【ライブレポート】由薫、一夜限りの<After Sun>で「たくさんの愛をもらってここに立っています」
9月6日にデジタルEP『Sunshade』をリリースした由薫が11月1日、東京・代官山UNITで一夜限りのスペシャルライブ<由薫 Live “After Sun”>を開催した。EP『Sunshade』収録曲はもちろん、1stアルバム『Brighter』収録曲やインディーズ時代の曲など、由薫曰く「この日のために新たにアレンジをした曲たち」で、ソールドアウトした満員の観客を沸かせ、エモーショナルな歌声で包みこんだ。
◆由薫 画像
大きな拍手に迎えられてバンドメンバーの木村創生(Dr / バンマス)、菊池真義(G)、Momo(Key)、堀井慶一(B)、池野隆人(Mnp)と共に登場した由薫。1曲目に選んだのは「No Stars」だ。ミニマムなサウンドと祈りのようなボーカルから、徐々に気持ちを加速させて、開放するように歌う。ちょっとした緊張の空気があった会場内の雰囲気が解きほぐされて、温度が高まっていくのを感じるはじまりだ。
続くMONKEY MAJIKがサウンドプロデュースを手がけた軽快なポップス「Blueberry Pie」では、歌詞のフレーズ“右見て左見てまた右で”と指を差し、観客を翻弄するように歌ったり、体を揺らす観客にチャーミングな笑顔で「今日、楽しみにしてきた人!」と盛り上げたりと、由薫自身もこの日を待ち望んできたことがうかがえる。
「今日は来てくれてありがとう」と改めて挨拶をした由薫は、「一夜限りのライブなので一瞬一瞬を噛み締めてほしい」と語り、最新EP『Sunshade』からの1曲「Clouds」へと突入した。北欧タッチの洗練された温かみのあるサウンドに、グレイッシュな由薫のボーカルが映える。憂いのトーンも、心を灯すような光のトーンをも含んだその声は、ライブではそよぐ風のような優しさで観客を包んでいく感覚だ。そして、イントロからハンドクラップを起こした「Blue Moment」で観客の体を揺らしていく。
小気味いいギターのカッティングとドラムビートによるグルーヴ、歌のノリのいい「sugar」では曲中で由薫がバンドメンバーをひとりひとり紹介し、最後は「来てくれた、みんな!」と観客にも拍手を送った。一体感が増したところでエネルギッシュなバンドアンサンブルによる「Swimmy」で高らかに手をかかげて歌う。「どうですか、楽しい?」という由薫の声に、フロアのあちらこちらから「楽しい」と声が上がる。
MCパートでは、「今回初めて由薫のライブに来たという人?」という質問に、多くの手が上がる。さらに、「自分が一番遠くから来たと思う人?」という問いには、韓国や鹿児島、札幌など、遠方からかけつけたファンの姿もあった。「いろんなところから来てくれた、みんなと目を合わせて歌いたい」。そう言ってスタートしたのは、由薫が「ちょっとおしゃれな感じに(アレンジ)した」という「E Y E S」だ。語りかけるようなボーカルと丸みのあるオルガンの音色ではじまった同曲は、アルバム『Brighter』時よりも、より親密で甘美なムードをまとったR&Bとなった。
そこから連なった「my friend」でも「E Y E S」での心地よいグルーヴ感を聴かせつつ、また曲中に手の動きひとつでピタリと演奏陣の時を止める。「デビューして2年経つと、こういうこともできちゃいます」といたずらな笑みを浮かべてバンドメンバーと息の合ったところも見せて、ラストのフレーズ“You are my friend”は観客の歌声で締めくくった。
今回は、ツアーで回を重ねてきた上でのライブではないけれど、由薫自身がってもリラックスしてこのステージに立っているのが、ステージ上の雰囲気やアンサンブルの雰囲気から伝わってくる。バンドメンバーの信頼感の高さはもちろん、観客に対してもどんどんその等身大の姿を見せているように思う。飾らない、ありのままの自分を投影するように作られたというEP『Sunshade』が、いかにリアルなものだったかが、こうしてライブで答え合わせができている感覚だ。
晴れやかなシーンから一転、ブルーのスポットライトのなかで静謐に刻まれたのは、代表曲でもある「星月夜」。この日はピアノとボーカルというミニマムな形で、それでいて美しい星空を想起させるような余白や余韻のある歌を響かせると、続いて演奏されたのはEP『Sunshade』のタイトル曲でドラマ主題歌にもなった「Sunshade」だ。こちらは重厚なバンドアンサンブルで、由薫のボーカルもまた言葉や感情の輪郭そこに残していくような重みを増す。会場内の空気がグッと締まるのを感じるインパクトを放つ曲だ。
もう1曲EP『Sunshade』を象徴する「勿忘草」がそこに続いた。「自分の21年を振り返ったときに、たくさんの愛を得ていたことに気づいた。たくさんの愛をもらって、そしてここに立っています」。伸びやかに、エモーショナルに歌われた「勿忘草」に、大きな拍手が沸き起こった。
