【インタビュー】緑仙、2ndミニアルバムにVTuberの本気「フェスに出たい。お遊びで音楽をやってると思われたくない」

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バーチャルライバーグループにじさんじ所属の緑仙が2ndミニアルバム『イタダキマスノススメ』をリリースする。同作品にはリード曲「独善食」ほか、「Blowin’ Wind is blowin’」(2024年 ベガルタ仙台応援ソング)、「リコネクト」(JFN系列 全国33局ネット『AuDee CONNECT』火曜日テーマソング)など全7曲を収録。ロック&ポップなサウンド、自らのリアルな感情を込めた歌詞、そして多彩なエモーションを反映したボーカルを堪能できる仕上がりだ。

◆緑仙(りゅーしぇん) 動画 / 画像

メジャーデビュー後、初の作詞にも挑戦。単独作詞と共同作詞によるリリックが『イタダキマスノススメ』に強い意思と彩りの豊かさを加えた。楽曲制作は加藤冴人とebaを中心に制作。全曲ロックサウンドに拘ったバンド感は緑仙ならではのものだ。

11月に自身初のソロライブツアー<緑仙 2nd LIVE TOUR「緑一色」>の開催も決定している緑仙の2ndミニアルバムは、「本気で音楽に取り組むことによって、VTuberの音楽に対する見え方が変わるといいなと思ってます。覚悟が決まったアルバムになりました」と語る意欲作だ。『イタダキマスノススメ』についてじっくりと話を聞いた。


   ◆   ◆   ◆

■どの曲も誰かの感情ではなくて
■自分のことを書いてるんです


──緑仙さんは2024年1月26日に「しばらく配信お休み!無理!!!じゃあな!!!!!!!」と活動休止を宣言しました。これはやはり充電期間だったんですか?

緑仙:長めの冬休み、春休みをまとめていただいたという感じですね。ギターの練習だったり、あまりにも本を読んでなかったので、歌詞を書くためにも読書の時間もほしくて。メインの活動がYouTubeの配信なので、音楽をがんばりたいとは言え、インターネットやSNSを見ないと仕事にならないんですよ。だから毎日見ちゃうわけですけど、それってよくないじゃないですか(笑)。周りの仲間とも「インターネットをしばらく見ないだけで、体調がよくなった」とか「滝を見たり、キャンプとか行ったほうがいいね」みたいな話をよくするんですよ。以前は冗談だったんだけど、だんだんそうでもなくなってきて。自分のなかでも(2024年1月は)いいタイミングだったし、ちょっと休んでみようかなと。


──メンタルの健康のためにSNSやインターネットから離れる時期を作ったほうがいい、というのは一般的にもよく言われますよね。ネット依存気味だと難しいところもあると思いますが、緑仙さんはどうでした?

緑仙:完全に見ないのは無理でしたね。もともとは現実や学校が嫌でインターネットを始めたんですよ。一種の逃げ場みたいなものだったんですけど、今は逆になっちゃってて、現実が逃げ場になってて。もちろんお休みしたのはよかったと思いますけどね。歌詞もかなり書いてたんですよ。自主制作で作った楽曲は自分で歌詞を書いたんですけど、メジャーデビューしてからはやってなくて。長めの休みをいただいてる間もずっと書いてました。

──2ndミニアルバム『イタダキマスノススメ』収録7曲のうち、4曲は緑仙の単独作詞、3曲は共同作詞で。緑仙さんの言葉がしっかり込められた作品になってます。演奏陣にはバンドマスターの奈良悠樹さん(G)をはじめ、GLIM SPANKYの亀本寛貴さん(G)、cinema staffの三島想平さん(B)、ヒトリエのゆーまおさん(Dr)が参加。本格的なバンドサウンドもこの作品のポイントだと思います。

