【速レポ】<SATANIC CARNIVAL>Paledusk、「お前らをライヴハウスに引き込むために」
<SATANIC CARNIVAL>は、“ラウドミュージックの居場所”という旗印のもとに開催されているフェスだ。パンク、ハードコア、ニューメタル、メタルコア、オルタナティヴロック──ここで鳴るものをあくまで言葉として挙げていけばこういったラインナップになるわけだが、しかし<サタニック>が“居場所”という言葉を掲げていることからもわかる通り、その音楽自体を愛する気持ちと同時に、そのラウドな音を生んだ場所と背景と精神性への敬意もまた、このフェスの根幹を成すものである。一人ひとりの存在表明として、あるいは敷かれたレールとは違う人生の選択肢を採るための武器として鳴らされてきた音楽達は、ストリートという場所の自由から生まれ、混ざって、転がってきた。だからこそサタニックはストリートカルチャーへのリスペクトを表したフェスでもあり、フェス側から一人ひとりに向けた信頼と人々の自治によって成立している景色を見ていると、ルールよりもモラルで形成されていくストリートの概念そのものだと思う。
◆ライブ写真
前置きが長くなったが、2024年の<サタニック>の号砲を鳴らしたPaleduskはまさに、現行のストリートの概念を表すバンドだ。ハードコア、メタルコアを背骨にした上で、SNS上、オンラインゲームまでもが無軌道な人間交差点になってリアルとヴァーチャルの境目が崩壊した現代を音楽曼荼羅にして描いている。そのクリティカルなミクスチャー感覚があるからこそ人を巻き込み、まさに新たなユニティを作り出さんとしていると言っていい。2023年春からいよいよフィジカルな交歓を取り戻して新時代に踏み出したライヴハウスシーン、ラウドミュージックシーン自体の先陣を切るにふさわしい“トップバッター”だ。
オープニングはお馴染み、EMINEMの「Lose Yourself」だ。トラックに合わせてBOBがドラムを打ち鳴らし、TSUBASAとDAIDAIが登壇して超ヘヴィなギターを重ねてライヴがスタート。さらにKAITOが登壇すると、ステージ上のLEDに巨大な“ペイルダスク”の文字が。間髪入れず「AREA PD」がスタートすると、今度は赤い悪魔がスクリーン上で踊り出す。「AREA PD」──要はPaleduskのテリトリーへようこそ、といった具合だろう。そのタイトル通り、ブレイクダウンもダンスも極端なほどに振り切れた山盛りの楽曲だが、その矢継ぎ早な展開に合わせて悪魔を取り巻くエフェクトがくるくると変わっていき、ハイパーな音が入ればレーザーに照らされ、ブレイクダウンでは爆炎に包まれる悪魔、悪魔、悪魔。殴るようなシャウトとポップなメロディを行き来するKAITOに、高く飛んでは空を蹴るDAIDAIとTSUBASA。音自体もブルータルだが、それを自分達の体そのもので貫こうとするようなプレイそのものが強烈なインパクトになって腹に届いてくる。立て続けにプレイされた「BLACK ICE」では、ラウドに留まらずダンスミュージックとしても機能する無限の音楽曼荼羅を表すようにサイケデリックな色彩の万華鏡が4人の背景に登場。楽曲後半のモッシュパートではバンドの歴史を高速で総ざらいするような映像が流れ、超高速で走馬灯の上を爆走していく痛快かつドラマティックなアクトである。
「俺らのこと観に来てるヤツ! これが聴こえてるヤツ! その手を挙げろ! 揺らせ! 揺らせ!」
そんな怒号から雪崩れ込み、巨大なダンスとモッシュを同時に誘発した「HAPPY TALK」。サビ前のブレイクで「歌うか・死ぬか!」と怒鳴ってアリーナ全体のシンガロングを呼んだ「SLAY!!」。ライヴ冒頭に「朝早くからすみません!」と言っていたKAITOだが、いやいや、暴発に次ぐ暴発でピットは既にトランス状態である。
