【インタビュー】WENDY、“世田谷から世界へ”オールドスクールなロックをベースにモダンでパワフルなサウンド「WILD」
世田谷から世界へ。それは東京23区の西のはずれで伸び伸び育ったロック少年たちが、明るい野心で未来を切り拓くゲームのような物語。WENDYと名乗る4人組は、70'sや80'sのオールドスクールなロックをベースに、よりモダンでパワフルなサウンドを得た最新曲「WILD」は世界を見ている。すでにアメリカでのライブも経験した。彼らはどこから来て、何者で、どこへ行くのか。21歳になったばかり、ボーダーレス思考のバイリンガルなフロントマン・Skye Mckenzie(Vo&G)の話を聞こう。
■J-POPとか洋楽とかそういうのは無しで
■普通にロックをやっているっていう感じ
――世田谷から世界へっていう、バンドのキャッチコピーが大好きなんですけど。誰が考えたんですか。
Skye:スタッフたちが考えてくれました(笑)。確かにパンチはありますよね。東京からとかじゃなくて、世田谷からっていう。
――そもそも、どんな出会いですか。
Skye:みんな世田谷生まれ世田谷育ちで、ドラムのSenaは中学校は別だったけど共通の知り合いがいて、12歳ぐらいからずっと仲良くて。俺が音楽始めたいなって思った時に、二人でお遊び程度にバンド組んで。ライブはしなかったんですけど、週何回かスタジオに入って。
――ドラムとボーカルで?
Skye:Senaは最初ギターだったんですけど、ドラムも叩いてみる?って言ったら、最初からいい感じで叩けてて。で、地元の1歳下にやんちゃな子たちがいて、その中にいたのがギターのPaul。初期メンバーのベースJohnnyもそこにいて、キッスのTシャツ着てたから「キッス好きなの?」って聞いたのがきっかけで仲良くなりましたね。仲良くなってずっと遊んでいて、だんだんと「バンド組もうか?」みたいに自然な流れになった感じですね。結成したのは俺が16歳の時かな。4年前の10月ですね。
▲Skye McKenzie(Vo./G.)
――その時、4年後の今の未来を想像していた?
Skye:想像はしてましたが、正直まだ実感がないっていうか、今もないです。10月にライブでLAに行ったんですけど、15歳、16歳の時からからみんなで「アメリカ行きたいよな」って話していて、いざ行ってみたら「俺ら本当にLAにいるんだ?」みたいな、実感がない感じは今だにありますね。
――夢の中にいるみたいな。ロックンロールドリームの。
Skye:本当ですよ。目が覚めない夢ですよ。
――良い言葉。曲作りはSkyeくんが?
Skye:基本的には俺がデモを作って、メンバーに持っていって、みんなで「こうやったほうがいいんじゃない?」みたいな感じで制作を進めています。前までは携帯で録音していたけど、最近はDTMでも作れるようになりました。
――それは2023年出した1stアルバム『Don't waste my YOUTH』の頃?
Skye:1st アルバム制作のあとです。2年前にはパソコンで制作する人を見ていても全然わからなかったんですが、挑戦したら案外できてしまって。新曲の「WILD」は、夜中に家でずっと曲を作っていて、打ち込みで初めて作った曲です。
▲1stアルバム『Don't waste my YOUTH』
――クラシックロックとか、オールドスクールのロックと言われることが多いと思うけれど。自分たちの意識は?
Skye:もともと聴いてる音楽が、オールドスクールなロックなんで。もちろん同年代の友達もいるんですけど、結構年上の方と16歳の頃からずっと一緒にいて。ライブハウスに出た時に、対バンしている大先輩のバンドの方に「何好きなの?」って聞かれて、ガンズ・アンド・ローゼズとかモトリー・クルーとか言ったら「おお!」みたいな(笑)。
――あはは。そりゃそうなりますよね。
Skye:バンドをやり始めた時は、本当にメンバーぐらいしかいなかったんですよ。そういうクラシックなオールドスクールなロックを聴いてるのが。でもやってくうちに、案外と若い子たちも「こういうの好き」っていう人が多かったんで、やっぱりいるんだなって思いましたね。自分もそういうところがあるんですけど、周りに合わないからあんまり言えなかっただけで。俺らと同じようにオールドスクールなロックに興味を持つ子たちは、増えていると思う。ライブに10代の女の子とか、親子で来る人たちも増えて、WENDYをきっけに仲良くなったとか、そういう話を聞いた時はめちゃくちゃ嬉しいです。
――WENDYは日本でロックをやってるけど、歌詞が英語でしょう。何て言えばいいのか、洋楽ではないし、J-POPとも違うし。何をやっている感じですか。
Skye:いや、なんかもうJ-POPとか、いわゆる洋楽とか、そういうジャンル分けは無しで、普通に自分たちの音楽をやっているだけって感じですね。英語で歌っているのも、個人的には二つ理由があって、俺は英語のほうが作りやすくて、気持ちを歌詞にも投影しやすいんです。もう一つは英語のほうが共通言語として世界に伝わりやすいと思いますし、音楽やる以上は世界のてっぺん取りたいので、英語でやっています。
――この間、10月に行ったLAでのライブ。どうでした?