緑仙:前作「パラグラム」を経て、「やりたい音楽は? どういう目標がありますか?」とプロデューサーさんに聞かれたんです。もともと自分は伝えたいことが溢れているタイプで。最初は“伝えたいことをアウトプットする手段として、音楽ってすごく素敵だな”くらいの考えだったんです。それが変わってきたのが、初めてフェスに行ったとき。ずっと聴いていたバンドの音を生で浴びたときに“今日からがんばろう”と思ったし、すごく充実感があったんですよ。そういう感動って自分で足を運ばないと味わえないし、なかでもロックは直接的に伝わる音楽だなと思ったんですよね。あと、自分もフェスに出られるような人になりたいと思うようになって。“VTuberとしてフェスに出たい。お遊びで音楽をやってると思われたくない”という覚悟が決まったし、今回のミニアルバムにもその気持ちが出てるんじゃないかなと。

──オーディエンスとしてフェスに行ったことが転機になった、と。

緑仙:そうですね。ロッキン(ROCK IN JAPAN)だったんですけど、初めて行ったタイミングもだいぶ遅くて。地方に住んでいたので、フェスはもちろん、ライブハウスもなかったんですよ。なので初めて見たライブの衝撃はすごく大きかったです。


▲『イタダキマスノススメ』初回限定盤

──なるほど。今回制作はどのように進めていったんですか?

緑仙:自主制作で作ってたときと似たようなやり方なんですけど、歌詞や音を作る前に、自分の感情のメモを取りとめもなく書いたんです。最近あった良いこととか、“一生忘れてやらないぞ”みたいな腹の立つことまで、「何でもいいから書いてみて」と言われて。そのなかの強い感情を込められた言葉だったり、“これは歌詞にできそう” “共感してもらえそう”みたいなものを抜粋したんです。それをもとにして作った曲が多いですね、今回は。

──では収録曲について聞かせてください。1曲目の「独善食」はヘヴィな手触りのロックチューンです。

緑仙:自分は食事…食べることにすごく興味があって。最近はビュッフェが大好きなんですよ。まず一番高そうなお肉を食べ、マカロンを食べ、てんぷらを食べ…という感じで、サラダとかには触らないんです(笑)。でも人によってはちゃんとサラダから食べる人もいるし、本当に人それぞれで面白いなって。そのなかに“自分が普段考えていることや感情論みたいなものを混ぜ込んだ楽曲を作りたいです”って加藤(冴人 / 作曲編曲)さんに伝えたら、すごくヘヴィな曲が来ました。

──「独善食」のデモ音源を聴いたときの印象は?

緑仙:まさに“覚悟”って感じでした。加藤さんは自分がやりたいことを汲み取ってくれるし、欲しい音をくれるので、制作していて楽しかったですね。前作からご一緒させてもらってたんですけど、今回は直接やりとりすることが増えて。曲の制作やレコーディング、ジャケットのデザインもそうですけど、クリエイターのみなさんと関わらせていただいて、さらに密なコミュニケーションが取れました。

──緑仙さん自身の意向もさらに反映されている、と。「独善食」の歌詞には“承認欲求”みたいなテーマも込められていますよね?

緑仙:そうですね。“選ばれたい” “認められたい”という気持ちは誰にでもあると思っていて。それをビュッフェの食べ物に置き換えて歌詞にしてみたんですけど、書いてるときはつらかったですね。自分は“小説や映画を観て”とか、他の誰かの感情を歌詞にすることをやっていなくて。どの曲もそうですけど、誰かの感情ではなくて、自分のことを書いてるんです。普段からYouTube配信やラジオを聞いてくださってる方からすると、“いつも言ってることだな”みたいな内容もあるんじゃないかなって(笑)。歌詞を書いてる最中も自分自身のことや学生時代のことを思い出したりしてたので、たまに“あぁ…”って感じになっちゃって。「独善食」については、選ばれたいとか認めてもらいたいという気持ちは悪いことではないと思ってて。ただ“選ばれなくても大丈夫だよ”というところも込めているので、ちょっとでも伝わるといいなと思います。

──確かに“選ばれる”ということを重視し過ぎると人生つらいですからね。自分の価値を他人の判断に委ねてしまうというか。

緑仙:そうですよね。でも、自分の中に幸せの指標を作るのも、すごく難しいと思うんですよ。誰かが作った基準、“これが良い”とされているものに乗っかれたら、それはそれでラクだろうし。特にインターネット社会では、“これが自分の幸せだ”ってものを見つけるのは大変だなって気がします。

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