【インタビュー】土岐麻子、約3年ぶりアルバム『Lonely Ghost』に21年目モード「テーマはミステリー」

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土岐麻子が12月18日、約3年ぶりのオリジナルアルバム『Lonely Ghost』をリリースした。2024年にソロデビュー20周年を迎え、ベストアルバムリリースやライブツアーほか、様々なアーティストとのコラボレーションなど、精力的な活動を展開中だ。

◆土岐麻子 動画 / 画像

2025年2月には20周年イヤーの締め括りとしてバンド編成による東名阪スペシャルツアー<Lonely Ghost TOUR / 20th〜21st ANNIVERSARY>を開催する土岐麻子が、アルバム『Lonely Ghost』について語ったオフィシャルインタビューをお届けしたい。


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■ファンタジー全開のものはイメージしてない
■日常の中の不可解なことを描きたかった


──3年ぶりオリジナルアルバム『Lonely Ghost』の制作はどのようにスタートしましたか?

土岐:ソロデビュー20周年の節目にベストアルバム(『Peppermint Time 〜20th Anniversary Best〜』/2024年4月リリース)を出すことは決まっていて。その後にリリースするオリジナルアルバムでは、21年目のモードで、今の私が興味あることをダイレクトに表現して“新しい土岐麻子像”を提示したいと思いました。

──前作『Twilight』(2021年)とは全く印象が違って新鮮でした。『Twilight』は穏やかでメロウな1枚でしたが、『Lonely Ghost』は全体的にポップで色鮮やかで、遊び心にあふれている。トオミヨウさんとは『PASSION BLUE』以来、約5年ぶりのタッグですね。

土岐:トオミさんと一緒にやることは最初から決めていました。トオミさんの楽曲はいろいろな曲調があるけど、音を聴いて浮かんでくる歌詞の世界が独特なんですよ。いつも“こんな詞が自分から出てくるとは”と新鮮に驚きつつ、ときめきながら制作できるし、ライブで披露するときも、毎回初めて歌うようにドキドキするんです。

──『Lonely Ghost』のテーマは“ミステリー”。そこに込めた思いを詳しく教えてください。

土岐:映画やドラマなど、物語のジャンルとして“ミステリー”という言葉がありますが、そうしたイメージも持ちつつ、“明瞭じゃないものや、曖昧な感じを描きたい”と思ったんです。アルバムの中で最初にできた曲はタイトル曲「Lonely Ghost」で、その頃観ていた韓国ドラマ『愛と、利と』で使われていたメロウなサウンドのOSTに刺激を受けました。子供の頃、角川映画のミステリアスなテーマソングにときめいていたことを思い出したりもして。トオミさんにもそんな話を共有して、だんだん“ミステリー”というテーマが固まっていきました。楽曲「Lonely Ghost」は私が切ないムードを気に入って、真っ先に詞を書きました。


──「Lonely Ghost」という言葉を聞くと、どこか寂しげな印象を受けますが、曲調には優しさや温かみも感じました。

土岐:淡々としている曲ですが、特に大サビには温かい印象がありますよね。最初にこの曲を聴いた時、薄暗い喫茶店の中で1席だけにスポットライトが当たって、そこにひとりぼっちの女の子が座っているイメージが浮かんだんです。そこから“傷”や“憂い”を包み込んでくれるような曲にしたいと考えて書いていきました。

──音から具体的なシーンが浮かぶんですね。8曲目の「Tablecloth」は“爆発音が聞こえてきて”というインパクト大な歌い出しですが、これはアクション映画のようなイメージですか?

土岐:そうですね。ポップな曲ですが、何度も聴いているうちに毒を混ぜたくなってきて。まず、爆発が起こり、靴が片方脱げた主人公が、煙をバックに走って逃げていくような映像が頭に浮かびました。パリで暮らしていた友人に聞いた、日常の中でテロに遭遇した経験も思い出して。彼女が「ヒールが折れた靴を手に必死に逃げた」と現地の知人に話したら、「フランスではそんなことは日常茶飯事だから」と言われたそうなんです。すごい話だなと思いつつもその一方で、パリで暮らしている私の知人は、みんなとても人生を楽しんでいる印象があって。危険な環境で生きているからこそ、人生の楽しみに真剣に向き合っているのかな……と。自分なりに戦争について考える中で、友人とお茶を飲んだり夫と食事をする日常が送れる…これ以上の幸せはないのではないかという感覚も込み上げてきて。そんな思いを抱きながら書いた曲です。

──だから「Tablecloth」には料理の名前がいくつも登場するんですね。アルバムにはそんなふうに非日常的でフィクショナルな世界観も漂っていますが、ベースになっているのは、生活者の内面を繊細に切り取るような土岐さんらしい感覚であると。

土岐:ファンタジー全開のものをイメージしてはないですね。ミステリーは普段何気なく生活している中に数多く混ざっている。自分の心の中にある不思議でよくわからない感情だったり、誰かと同じ空間にいても見えている景色が違っていたり……そういう細やかなことも含めて、日常の中の“不可解なこと”を描きたかったです。

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