終盤、この日初めて自身のアコギを持った由薫は、「10代のときに書いた曲が、大人になった自分に語りかけることがあるんです」と語り、こう続けた。「デビュー前、ライブハウスでひとりで歌っていた曲を、ここでひとりでやりたいなと思います──ずっとマイクを握りしめて歌っていて右手が痛いので、うまく弾けなかったら許してね」と冗談も交えながら、「風」を弾き語りで披露した。哲学的であり、童話のような柔らかさもある。きっとリスナーそれぞれにも十人十色の風が吹き抜ける、“音楽”の普遍性を持ったこの曲は、この先またいろいろなタイミングで紡がれていく曲にもなるのだろう。
さらにファンキーなビートによる「ヘッドホン」を披露すると、「大切な曲です。そして最後の曲です」と紹介したのはToru (ONE OK ROCK)とのコライトで生まれた「ツライクライ」。EP『Sunshade』リリース時のBARKSインタビューで、「青春のキラキラとした感じを、人生の一瞬を、恥ずかしがらずにしっかりと書いてみるのもいいなと思った」と語っていたこの曲は、ほろ苦いトーンを帯びたメロディと歌声と、きらめきのあるサウンドとで編み込まれて、ドラマを成していく。記憶へと呼びかけるような曲で、最後まで高揚感たっぷりのステージとなった。
“由薫コール”が巻き起こるなかでスタートしたアンコールでは、「ライブをするたびに、前に進んでいることをお見せしたいと、曲は新曲を持ってきました。自分で一個、ブレイクスルーできた曲」だと新曲を披露。90s感漂う粋なポップスとなっていたので、この先の作品への期待も募る。そして「いろいろと匂わせていくのでこれからも追いかけてほしい」と伝えると、最後はEP『Sunshade』収録曲から「もう一度」へ。「みんなの声を、浴びせてください!」とまずはシンガロングパートを全員で歌い上げながら、曲へ。そして大きな手拍子やシンガロングに包まれて、一夜限りの<After Sun>を晴れやかに締めくくった。
取材・文◎吉羽さおり
■<由薫 Live “After Sun”>2024年11月1日@東京・代官山UNIT セットリスト
02. Blueberry Pie
03. Clouds
04. Blue Moment
05. sugar
06. Swimmy
07. EYES
08. my friend
09. 星月夜
10. Sunshade
11. 勿忘草
12. 風
13. ヘッドホン
14. ツライクライ
encore
en1. (新曲)
en2. もう一度
▶<由薫 Live “After Sun”>プレイリスト
https://open.spotify.com/playlist/7gxsDhjzyV0OtaC41EmDec?si=d223d4f521724b8f
◾︎デジタルシングル「Feel Like This」
2024年12月5日 配信開始
※アニメ『BEASTARS FINAL SEASON』Part1 エンディング主題歌
◾︎アニメ『BEASTARS FINAL SEASON』
▼INTRODUCTION
肉食獣と草食獣の共存する世界で、本能と向き合う若き獣たちの群像劇。大人気「動物版、青春群像劇」アニメ完結編が動き出す。数々のマンガ賞を受賞し全世界累計発行部数 1000 万部を超える傑作コミック『BEASTARS』(板垣巴留・秋田書店 「少年チャンピオン・コミックス」刊)。2019 年、日本屈指の CG アニメスタジオ・オレンジが制作した同名アニメは、国内外で高い評価を得ました。そんな人気作待望の完結編が、分割2クールにてNetflix独占配信決定。Part1は2024年12月5日配信開始予定。
▼STORY
【「BEASTARS FINAL SEASON」part1】
リズとの対決を経て自主退学を選択したレゴシは、コーポ伏獣での一人暮らしを開始。一方、青獣ビースターを辞退し卒業したルイは、父・オグマに向き合う決意を固める。キャンパスライフを謳歌するハルにも悩みは尽きず…。その頃、現役ビースター・ヤフヤは、殺獣に快楽を求める凶悪犯・メロンを追っていた。レゴシとメロン、交わるはずのなかった運命を結びつけたのは、レゴシの家族が秘めたある秘密だった…。
【「BEASTASR」第2期】
肉食獣であることを受け入れ、ハルのために強くなると誓ったレゴシ。平穏な学生生活を取り戻すものの、何かが欠けている。学園にルイの姿がないのだ。そんなある日、半年前に起きた『食殺事件』の犯人が野放しになっている事実を、改めて突きつけられる出来事がレゴシに起きる。愛するハル、ひいては草食獣の命を守るため、犯人を捕まえようと決意するレゴシだが…。その一方で、壊滅したはずのシシ組が、裏市で再び力をつけ始める。新たなボスを迎えた彼らは『新生シシ組』と名乗り、勢力拡大に乗り出していた。チェリートン学園と裏市、それぞれに残した因縁が絡み合い、やがてレゴシに試練が訪れる。果たしてレゴシは、『本当に大事なもの』を守り抜くことができるのか?
