【インタビュー】ν[NEU]、完全完結を掲げたバンドのラストメジャーデビューアルバムに永遠「一発録りによる今の音を」

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ν[NEU]が7月3日、ワーナーミュージック・ジャパンよりラストメジャーデビューアルバム『N.ever』をリリースする。2011年にメジャーデビューを果たしたν[NEU]は2014年12月、渋谷公会堂のライブを最後に解散。その後、2020年に1年間の限定復活を果たすものの、コロナ禍に見舞われたこともあり、ライブがキャンセルに。さらにはギタリストの華遊がプライベートな事情により参加できなくなったりと、想定外のことが続いた。ちなみに解散以降、ヴォーカルのmitsu以外は音楽を離れ、復活以降も各自の仕事と音楽を両立。そんな中、ツアー中のある日、リーダーでベーシストのヒィロが「もう一度メジャーデビューしたい!」とメンバーに投げかけたことで、ν[NEU]を“完全完結”させるという流れが決まっていった。

◆ν[NEU] 画像 / 動画

結成から完結までの15年の集大成となったFINAL BEST盤『N.ever』は豪華盤15曲(通常盤は13曲)のうち、13曲が4人がスタジオに集まって文字通り、一発録りした2024ver.となるもの。ν[NEU]のライブの最後を飾ったナンバーでもある1曲目「everlasting light」と解散ライブで配布された最後の曲「エンドロール」に関してはアレンジを大きく変えて再録音された“リアレンジver.として収録されている。

ν[NEU]は7月7日から<LAST ONEMAN tour『N.ever』>と題し、全13箇所のラストワンマンツアーを開始。2025年1月4日(土)に渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)にて開催される<ν[NEU] since2009〜2025 FINAL LIVE『エンドロール 〜何よりも大事な君に〜』>が最終ゴールとなる。

「復活後はバンドをやるためというより、このメンバーと一緒にやりたかったから集まった」と振り返るのはmitsu。それほどまでに信頼し合っているのに、ν[NEU]はなぜ、“完全完結”という道を選択したのか? そして、最終的に目指す“永遠”というゴールとは? 4人にたっぷり話を聞いた。


▲FINAL BEST盤『N.ever』

   ◆   ◆   ◆

■音楽人生を終わらせる選択をすれば
■もう一度ν[NEU]に本気になれる


──ラストメジャーデビューアルバム『N.ever』のリリースに加えて、2025年1月4日の渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)ワンマンまで、“完全完結”のゴールに向けて活動中のν[NEU]ですが、バンドを終わらせることにした経緯を教えてください。

ヒィロ:遡ると僕たちは、2014年12月29日の渋谷公会堂ライブを最後に解散したんですね。その後、メンバーが再会したのが2019年。当時は“完結させよう”という気持ちは全くなくて、2020年6月から2021年7月まで「1年間限定復活しよう」「またν[NEU]をやろうか」って感じだったんです。とはいえ、コロナ禍で思うように活動ができなかったんですけどね。

mitsu:「いったん集まって1年間やってみようよ」って。メンバーでもう一度集まるのが一番の目的でしたね。

ヒィロ:「もう一回、ν[NEU]に時間を費やしてみよう」って。解散以降、mitsuくん以外はそれぞれ別の仕事に就いていたんです。ギターのタクミはホストで、ドラムのЯeIは飲食業で、僕は美容業。諸々、仕事や家庭の事情があって参加できなくなったギターの華遊くんは就労支援の仕事をしていましたね。

mitsu:さらに遡ると前身バンドから含めてν[NEU]の初期メンバーで残っているのはヒィロだけなんですよ。その後、前のボーカルとギターが脱退してヒィロとЯeIの二人だけのν[NEU]に自分とタクミ、華遊が入ったんですが、僕が加入する決め手となったのは「2年以内にメジャーデビューする。できなかったら解散する」っていうヒィロの言葉だったんです。昔から僕らは「やるか、やらないか」「0か100か」みたいなバンドなんですが、今回はヒィロが音楽活動を引退するということで完全完結という形になったんです。


▲mitsu (Vo)

──なぜ、そう思われたんですか?

ヒィロ:コロナ禍で計画していた1年限定の復活活動ができなくなったこともあり、2021年から2022年にかけてはキャンセル料の返済もあって、不純というか濁った状態でν[NEU]をやらざるを得なかった。返済の目処が見えたのが2023年からの活動だったんですが、僕らの結成記念日の7月1日に新宿BLAZEでのライヴが終わって、家に帰った時に、“音楽人生を終わらせる選択をすれば、もう一度ν[NEU]に本気になれる。今度こそ最高の形で終わらせせよう”って思ったんです。あと、自分が思っていた以上にバンドに対する後悔があることに気づいたんですね。

──というと?

ヒィロ:2014年に解散を発表した時、僕たちはファンの子達に終わる理由を明かさなかった上、発表して2ヵ月後に突然いなくなってしまったことを後悔していて…。これをメンバーに言うとバカにされるんですけど、今は“ν[NEU]を伝説にしたい”と思っています。

mitsu:ははは。周りから言われるならいいんですが、自分から言うのはダサい(笑)。

ヒィロ「伝説のバンドになるぞ!」って。

──デビュー前に「メジャーデビューするぞ」って言っていた時のテンションに戻ったんでしょうか?

