【ライブレポート】PassCodeが“VERSUS”するもの
「どんなにバンドっぽい音楽やっていても、アイドルなんだなって言われました。だから、ちょっと恥ずかしくなったりすることもあったんです。そのことがすごく申し訳なくて……」
◆ライブ写真
ライブ終盤、O-EASTのフロアを埋め尽くしたオーディエンスに向かって、南菜生はそう語っていた。それはさまざまな偏見と闘ってきた、彼女たちだからこその言葉だった。そうした苦悩に対してひとつの答えをくれたのが、ハルカミライからの言葉だったという。
音楽性とそのスタイルは異なれど、通じ合ったもの同士が同じステージに立つ。それが<VERSUS PASSCODE>と銘打った、PassCodeが対バンしたいアーティストを迎えるイベントである。2024年7月1日に開催された<VERSUS PASSCODE 2024 Vol.2>はハルカミライを迎え、お互いがリスペクトしあった、熱すぎる夏の夜になった。
先攻のハルカミライは破天荒ながらも優しさを感じさせる、飾らない姿勢と真っ直ぐな気持ちをぶつけた全力のステージで、これでもかというほどにフロアを熱くさせた。そして随所にPassCodeへのリスペクトが溢れ出ていた。
そして、PassCodeのステージが始まる。
エレクトロビートとオーディエンスの高鳴る鼓動に合わせて登場した4人。これまでにはない鮮烈な赤を大胆に使った新衣装が目を惹く。
「EAST〜!!」
そう叫んだ南菜生の第一声がフロアの士気を一気に掌握すると、「Wow Wow〜」とのっけから大きなシンガロングが巻き起こった。初手は「It's you」。バックスリーンに映し出されたMVの海辺の朝焼けは、レーベル移籍という新たなスタートを切ったPassCodeの明るい未来を表しているようにも見えた。4人がステージから放つパワーがフロアを熱くさせ、それに応えるようフロアから湧き上がるオーディエンスの力いっぱいのコールとMIXが、ステージ上の4人のパワーとなって、途轍もないエネルギーが会場を覆い尽くしている。「Wow〜」というオーディエンスのシンガロングに乗せて、南が、高嶋楓が、大上陽奈子が、丁寧にメロディを紡いでいき、有馬えみりが獣のごとく咆哮する。
続けざまに「GROUNDSWELL」、「MYTH」とアッパーなナンバーを叩き込んでいく。キレのある動きを見せながらも4人の表情は柔らかく、フロアからの熱を存分に感じながらライブを楽しんでいる様子がありありとわかる。そんな4人を支えるバンドのアンサンブルは獰猛で、強靭なサウンドが猛り狂う。
「ハルカミライをずっと呼びたかったけど、呼んだら自分たちが後に出なければいけない」そう悩んだという南。「凄く楽しそうなフロアで、楽しそうな1日になるなと思うんですけど、“VERSUS”という名前をつけたからには、負けたくないんですよ!!」と高らかに声を上げると、そのまま「Freely」へと傾れ込んだ。エッジの効いたダンサブルなビートに絡みつくボーカルが襲いかかる。緩急の激しいリズムに合わせて、パーカッシヴにシャウトを挟み込んでくる有馬。緻密に構築された複雑な楽曲展開を、ライブならではアグレッシヴさで昇華していく。そして、歯止めが効かないほど加速する凶暴性を冷ますように、無機質で不穏な電子音が響く「Seize Approaching BRAND NEW ERA」。ステージに幾何学模様を描くよう4人は多角的な動きで魅せていった。
迸るビートにメロディアスな歌が折り重なっていく「Ray」。柔らかな表情でオーディエンスを惹きつけていく大上と、しなやかな動きで魅了していく高嶋。激しさや強さに注目されがちなPassCodeであるが、流麗な美しさをも兼ね備えていることを、こうした楽曲のパフォーマンスから改めて思い知らされる。
そして、まさかのハルカミライ「夏のまほろ」のカバーを投下。誰も予想していなかったはずだが、「待ってました!」と言わんばかりに、いきなり大きなシンガロングが響いた。ハルカミライのステージでも、橋本学(Vo)が思わず「PassCodeのサクラか!?」と疑うほど、オーディエンスが大合唱する場面が幾度となくあったが、それほどまでにフロアを埋め尽くした両アーティストのファンは異常なほど熱い。PassCodeの音楽性とは遠いストレートなロックチューンをPassCodeらしくリアレンジ。原曲へのリスペクトを存分に感じさせながら力強く披露した。ダンスがないぶん、自由気ままにステージ上を闊歩し、詞をじっくりと噛み締めるように歌う4人の晴れやかな表情が印象的だ。
2017年に心斎橋BRONZで行ったハルカミライとの対バン。当時はお互いの力不足もあり、フロアにはスペースもあったというが、あれから7年が経ち、O-EASTをパンパンにするところまで来られたことを南は感慨深く語った。そして、昨年<百万石音楽祭〜ミリオンロックフェスティバル〜>のケータリングブースで、メンバーに直交渉して実現したという今回の<VERSUS PASSCODE 2024 Vol.2>。「ハルカミライにめちゃめちゃあたためてもらったフロア」に立てることを深く感謝した。
バンダイナムコミュージックライブによる新たなレーベル「MoooD Records」への移籍第一弾シングル「WILLSHINE」が、この日24時にTVアニメ『SHY』東京奪還編のオープニング主題歌として流れることを告知すると、公開前に初披露する。スリリングな楽曲展開に合わせて変化していくキャッチーなメロディが耳に残る。有馬のけたたましいグロウルからの地響きを呼び起こすようなガテラルがあり、そして奇を衒うラップライクなパートあり、燦然としたサビの煌びやかさも含めて、PassCodeの魅力をギュッと凝縮しながらも、どこか新しい可能性を感じさせる楽曲だった。
「もう一回ここから始めようか」