「福岡出身でワケのわからん音楽をやっているPaleduskが、やっと日本のフェスのメインステージに来たぜ! 噛み締めるものがあります。サタニックの人達と面識がない頃から、“サタニックに出るんだ”と言ってきました。そしたらコロナ禍に開催された富士急(ハイランド)のサタニックにO.Aで呼んでもらいました。でもさ、嬉しいけどムカつくワケよ、O.Aって。ライヴ時間も短いし朝も早ぇし。それで俺らは絶対にちゃんと呼んでもらおうと思って、呼ばれるようになりました。で、今日の出演オファーをもらった時、SATAN STAGEかEVIL STAGEかを言われる前に、Paleduskが初めてフェスのメインステージを踏むのはサタニックがいいと伝えたんです。それが何故かというと──日本には数々のデカいイベントがあって、レーベルがどうとかイベンターがどうとか、いろんなことが関係してると思う。だけどサタニックは、関係ねえから。いつも通りのライヴをしようと思ったけど、いつも通りじゃダメだと思う。ここにいる誰かにバンドを始めさせるようでなきゃダメだ。今、自分にとって大事な何かを繋いでいくことがライヴハウスの文化になって、そしてサタニックみたいなフェスになるから。そう思えるサタニックに出られて、誇りに思います! お前らをライヴハウスに引き込むためにやってんだよ、俺らもそう、このイベントもそう。俺が連れて行ってやるよ!」
そんな言葉から披露されたのは、「PALEHELL」。仲間を歌い、ユニティを描き、人と人の熱量が連鎖していくことで地獄を笑って走っていくための歌である。なぜライヴハウスや街で仲間と出会おうとするのか? それは、ひとりでは生きてはいけないからだ。そんな、この音・この場所の答えのような歌を放ちながら、KAITOは客席に突入して人と拳を交わす。DAIDAIのギターソロは泣くように歌っているし、KAITOのシャウトは暴発した嗚咽のようだが、そのメロディには光が射している。今日のためのアンセムと言っていいほどのスケール感とエモーションを残し、さらには「RUMBLE」を披露。ポストハードコアとパンクとメタルとエモとマーチングを一大絵巻にしたロックオペラで、曲の始まりからグングン遠くへと旅をしていく様は、まさにリアルもヴァーチャルも国境も年代も関係なく音楽の歴史を網羅できるようになった時代において超クリティカルな人間ドキュメントのようでもある。音楽を巨大なライフストリームそのものとして捉えて、その全部に線を引かない。だからこそ、初期から演奏され続けている「LIGHTS」では巨大なシンガロングが生まれたし、“ひとつになる”のではなく“一人ひとりになる”だけの最高のユニティがあった。ライヴハウス サタニックへようこそ。始まったよ!
取材・文◎矢島大地
撮影◎瀧本“JON”...行秀
■セットリスト
1. AREA PD
2. BLACK ICE
3. HAPPY TALK
4. SLAY!!
5. PALEHELL
6. RUMBLE
7. LIGHTS
8. NO!
■<SATANIC CARNIVAL 2024>
・物販 / FOOD AREA:start 9:30
・ライブ観覧エリア:open10:00 / start11:00 ※21:00終演予定
▼出演者 ※28組
04 Limited Sazabys
HIKAGE
10-FEET
HOTSQUALL
Age Factory
Ken Yokoyama
バックドロップシンデレラ
Maki
The BONEZ
NOISEMAKER
BRAHMAN
マキシマム ザ ホルモン
Dizzy Sunfist
OVER ARM THROW
dustbox
Paledusk
ENTH
ROTTENGRAFFTY
Fear, and Loathing in Las Vegas
サバシスター
FIGHT IT OUT
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
FOMARE
SHADOWS
ハルカミライ
四星球
HEY-SMITH
[OA]WHISPER OUT LOUD
▼チケット
・オフィシャルHP先行 ¥10,800
・各種プレイガイド先行 ¥11,000
・一般 ¥11,000
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