ヒィロ:いや、このテンションはずっとあるんです(笑)。バンドが解散した時も「俺はエスティティシャンになる」と言ってて。基本、言ったことは全て叶えてきているので、“ν[NEU]みたいな復活をしたい”とか“ν[NEU]みたいな復活をしてほしい”って、バンドマンにもファンにも思ってもらいたいっていうのが僕の中にあるんです。今の目標は当時の解散ライブと同じ、渋公完全ソールドアウトです。


▲タクミ(G)

mitsu:さっき言っていた“やらなきゃいけない時期”を超えて、“やりたいことをやる”にシフトしたと思うんですね。ヒィロは昔からユーザー目線も持ち合わせているミュージシャンであり、ずっとν[NEU]を支えてきたので、ちゃんと終わりを決めて活動したいということであれば、それが一番いいと思うんですよ。

──メンバーも同意したんですね。

mitsu:同意したというか、“ヒィロがν[NEU]だ”と思っているところがあるので、今、できることがゴールを決めてやることなんだなと捉えてましたね。

──タクミさんとЯeIさんはどう受け止めましたか?

ЯeI:僕は一番ヒィロと付き合いが長いので、想いを聞いて“最後までとことん一緒にやりたいな”って。それだけですね。“一緒に終わろう”って。

タクミ:自分もこのメンバーだからやっているところがあるので、“そうしよう”って。それぐらいフラットにやらせていただいています。

──タクミさんにとって、この3人だからこそ、と思える魅力とは?

タクミ:自分にとっては空気感がちょうどいいんですよね。居心地がよくて自然体でいられる。そんな空間だからこそ、自分が好きなようにやれるし、無理しないでいられるんです。

mitsu:自分はソロ活動を始めてもうすぐ10周年なんですが、ν[NEU]を解散してからバンドを組んでないんですよ。3人も音楽活動をやめていたし。だから、バンドというよりν[NEU]のメンバーとやるという意識です。


▲ヒィロ(B)

──では、迷いなく完全復活を決めた時からメジャーでアルバムを出そうと思っていたんですか?

ヒィロ:これがまた違うんですよ。

mitsu:全く予想と違いました。

ヒィロ:本来だったら、1年ぐらい前から“もう一回メジャーデビューするぞ!”とか“音源出そう”って感じなんでしょうけど、去年7月1日の周年ライブの時には全くそんな想いはなかったんですね。

mitsu:リリースも考えてない。

ヒィロ:むしろ音源は出さないつもりでしたから。

mitsu:ちょっと話は戻るんですが、復活してから活動していて楽しかったんですよね。最初は楽器にずっと触っていなかったメンバーもいるので、“どうなるんだろう?”と思っていたんですが、タクミが言った空気感じゃないけど、しっくりきてライブに手応えを感じたんです。“練習してないのに、なんで成長するんだ?”って思ったんですが、たぶん、各自が別々の生き方を選んで自立したことで、他のメンバーのことを考えられるようになったり、視野が広がったんですかね。そういう経験によって音楽が成長することへの喜びを感じていたところに、ヒィロが「メジャーデビューしたい!」って言い出したんですよ。


▲ЯeI (Dr)

ヒィロ:はい。その頃からメンバーが自分たちの音楽に自信を持ち始めて、ドライヴがかかったんですよね。過去の楽曲を新たにアレンジしたり、ライブの伝え方が変わってきたんです。もう一度、メジャーデビューしたかった理由のひとつは、シンプルに子供みたいな気持ち。もうひとつはν[NEU]が過去メジャーデビューしたことと関係があるんです。東芝EMI、ポニーキャニオン、ユニバーサルミュージック、ソニーミュージックの4社と契約して活動してきた中、当時はいろいろな大人の方と関わらせていただき、いつしか音楽を作る楽しみが、CDを売らなきゃという気持ちに変わっていったんですね。要するに大きな渦の中に巻き込まれてしまった。

mitsu:CDを出さなきゃ、曲を作らなきゃって。

ヒィロ:そう。どんどん純度がなくなっていって、誰かのせいにしていたのをみんなが覚えているんです。でも、あれから月日が過ぎて、それぞれが独立している今だったら、渦の中に巻き込まれない、負けたりしないと思ったんですよね。つらい経験もたくさんしましたが、僕たちはメジャーにいくことによって、見たことのない景色やいろいろな方に出会えてよかったと思っているんです。だからこそ、もう一回、想像ができない未来を見たかった。で、ツアー中に狭いホテルの部屋の中にマネージャーを含めたメンバーを呼んで「メジャーデビューしよう」って。それが今年3月のことですね。

mitsu:昔からそうなんですが、前もって決まらないバンドなんですよ。7月に五度目のメジャーデビューするにはどうしたら間に合うんだろう?って。

──普通は間に合わないです(笑)。

mitsu:ははは。その唐突な提案に「何言ってるの?」じゃなく「じゃあ、やるか」ってなるのがν[NEU]なんですよ。そもそも2019年に復活した時も「僕は音楽を続けているから、バンドをやりたい意欲はわかるけど、なんで不安定でリスクもあるのに、もう一回音楽をやりたいの?」って聞いたら「いろんなことを経験したけど、音楽でしか味わえないワクワクをもう一回経験したい」って言われて「だったら納得できるよ」って答えたんです。きっと今回もヒィロの中ではメジャーデビューすることにワクワクを感じたんだろうなと。そんなスピード感だったので、取材を受けている今も実際は、「なんでBARKSみたいな大きな媒体のインタビューを受けているんだろう?」って(笑)。僕自身、ЯeIの「ヒィロについていこう」、タクミの「ありのままでいられるから、このメンバーなら全部OK」という感覚に近いですね。こんなに一緒にいて面白いメンバーはいないので。

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