南がそう叫んで始まった「Future's near by」。あの日、2020年1月13日の新木場STUDIO COASTのアンコール、日本武道館でのライブを宣言したときと同じ言葉だった。あれから彼女たちは宣言どおり、2022年2月12日に武道館公演を大盛況に収め、あのときより何倍も大きな自信を胸に今ここにいる。
変則的な楽曲の進行を全力で駆け抜けていく「Tonight」からの「Club Kids Never Die」。イントロのシンセフレーズを口ずさむオーディエンスの歌声がこの楽曲を欲していることがわかる。南の煽りがオーディエンスを誘発し、有馬の叫びがフロアのカオティックな様相をさらに掻き乱していく。
そして、冒頭の南のMCである。
「みんなに謝りたかったことがあって。ちょうど2017年くらい、ちょうどハルカミライと対バンしてたとき。ずっとバンドと対バンする度にMIXがあったりとか、ヲタクっぽいはしゃぎ方があったりすると、やっぱりどんなにバンドっぽい音楽やっていても、アイドルなんだなって言われました。だから、ちょっと恥ずかしくなったりすることもあったんです。そのことがすごく申し訳なくて……。でもね、学さんが、“PassCodeのフロアは、情熱的なアツいヲタクたちのフロアだ”って言ってくれて。その言葉にすごく、すごく、すごく救われました。だから今もこうやって活動が続けられています。本当にありがとうございました!」
ハルカミライへの感謝と敬意——。その南の言葉に導かれるように、ラストナンバー「Clouds Across The Moon」が始まる。エモーショナルに哀愁漂うメロディをなぞっていく4人。もちろんフロアのオーディエンスは精一杯コールをし、MIXをして、彼女たちと一体となってライブを創り上げていく。そこにはアイドルとか、バンドとか、そういったジャンルの壁や偏見も存在しない。いや、それを超えてきたからこその景色が、そこにあった。
《月が照らす次の未来へ… ゆこうぜ!》
と、我々に手を差し伸べながら4人は笑顔を見せた。
終演後、PassCodeを初めて観て度肝を抜かれたという来場者のXのポストを多く見かけた。ジャンルの壁や偏見というものは、この先もなくなるものではないと思っている。しかしそれは悪いことではない。むしろ、そこに立ち向かって、越えたりぶち壊してくれたりするアーティストがいるから面白いのだ。
PassCodeの4人は、これからもそういったものと相対して(=VERSUS)いくのだろう。
取材・文◎冬将軍
写真◎ヨシモリユウナ
セットリスト
2.GROUNDSWELL
3.MYTH
4.Freely
5.Seize Approaching BRAND NEW ERA
6.Ray
7.夏のまほろ(ハルカミライ カバー)
8.WILLSHINE
9.Future's near by
10.Tonight
11.Club Kids Never Die
12.Clouds Across The Moon
「WILLSHINE」
https://lnk.to/LZC-2838
■初回限定盤(CD+Blu-ray)LAMR-34034
2024年9月11日リリース
6,600円(税込)/ 6,000円(税抜)
-CD-
01. WILLSHINE
02. タイトル未定
03. WILLSHINE -Instrumental-
04. タイトル未定-Instrumental-
-初回限定盤Blu-ray-
PassCode Zephyren 10th Anniversary A.V.E.S.T project 鼓動at 国立代々木競技場 第一体育館
■通常盤(CDのみ)LAMR-4034
2024年9月11日リリース
1,430円(税込)/ 1,300円(税抜)
-CD-
01. WILLSHINE
02. タイトル未定
03. WILLSHINE -Instrumental-
04. タイトル未定-Instrumental-
※描きおろしイラスト長帯仕様
【商品の予約はこちら】
初回限定盤 https://lnk.to/LAMR-34034
通常盤 https://lnk.to/LAMR-4034
<PassCode Asia Tour 2024>
10月12日(土) Guangzhou・To Be Announced
10月13日(日) Shanghai・To Be Announced
10日27日(日) Taipei・CORNER MAX
11日9日(土) Seoul・West Bridge Live Hall
11日10日(日) Seoul・West Bridge Live Hall
12日17日(火) Tokyo・Zepp DiverCity
12日19日(木) Aichi・Zepp Nagoya
12日21日(土) Osaka・Zepp Osaka Bayside
チケット情報:https://passcode-official.com/topics/detail/index/1602
<PassCode Undo→Step TOUR 2024>
8月3日(土) 宮城・仙台Rensa
8月4日(日) 静岡・LiveHouse浜松窓枠
8月8日(木) 愛知・ElectricLadyLand
8月9日(金) 大阪・Yogibo META VALLEY
8月11日(日・祝) 兵庫・神戸Harbor Studio
8月12日(祝・月) 石川・EIGHT HALL
8月17日(土) 京都・KYOTO MUSE
8月18日(日) 東京・代官山UNIT
8月22日(木) 東京・代官山UNIT
8月24日(土) 岐阜・CLUB ROOTS
8月25日(日) 神奈川・YOKOHAMA ReNY β
8月31日(土) 千葉・柏PALOOZA
9月1日(日) 愛媛・W studio RED
9月6日(金) 北海道・札幌Sound Lab mole
チケット情報:https://eplus.jp/passcode24/
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