【インタビュー】BLUE ENCOUNT、『ライジングインパクト』主題歌「gifted」に結成20周年の軌跡「少年漫画のような生活を送ってきた」

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■誰かに憧れても同じにはなれないって諦める
■でも、諦めてからが勝負というか


──「gifted」の歌詞は、“天才凡才 そんな区別なんて邪魔だ 僕らは皆 ⽣きるという才能を授かった奇跡の⽣命体”とか、強い表現も満載ですね。

⽥邊:その部分は、近年で自分で最も好きな歌詞のひとつです。言葉で表現できることの可能性が広がってきている気がしているんですね。昔は作詞の作業が嫌いだったんですけど(笑)。今は一番好きなのかもしれない。自分と向き合えますし、バンドの未来にもなるのが作詞なので。

──“自分は、自分として生きる才能に恵まれた存在”だと感じることができる歌詞です。例えばメジャーリーガーの大谷選手のようにはなれなくても、その人にしか生きられない人生が誰にでもあるはずですから。

⽥邊:大谷選手も誰かを羨ましく思っているのかもしれないじゃないですか。でも、他の何かにはなれないから、今ああして存在して、目覚ましい活躍をして、誰かに羨まれたりするんですよね。

──演奏もそうですよね。同じ機材を使ったとしても他の誰かと同じ音にはならない。その人ならではのニュアンスになりますから。江口さんも、自分ならではのプレイができる才能に恵まれた存在であり、giftedということですよ。

⽥邊:この前のツアーでは若手と対バンをしたんですけど、その打ち上げでみんながめちゃくちゃ江口のギターを褒めてくれたんですよ。“いつの間に彼はそんな立ち位置になっていたんや?”って思いました(笑)。

⾼村:「江口さん、ナンバーワンです!」って言われていましたからね。

江⼝:それ言ったの、ヤバTのもりもと(ヤバイTシャツ屋さんのドラマーもりもりもと)でしょ?

⽥邊:ドラマーが江口のギターを褒めるというのが、よくわからないですけど(笑)、彼はめちゃくちゃハードロックファンですからね。スラッシュ(ガンズ&ローゼズのギタリスト)が大好きな彼が江口を褒めていました。「江口さん、スラッシュは通ってないんですか?(←もりもと)」「通ってない。全員が通ってると思うなよ(←江⼝)」っていうような会話が面白かったです。


──江口さんも地道に積み重ねて自分なりのスタイルを確立したんですよね。

江⼝:“誰かに憧れても同じにはなれない”って、どこかのタイミングで諦めるんです。諦めてからが勝負というか、自分のアイデンティティみたいなものを探して見つかるんだと思います。

⾼村:僕は対バンツアーでいろんなドラマーの音を聴いて、そのドラマーのセットに座らせてもらったりもしたんですけど、誰ひとりとして同じではなかったです。そこが面白いと僕も思いました。

⽥邊:たしかに、毎回ドラムセットに座らせてもらっていたよね?

⾼村:うん。僕と同じくらいの体形なのに、打面の高さとかバランスとか全然違うんです。考え方とか感覚の違いを感じましたし、“もっと自分に合ったものがあるんじゃないか?”と考えるきっかけにもなったんです。視野が広がりましたね。

──「gifted」もBLUE ENCOUNTの4人だからこそ鳴らせるサウンドだと思います。展開するにつれて光に溢れていくようなテイストは、ブルエンならではのものを感じます。

⽥邊:朝日が昇ったような感覚というか、身体が目覚めて心が躍動していく感覚を、全体を通して表現できているのかなと。『ライジングインパクト』の主題歌ですから、主人公のこともイメージしていますけど、聴いてくれる人も主人公だと思っているので、全ての音が全ての人に向けてのもの。そうなればいいなと思って作りました。

⾼村:シンセサイザーの音も含めて、全部上に抜けるような音をチョイスしたんです。スネアの音も下に沈まない感じというか。抜けやすい音域を全体的に選んで構築したから、爽やかな印象になったのかな。

──コーラスのハーモニーとか清らかです。

⽥邊:人間味のある壮大さを作りたかったんです。ゴスペルっぽいこの感じは自然に入れられた気がしています。「ちょっと、これ入れさせてください」と仮歌の時に歌ってみたものがそのまま採用されたので。

──オープニングの逆回転再生っぽい音は?

⽥邊:「こういうリバースにしてほしい」みたいなことを言ったよね?

⾼村:うん。えぐっちゃん(江⼝)のギターの音をリバース加工したものです。

⾼村:⽥邊から「逆回転の音がほしい」って言われていろいろ作ったんですけど、なかなか曲に合わなくて。“合わない理由は、曲本編の音を取り入れていないからだな”と思って、一番合いそうなえぐっちゃんのギターフレーズをリバースして、波形をいろいろいじったりもして、あの音を作ったという。

⽥邊:昔は4人の演奏フレーズだけで作る感じだったんですけど、今はそれ以外の要素を加えるのが楽しくなってきています。⾼村と辻村がDTMにより詳しくなっていますし、僕と高村のふたりだけでプリプロするようにもなってきていて。そうすると、4人のスタジオでは浮かばなかったようなアイデアが出てきたり。僕の頭の中にあるイメージがより表現できるようになっているのは、この1〜2年のBLUE ENCOUNTの成長だと思う。


──辻村さんはNYに行って、いろいろ吸収しているでしょうし。

⽥邊:フレーズに関してもそうですし、リファレンスとして提示してくれるものの引き出しが、すごいことになっています。そういう意味では、「このリファレンスみたいな感じにしたいんだよね(←辻村)」「わかる(←⽥邊)」みたいなやり取りは前と変わらず。物理的な距離が離れても、そうやってお互い共有できているのは長年一緒にやってきたからこそです。

──辻村さんとのリモート制作も順調のようですね。

⽥邊:リモートとか、そういうテクノロジーの進化とは縁遠いバンドだと思っていたんですけど、すごく活用するようになりました。それによって、いろんなことに対する可能性が広がり続けている。“今までなんでこういうことをしなかったんだろう?”と思っているくらいなので、今後より挑戦的に取り組めるようになっていく気がしています。

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