Skye:LAはめちゃくちゃ楽しかったですね。2回ライブをやって、一つはアコースティックライブをギターのPaulと二人でやって、もう一つは<OC Japan Fair>っていうフェスティバルに出て。アウェーではなかったけど、ロックバンドでアンプとドラムセットがあったのも俺らだけだったから。PA(音響)のスタッフたちが、俺らの音がうるさいからってアンプを後ろに向けたりして、「それじゃ俺らが聴こえねぇよ!」「いや、音量規制かかってるから」ってちょっと言い合いになったりもして(笑)。でもどうしようもないから、そのままライブをやったんですけど、結果すごい会場が盛り上がりましたね。LAでは俺らがやってることをオールドスクールとは思わないで、全く新しいものとして見てくれるんで、 若い子たちがウワー!ってなって、ギターソロとかやるとみんなイエー!って盛り上がってくれて。日本とは反応が違うから、面白いなっていうのはありましたね。
▲Paul(G.)
――それは自信になりますね。
Skye:もう一つやったライブはアコースティックライブで、場所はビバリーヒルズだったんですけど、アートギャラリーのオープニングで、音楽プロデューサーとか、VIPしか入れないパーティーで、アコースティックで5曲ぐらいやったんです。すごい反応が良くて、終わってから「俺、ガンズと友達だからさ」とか、「デヴィッド・フォスター知ってるよ」とか、ピンク・フロイドと仲がいい人とか、みんな話しかけてきてくれて。本当はピンク・フロイドのメンバーも来る予定だったんですよ。ギターの。
――デイブ・ギルモア? マジで?
Skye:そう。でも急には入れなかったらしいんですよ。セキュリティが厳しかったとかで。ギターのPaulはすごい会いたくてずっと待ってたけど。その後にまた別のパーティーの予定もあって残念ながら会えませんでした。でも演奏した後にいろんな人が声をかけてくれて、「日本に住んでるの? LAに来いよ」とか言われたりして嬉しかったですね。で、もう一つはインフルエンサーたちと企業のマッチングパーティーにも招待してもらって、そちらも楽しかったですね。エージェントの方からアメリカでの展開を提案されたりもして。
――行っちゃいましょうよ。
Skye:実は行くつもりなんですよ。来年はいろんな計画を立てています。俺らみたいに、世界でチャレンジしてきた日本人の先輩バンドもたくさんいますけど、これまで誰もできなかったことを俺らが実現していきたいですし、社会現象を巻き起こしていきたい。日本から世界に出たロックバンドにになりたいと思っています。今回、LAでライブをして、このバンドにはその可能性があるなって改めて思ったので、頑張りたいと思っています。
――プロデューサーでエンジニアのマーク・ウィットモアとの付き合いも重要ですよね。ファーストアルバムの音はめちゃめちゃかっこ良かったし、グラミー賞エンジニアがバックアップしてくれてるのはすごく頼もしいんじゃないですか。
Skye:マークとはめっちゃ仲くなりましたね。一昨年にMV撮影でLAに行った時には、マークの家に泊まらせてもらいました。マークはジャズもポップスも作っていて、幅広く色々なジャンルに携わっているけど、実はブラック・サバスとか、そういうのが好きなんですよ。ブラック・キーズもやってますしね。WENDYを聴いたらめっちゃ良かったと言ってくれて。マークはレコーディング・スタイルが特徴的で、一つの部屋にみんなで集まって「せーの」で録る。だから1stアルバムは全部一発録りなんですよ。ギターソロでちょっとミスったら、最初から全部やり直し。それを1週間で10曲やって、すごくいい経験になりました。
――マークとはアルバムのあと、「Hollywood」と「Happy to be Alone」の配信2曲も一緒にやっています。
Skye:「Hollywood」と「Happy to be Alone」は、基本的な録り方はアルバムと一緒で、でも今回はもうちょっと丁寧にやろうって、演奏は一発でやって、歌は別にしました。マークから学んだのは、もちろん演奏面でも色々あったんですけど、レコーディングする時に気持ちを整えるっていうか、「まだ気持ちが入ってないんだったらやんないほうがいい」って。だから音楽をみんなで聴いたりとか、ソファーで喋ったりとか、ご飯食べたりとかして、気持ちがオッケーになったら「よし、じゃあスタジオ入ろう」って。曲をやる時も、しんみりした曲だったらスタジオの電気を消すとか。真っ暗にして懐中電灯だけにして、それで一発録りした曲もあります。
――いいですね。雰囲気づくり。
Skye:ただ単に録るんじゃなくて、やっぱり伝わるじゃないですか。悲しい曲なら普通に歌うのではなく、部屋を暗くして歌ったほうが気持ちも伝わる、みたいな。映画の役作りと同じで作品に入り込むのが大事だと学ばせてもらって、それはこれからもやっていきたいなと思っています。ドラムにも「自分の部屋のようにして」って言って、飲み物が置いてあったり、服があったり、「一番居心地よくしてほしい」って。それが大事だから。マークには本当に感謝しかないです。
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