【ライブレポート】GLAY、現在・過去・未来を包括した“伝説の20万人ライブ”再現

ポスト

伝説の20万人動員ライブ<MAKUHARI MESSE 10TH ANNIVERSARY GLAY EXPO '99 SURVIVAL>を再現した<GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025>は、GLAYのホスピタリティを改めて、そして余すところなく見せつけられた一夜であった。

◆ライブ写真

“25年も前のセットリストを今さらやってどうする!?”と口さがない音楽マニアは言うかもしれない。しかし、四半世紀前のセットリストを6万人のファン(3万人×2日間)の前で再び披露出来ること自体、GLAYが30年間メジャーシーンのトップグループに居続けた何よりの証しである。

リーダーのTAKUROはM8「Yes, Summerdays」あとのMCで、「あの場所(=1999年7月31日、千葉・幕張メッセ駐車場)に居たのであれば、あの時のGLAYと比べていただいて、あの時に居なかったのであれば、それはそれでまた新鮮な想いで(観ていただきたい)。もし生まれていないのであれば(笑)、まったく新しいバンドとしてこの夜を楽しんでいただきたい」と語っていたが、何とも貫禄の溢れ出た言葉である。

30年間ずっとファンだった人たちと、30年前には未だ生まれていなかった人たちとが、25年前と同じ内容のライブコンサートを味わう。こんなことはなかなか出来るものではない。


伝説のライブの再現と言っても、そこから25年が経っているわけで、もちろん演奏は同じではない。GLAYはそのバンドアンサンブルを1999年7月からここまで、25年間をかけて熟成させてきた。伝説の1日を復刻するのではなく、当時のセットリストを元に再生産する。自ずとそういうニュアンスが強くなる。この日、演奏された楽曲は、1曲たりともアレンジを大幅に変えることなかったように思う。少なくとも、テンポを速めたり、あるいは緩めたり、ギターのストロークを変化させたり(例えば、レゲエ風のカッティングにするなど)といったことはまるでなかった。しかしながら、これまた貫禄と言うべきだろうか。すべての楽曲で聴き応えが増したことがありありと感じられるパフォーマンスが繰り広げられた。


オープニングナンバー、M1「HAPPY SWING」からして、さりげなく、それでいて確実に、25年間の足跡を伺わせるものであった。とりわけ間奏でのツインギターの絡みが明らかに滑らかなことがよく分かる。スリリングでありながらもしっかりとポップ。ギターバンド、GLAYの面目躍如たるサウンドがはっきりと確認出来た。

「今日は泣いても笑っても2日間のファイナル。力を持て余すことないように最後まで付いて来いよ!」と会場全体を煽ったあと、「俺はもう感動しているぜ」とTERU。20万人ライブのオープニングと同じ台詞だ。いい意味での余裕が感じられる。そこから一転、エッジーで疾走感のあるM2「口唇」もまたギターがいい。ソロは完全にブルース色が濃い。かと言って、泥臭くはない。TAKURO、HISASHIのカラーの違いが見事に溶け合っている。


また、M2ではベースの切れも目立った。2連のリズムでググっと進むAメロ。そこから開放感のあるBメロからサビへ繋がる推進力を途切れさせなかったのは、JIROの担うところが大きかったことは間違いない。かと思えば、冒頭をJIROがボーカルを務めることでもお馴染みのアップチューン、M4「SHUTTER SPEEDSのテーマ」では、当時以上に奔放なフレーズをかき鳴らす。中央ステージで演奏するメンバー4人が終始、笑顔だったことも印象的だったが、3万人の歓声に対する愉悦はもちろんのこと、縦横無人に音を操る楽しさと、それが重なり合った時の喜びが自然と頬を緩めさせているようにも感じられた。

この日のサプライズは何と言っても、アンコールで披露された最新曲、M19「whodunit -GLAY×JAY(ENHYPEN)-」であったことは間違いない。スクリーンにJAYの姿が映し出されると、会場からは歓声より先に「えっ!?」という驚きの声が漏れていた。ステージに登場しただけで独特のオーラを放つJAY。熱々に仕上がった3万のオーディエンスを前にしてもまったく物怖じした様子がない。流石に世界で活躍するグループの一員である。現在22歳、20万人ライブの時は生まれてなかったとのことで、続くM20「誘惑」を含めて、先に紹介したTAKUROのMCを具現化したかのような時間であった。すなわち、この2曲だけは、まったく新しいバンドによるパフォーマンスだったと言っていいかもしれない。


最新曲繋がりで言えば、「whodunit -GLAY×JAY(ENHYPEN)-」との両A面シングルとして5月29日にリリースされた「シェア」は、“所謂シティポップの要素を取り込んだ”とコンポーザー、TAKUROが語っていた。その辺りが関係しているのか、M9「summer FM」では、ギターのストロークとそれを支えるアンサンブルがかつてよりもさらにポップス寄りに感じられたことも記しておきたい。これもまたGLAYが30年間に育んできたもの、その一旦を垣間見ることが出来たように思う。