【「BEASTARS」第1期】
肉食獣と草食獣の共存する世界。食肉が重罪とされるなか、名門校・チェリートン学園で演劇部の生徒が食い殺される“食殺事件”が起きる。犯人は見つからず、不安に揺れる生徒たち。そんな中、演劇部では死んだ生徒の代役を巡っていさかいが起きる。次期『ビースター』候補とささやかれ、演劇部のカリスマ的存在であるアカシカのルイに、逆恨みをした肉食獣の部員が襲いかかったのだ。それを庇ったのは、照明係の二年生・レゴシ。『鋭い爪』や『大きな体』など、強そうな外見とは裏腹に、心優しく無口で不器用なオスのハイイロオオカミだ。だが、当のルイはそんなレゴシを偽善的で気に食わないと言い、強引に夜間練習の見張りに任命する。夜。誰もいない講堂裏の裏庭で、ひとり見張りをしていたレゴシの前に現れたのは──小さな白いドワーフウサギの女子生徒・ハル。その匂いを嗅いだ瞬間、レゴシの体を本能が駆け巡る。我を忘れて襲いかかり、気付いた時には、彼女を両腕に抱きすくめていた。腕の中で聞こえる鼓動が自分のものか、彼女のものかもわからない。しかしこのハルと、そして自分の本能との出会いが、静かで穏やかだったレゴシの人生を大きく変えていく。彼女へのこの感情は、恋なのか? それとも食欲なのか? オスとメス、肉食獣と草食獣。それぞれの痛み、そして強さや弱さに直面しながら、悩めるレゴシの青春がいま始まった──
▼STAFF
原作:板垣巴留『BEASTARS』(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊)
監督:松見真一
脚本:樋口七海
制作:オレンジ
キャラクターデザイン:大津直・乘田拓茂
VFXアートディレクター:船田純平
CGディレクター:太田光希
美術監督:池田真依子
美術設定:多田周平
色彩設計:橋本賢
撮影監督:富崎杏奈
編集:植松淳一
音楽:神前暁(MONACA)
▼CAST
レゴシ:小林親弘
ハル:千本木彩花
ルイ:小野友樹
サグワン:玄田哲章
セブン:折笠富美子
スナガ:室元気
ジャック:榎木淳弥
ジュノ:種﨑敦美
ピナ:梶裕貴
フリー:木村昴
ゴウヒン:大塚明夫
ヤフヤ:三木眞一郎
ゴーシャ:千葉繁
メロン:沖野晃司
▼エンディングテーマ
「Feel Like This」由薫
作詞 由薫
作曲 由薫・David Fremberg
編曲 David Fremberg
(Polydor Records)
▼配信情報
第1・2期:Netflixにて見放題独占配信中
ファイナルシーズン:分割2クールにてNetflix独占配信。Part1は2024年12月5日配信予定
・公式サイト:bst-animation.com
・公式Twitter:@bst_anime
この記事の関連情報
由薫、アニメ『BEASTARS FINAL SEASON』Part1エンディング主題歌「Feel Like This」リリース決定
由薫、ワンマンライブにスペシャルな意識「みんなに誇りに思ってもらえるよう、ちゃんと前を向いていたい」
由薫 × ワンオクのToru、デジタルコンピ『YU-KA & Toru works 2022-2024』を配信
【インタビュー】由薫、ドラマ『笑うマトリョーシカ』主題歌含むEPに濃厚で果てしない広がり「表現したのは現在の自分のありのまま」
由薫、新EP『Sunshade』収録曲より「ツライクライ」MV公開+リリース記念YouTubeライブをアーカイブ
由薫、新EP『Sunshade』リリース記念YouTubeライブ決定
由薫、EP先行配信曲「勿忘草」MVに本人の幼少期
由薫、EP『Sunshade』を9月配信リリース+「勿忘草」を先行配信
由薫、ドラマ『笑うマトリョーシカ』主題歌MVをプレミア公開