【インタビュー】琴音、幼さとしたたかさ・純情と激情・内省と反抗など様々な感情を圧巻の歌唱力で表現

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16歳から22歳へ。高校生からプロの音楽家へ。およそ5年間の活動記録を収めたアルバム『成長記 ~Now&Best(2018-2024)〜』は、その名の通り、ヴォーカリスト・琴音が生まれてから現在までの確かな成長記録だ。CDは2枚組で、最新曲「Heaven」(土ドラ『嗤う淑女』主題歌をはじめ新曲や初音源化曲に加え、カバー曲や過去の代表曲を網羅したDISC-1と、2023年7月のホールライブを丸ごと収録したDISC-2の組み合わせ。幼さとしたたかさ、純情と激情、内省と反抗など、成長期の様々な感情を圧巻の歌唱力で表現する、この1作に琴音の魅力のすべてが詰まっている。デビュー5年、一つのターニング・ポイントを迎えた彼女に、現在の胸の内を聞いてみた。

■DTMを覚えてからは作れる曲のジャンルが広がった
■音楽性としてもだいぶ広がったのかなと思います


――新しいアルバムの話をする前に、この5年間で変わったことや変わらないことや、そういうこともテーマとして聞いてみようと思っています。最初にお会いした時は、デビュー直後なので、確か高校3年生でしたね。

琴音:そうですね。

――そのあと、音楽の専門学校に2年間通って、今は社会人というか、専業歌手というか。

琴音:社会人というと、なんか申し訳ない気持ちになるんですけど(笑)。学生をやめてから2年ぐらい経ちます。

――振り返ると、5年間には色々と変化があったなと思いますか。生活環境として。

琴音:思いますね。生活環境はもちろん変わりましたし、関わる人たちとかも、公私ともに全然違います。スタッフさんたちもちょっとずつ変わっていきますし、アレンジャーさんだったり、楽曲提供してくださる方もそうですけど。ライブもそうですね。ワンマンをやるとなったら、サポートミュージシャンを呼んでいただいたりしますけど、編成も変わって行ったりもしています。プライベートはプライベートで、高校の友達はみんな東京に来たんですけど、帰っていったり。

――あ、そうなんですね。

琴音:専門学校とか大学を卒業するとどうしてもホームシックというか、「私は田舎じゃなきゃダメなんだ」みたいな感じになって地元に帰る人もいましたし、専門学校はまた雰囲気が違って関わる友達も一新されて、高校の時の友達とはあまり関わらなくなって連絡がほとんど取れない状態になったり。今、一番連絡を取っているのは専門時代の子と、あとは本当に数少ない、中学校の頃から連絡を取り合っている揺るがないタイプの友達ですかね。田舎に帰った時に会ったり。基本的に、専門時代の友達が多いですね。

――専門学校時代のことも、あらためて聞いてみたかったんですよね。音楽の勉強をすることで、何が身につきました?

琴音:一番大きいのは、やっぱりDTM(デスクトップミュージック)ですね。それ以前とは曲の作り方が全然変わったし、今まではギターしか手段がなかったので、コード進行を作る時に、手癖に悩まされたりすることがあったんですけど、今はCubase(音楽制作ソフト)を使っていてコードが可視化できるので、前もこういうの作ったなとか、すぐにわかるんです。同じコード進行でも、作れる曲のジャンルがかなり広がったのと、それ以前の曲はギター独特のグルーヴというか、ちょっと跳ねる感じのものばかりだったんですけど、四つ打ちの曲だったりとか、インテンポ(一定速度)のものが作れるようになったりして、音楽性としてもだいぶ広がったのかなと思いますね。


――その要素は、最近リリースされた曲にも出ていると思います。歌詞はどうですか。言いたいことや、テーマや、言葉使いとか、5年間で変化は感じていますか。

琴音:言いたいことは…どうなんだろう? 曲によるので、なんとも言えないんですけど、私の場合、内省的な歌詞が結構多いんですけど、日常的な要素から取り入れるみたいなことが、デビュー以前より増えたかなと思います。

