【インタビュー】中島卓偉、独立第二弾アルバム『JAGUAR』に25年の気高さ「精一杯もがいて模索して、その姿を裸一貫で見せていく」

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■ルーツを探るとやっぱり
■親父が聴いてた音楽に辿りつく


──では、アルバムの収録曲について聞かせてください。1曲目「BRAND NEW JAGUAR」の“ジャガー”はギターと車のダブルミーニングですね。

卓偉:ギターも車も持ってます。また話が逸れちゃいますけど(笑)、車に関して言えばドイツ車が世界一だっていうのはわかってるんですよ。ただ、ドイツ車が好きな人のなかには“争い”があるような気がして。“やっぱりメルセデスだろう”とか、“いやBMWだ”とか“ワーゲンだ”とか。そんななかでジャガー(英国車)は孤高な感じがするんです。他の車と争っていないし、スピードの競争でもなく、エレガントな気持ちで乗るっていう。そういう人たちをたくさん見てきたし、自分にもそれが合ってるのかなと。僕も誰かをライバル視したり、“あの人には負けたくない”と思ったことがないんですよね。

──ギターのジャガーは、ジョニー・マー(ザ・スミス)などが使ったことで知られています。

卓偉:ニルヴァーナのカート・コバーンも使ってましたよね。'65年のフェンダー・ジャガー(Pre CBS期)を買ったんですけど、前から“いつか欲しいな”と思ってたんです。レスポールやテレキャスター、SGも持ってますけど、ちょっと腰高な感じの、ミッドが効いたギターが欲しいなと。ちょうどその時期に「BRAND NEW JAGUAR」という曲ができて、このタイミングなのかなって。

──それも卓偉さん自身の一貫した美意識ですね。「BRAND NEW JAGUAR」もそうですが、ギターリフ、ギターソロが目立っているのも卓偉さんらしいなと。

卓偉:そこに戻ってきた感じもありますね。30代の頃はそこを端折ろうとしたこともあったんですけど、やっぱり日本人は起承転結が好きだと思うんですよ。長らく曲を書いて、いろんなライブをやってきて、皆さんが求めるのは“イントロがあって、Aメロ、Bメロ、サビがあって、ギターソロがあって”という曲のなのかなと。もちろんそれが好きなんですけどね、自分も。なのでJanne Da Arcのyouさんに「ギターソロを弾いてください」とお願いしたんですよ。ライブでも20代くらいの男の子がyouさんの手元をずっと見てたりするんですけど、それもすごくいいなと思ってて。

──いい光景ですね、それは。

卓偉:男の客も多いですからね。最近のライブ、半分は野郎なんですよ。ファンクラブに至っては6割男です。会報を送る作業をしているときも「また男だ」っていう(笑)。もちろん女性も男性も、応援してくれるのはすごく嬉しいです。


──「って言いながら」のベースはハマ・オカモトさん(OKAMOTO’S)です。

卓偉:前の事務所にいたときハロプロのグループに曲を書いていて、僕が書いた曲でハマくんがベース弾いたり、間接的な関わりがあったんですよ。その後、セルフカバーアルバム(『GIRLS LOOK AHEAD』)を出したときに「いいんじゃない?」(LoVendoЯ提供曲)のレコーディングに参加してもらって。「って言いながら」が出来たときも「これは絶対にハマくんに弾いてほしい」と思ってお願いしました。ハマくんはブラックミュージックへの理解が深くて、音楽的に一致する部分も多いんですよ。上手いだけではない、素晴らしいベーシストですね。

──卓偉さんご自身のブラックミュージックのルーツというと?

卓偉:親父が家でアナログレコードをかけてたんですよ。ジャズが好きだったんですけど、ソウルもよく流れてて、僕も耳にしていて。車のなかでもスティーヴィー・ワンダーやディオンヌ・ワーウィックとかがかかっていて、好きだなって思ってたんですよね。ザ・ビートルズとパンクが一番の元になってるんですけど、ザ・ビートルズも黒人音楽にすごく影響を受けてるし、そのあたりは10代の頃から掘りまくって勉強してました。特に'70年代のソウルバンドは大好きですね。

──今回のアルバム収録曲でいうと、「悔しいわ」「がんばっていこうよ」などもソウルのテイストが入ってますね。

卓偉:そうですね。こういう曲だとホーンセクションを入れたくなるんだけど、それも子供のときに聴いてた音なのかもしれない。そういえばシャネルズ(ラッツ&スター)も好きだったんですよ。あの人たちは本物というか、“親父が聴いてるレコードと何も変わんねえな。歌詞が日本語になっただけだ”みたいな感覚を持ってました。

──めちゃくちゃ耳がいい子供ですね……。

卓偉:いやいや(笑)。やっぱり親父でしょうね。アニメの主題歌みたいなレコードは買ってくれなかったし、テレビもあんまり点けてくれなくて。「こっちのほうがいいだろ」みたいな感じで音楽をかけてたんだけど、僕も“いいな”と思ってんですよ。パンクには自分で飛びついたはずなんだけど、ルーツを探るとやっぱり親父が聴いてた音楽に辿りついて。不思議なもんだなって思ってましたね。


──アルバムには「SOUL FIGHTER」みたいなパンキッシュな曲も収録されていて。「鳥かご」の“SHOULD I STAY OR SHOULD I GO”もザ・クラッシュの曲の印象だし、パンクの要素もしっかり入ってます。

卓偉:そういう感じは散りばめてますね、確かに。あとね、ある時期から“パンクはジャンルじゃなくて生き様だ”というのがわかってきて。バラードを歌ってもソウルっぽいことをやっても“この人、パンクだな”と感じる人っているんですよ。たとえば田島貴男さんもそう。以前のインタビューで「ハーフパンツとスニーカーを履いてると、申し訳ないけどパンクに感じられない」みたいな話をしていて、「その通りです!」と思いました(笑)。すごくソウルフルだし、甘い曲も書けるんだけど、トータルでパンクを感じる。そういう人って、イギリスのアーティストに多い気がするんですよね。

──ポール・ウェラーもそうですよね。

卓偉:まさに。パンクから始まったのに、今はソウルのゴッドファーザーみたいに言われてますからね。ミック・ハックネル(シンプリー・レッド)もそうだと思います。セックス・ピストルズのライブを観て衝撃を受けたそうなんだけど、“これは自分にはできない”と思って、今の音楽性になっているらしいので。その発想もカッコいいなと思いますね。……って、どんどん話が深くなっちゃいますね(笑)。

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