個人的に最も興味深く聴いたのはM14「LADY CLOSE」とM15「TWO BELL SILENCE」。共にGLAYがインディーズで発表したアルバム『灰とダイヤモンド』収録曲である。同作品は1994年5月リリース。30年前の楽曲で、20万人ライブの時ですら、初出から5年が経っていた。内容はと言えば、所謂ヴィジュアル系然としたナンバーと言ってよかろう。こう言っちゃ何だが、それこそ「whodunit -GLAY×JAY(ENHYPEN) / シェア」に至った今のGLAYなら、いくらでもリアレンジが効きそうだと思う。しかし、やはりと言うべきか、メンバーは極めて真っ当に演奏していた。強いて言えば、M15はリズムが若干突っ込み気味ではあったとは思うが、それにしても楽曲の勢いを重視したと考えれば、原曲を改編したとまでは行かないだろう。だが、それだからこそ良かった。その“真っ当”に心撃たれた。30年前のヴィジュアル系色のあるナンバーを堂々とやる。R&Bもシティポップも取り込んだ今となっても、最初期の楽曲をスポイルしない。その姿勢には、30周年アーティストの自信だけでなく、4半世紀に渡ってシーンをけん引してきたアーティストの責任を感じたところである。


1999年7月の20万人ライブを目撃した人も、残念ながら体験できなかった人も、さらにはそれを生で見ようにも未だ生まれていなかった人も、等しく楽しめるよう、セットリストは当然のことながら、その演奏においても、全世代のあらゆる“Buddy”(ここではGLAYファンを指す)に配慮したと思われる、このライブ。アンコールのMCで「私、さらにGLAYのファンになりました! すごくないですか、30年経って自分のバンドのファンになるって?」と語ったHISASHIが観客から大きな拍手と歓声を浴びた。GLAYは、“Buddy”のみならず、自らの楽曲群もメンバー自身も取り残さないのだ。TERUは「40周年もイケるね」と言った。何も10年先への綿密な計画があってそう言ったわけでなないだろう。この日のベルーナドームを包み込んだ空気が自然と口にさせたのだと思われる。メンバーと言わず観客と言わず、会場全体から沸き上がってくるかのような多幸感。GLAYのライブを観る度にしばしば感じてきたことだが、この日は圧倒的にそのハピネスがあった。GLAYの30周年イヤーは最高のスタートを切った。

取材・文◎帆苅智之
写真◎岡田裕介、田辺佳子

セットリスト

01.HAPPY SWING
02.口唇
03.グロリアス
04.SHUTTER SPEEDSのテーマ
05.More than Love
06.サバイバル
07.生きてく強さ
08.Yes, Summerdays
09.summer FM
10.INNOCENCE
11.Freeze My Love
12.HOWEVER
13.ここではない、どこかへ
14.LADY CLOSE
15.TWO BELL SILENCE
16.MISERY
17.COME ON!!
18.ACID HEAD

-ENCORE-

19.whodunit -GLAY×JAY(ENHYPEN)-
20.誘惑
21.I'm yours
22.BE WITH YOU
23.I'm in Love
24.彼女の"Modern…"
25.ビリビリクラッシュメン
26.BURST~RAIN~BURST

<30th Anniversary GLAY EXPO YEAR>

【7月】
・7月31日 (GLAYの日)
LINE VOOMにて「GLAY DAY SPECIAL "LIVE BY THE SEA"」を配信。同日「グレンダイザーU」オープニングテーマ『会心ノ一撃』リリース
【8月】
・8月17日
「SUMMER SONIC 2024」TOKYO MOUNTAIN STAGE出演
さらに海外フェスにも出演決定。coming soon…
【9月】
・「GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025」in BELLUNA DOME LIVE DVD&Blu-rayリリース決定
【10月】
・GLAY 17th Album 「Back To The Pops」リリース決定
・10月26日
<[Alexandros] presents THIS FES ’24 in Sagamihara>に参加
【11月~1月】
・8ヶ所15公演のアリーナツアー開催決定
GLAY 30th Anniversary ARENA TOUR 2024-2025 “Back To The Pops” Presented by GLAY EXPO
11/8(金)・11/9(土) 大阪城ホール
11/16(土) 長野ビッグハット
11/23(土祝)・11/24(日) 北海道・北海きたえーる
12/7(土)・12/8(日) 東京・有明アリーナ
12/14(土)・12/15(日) 愛知・Aichi Sky Expo ホールA
12/21(土)・12/22(日) 広島サンプラザホール 
2025年
1/3(金)・1/4(土) マリンメッセ福岡 A館
1/18(土)・1/19(日) 神奈川・横浜アリーナ
【2月】
25年の時を経て…詳細は震えて待て

この記事をポスト

この記事の関連情報