――そうなんですね。

琴音:最初からコンセプトを決めておくということもするようになりました。私は元々、自分の記憶であったり、体験したことを歌詞として発展させたくないところがあって、たとえば、普通の友達との話を恋愛に置き換えてラブソングを作るとか、そういうことはあんまり得意じゃないというか、友情は友情として曲にしたい、みたいな感じだったんですけど、そういうこだわりもなくなったかなと思います。逆に、すごくやりきれないことがあると、「とりあえずラブソングにしておこう」とか、そういうこともするようになりましたね。ラブソングって解釈がめちゃくちゃ広いから、ラブソング風の何かにしておいたら、曲として成り立つかな?みたいな感じでやったりもします。


『成長記 ~Now&Best(2018-2024)~』

――たとえばで言うと、今回の『成長記』の中の新曲のうち、唯一、琴音さんが作詞作曲した「image」という曲がありますよね。これって、目の前の現実と理想とのギャップに悩んだり、自分は何者だろう?と考えているような、そんな心の動きを歌った歌かな?と思ったんですけど。これはかなり実体験に近いものですか。

琴音:「image」は、自分の尖った気持ちが出ている曲で、音楽をやっている友達と関わっていく中で抱いている感情を曲にしています。この数年の間に、結構な数の人たちが辞めていって、残っている人たちも、音楽をやるということ自体に必死すぎるというか、音楽をやらざるを得ない状況を作ることで音楽をやろうとしている、みたいな人が多い気がしたんですよ。「結局、音楽しかできないんだよね」みたいな。

――はい。

琴音:でも別に、音楽しかできないという言葉で自分を縛ろうとしても、「そうはいかねぇぞ」って私はいつも思っちゃうというか。結局、音楽って、誰にやれと言われるものでもないし、自分がやりたいからやっているものだし。残念ながら、例えば自分が辞めたとしても次々といろいろな方が出てきてしまうじゃないですか。どんなスターの人でもそうだから、結局は気持ち次第だと思うんですね。「音楽しかできないからさ」と言っているその子たちも、実際のところは、学校にも行けるし、バイトもできるし、音楽以外のやり方で生きていくことがおそらくできるんですけど、それを認めたくないんだなと思ったし、そういうものの裏返しとして「音楽しかできない」と言っているんだろうな、と思うと、すごいやりきれなくなるというか。

――うーん。なるほど。

琴音:自分もその気持ちはわかるから、「そうだよね」って言うんですけど、言うたびに後ろめたくなるし、そこで同調している自分もなんだかな、ってなっちゃうし。たぶん音楽に限らず、自分の好きなことをやっていると、いい時は2倍嬉しいけれど、うまくいかない時はめちゃくちゃ傷つくし、不自由になっていったり。音楽をやらなきゃいけないからやってるんだ、という気持ちにならないと現状に耐えられないって気持ちはわかるんですけど、自分がやりたくてやってるんだからって、そこで「わがままに生きるんだ」と言い切る勇気をお互いに持とうぜ、という気持ちで書きました。

――この歌詞にそれだけの心の動きが詰まっているとは、想像以上です。自分がやりたいからやっているんだと言い切れないことを、はがゆく思う琴音さんの感情もわかるし、はっきりとそう言えない子たちの、照れや葛藤もわかる気もするし。これはちょっと、いろいろ考えさせられるテーマですね。

琴音:あの、全然話は違いますけど、母と話していた時に、母は子供が生まれてやっと自分の生き方がみつかったというか、「自分はこのために生きてるんだと思ったんだよ」と言われたことがあって。「今まで、何の使命を持って生きてるのか?と思ってたけど、子供が生まれた時に、この子らを育てるために私は生まれてきたんだと思った」と言っていて。でも私はそれを全く理解できなくて。母の言っていることが何にもわからなかったんです。やりたいことをやるために、やりたいことを見つけて、いい感じの人生を歩むために生きている、でもいいんじゃないですか?って。でも、なんで私は生きてるんだろう?みたいなことを考えたり、何の使命を持って生まれて、今生きてるんだろう?みたいなことを考えてる人って、意外と多いのかなって思いました。

――そうだと思いますよ。

琴音:私はあまり理解できないけど、でもそういう人たちの生きがいがいつか見つかったらいいなと思うし、そうなった時に、生きたいように生きるということができるようになったらいいなと思います。

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