこよく動きたいので、ダンスの練頑を張りたいです(笑)。
──(mikako)いいですね。ダンス練、頑張っていきましょう。
mayu:それは私も頑張ります。
──(mikako)Nagie Laneのライブは、ハーモニーだけじゃなくて、トラックに合わせて気持ちよく動いたりするのも、私たちの小さいけど大きい目標だったりするのでね。皆さんもぜひNagie Laneのライブに遊びに来てください。お待ちしております。

文・編集◎烏丸哲也(BARKS)
Digital Single「anone, (Korean ver.) 」
2025年4月25日配信