【インタビュー】AKi、4年ぶり3rdアルバムにありのままの姿「シドの物語のスピンオフであり俺のストーリー」
シドの明希(B)によるソロプロジェクトAKiが、約4年ぶり3枚目のフルアルバム『Free to Fly』を6月5日にリリースした。原点にある骨太でダイナミックなハードロックを軸としながら、エレクトロ、パンク、ポップと多彩なジャンルを取り込んでまとめ上げる鮮やかなソングライティング手腕を発揮した作品の完成だ。
◆AKi 動画 / 画像
アルバム『Free to Fly』の歌詞の言葉選びは驚くほどに自由で、例えば、世を騒がせた“ギターソロ飛ばし”の風潮をモチーフとしたユーモラスな社会風刺から、“シドの明希”としての葛藤の歴史に至るまで、様々なテーマと向き合い、伸びやかな筆運びで綴っている。各曲に込めた想い、この自由なアルバムに辿り着いたビハインドストーリーを、じっくりと語ってもらった。
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■自分が見た夢の中にファンが居てくれる
■その奇跡がまだ続いているのもすごい
──約4年ぶりのフルアルバム、完成した手応えはいかがですか?
AKi:ソロを始めた時に、まず“自分はどんなものをやりたいんだろう?”ということを確認するイメージで、どんどん扉を開けていったのが1stアルバム(『ARISE』/2015年)で。自分はハードロックの様式美に憧れていたので、思い切りそこを体現したのがコロナ禍の時期に出した2ndアルバム(『Collapsed Land』/2020年)だったとすると、3枚目の今作『Free to Fly』はもっと素の自分というか、今の自分のテンションに近いものができたかなと。ある程度長く、ソロ活動を10年近く続けてきて、とらわれるものもどんどんなくなってきた。
──まさしく“Free”な状態になってきた、と。
AKi:例えば、歌詞も昔は“この言葉を使ったら悪いんじゃないかな?”とか実は思っていたんですけど、今は迷いがなくなって。自分の中から出てきた言葉で、自分のものとしてしっかりと歌って伝えていきたいと思ったんだったら、それを書こうと。だから、いい意味で成長…とは自分で言いたくないんですけど、作家らしく、昔よりは作品のつくり手らしくなれたのかな?というのはあります。
──アルバム制作に向けて始動したのはいつ頃だったのですか?
AKi:構想自体は去年ですかね。今年1月に「Salvation」を配信リリースして、その前に「OVERRUN」(2022年6月)という曲をリリースしたんですけど、この2曲を中心に“またアルバムを構成したいな”と思ったんです。で、いろいろな曲を書いている中で、今回の表題曲ができてきたという流れです。
──表題曲の「Free to Fly」は、エレクトロでエフェクティヴな冒頭が面白いですね。
AKi:いろいろな人の声が聴こえるようなイメージで、声も思い切り加工しています。僕は曲先でつくるんですけど、サビのメロディーはいつもの感じで出てきて、“リフもちょっと面白くしたいな”と思ったり。基本的にハードロックサウンドなんですけど、例えば、それとデジタルなものをミックスしたり、パンクをミックスしたりとかいう楽曲もある中で、今回はちょっとオリエンタルな感じにしたいなって。聴いて一発で引き込めるようなリフが欲しいなと思ってつくって、音で遊ぶようなイメージでしたね。その辺から構築していって、メロディーは何度も変えたんですけど。
──サウンドだけでなく、社会風刺的な歌詞に目を惹かれます。
AKi:生意気にもそんな感じになっていますね。楽曲ができてから“歌詞をどうしようかな?”と考えていたら、ネットニュースか何かで、最近の若い人たちはギターソロを飛ばして聴いちゃうとか、イントロを飛ばして3秒ぐらいしか聴かなかったりする、という記事を見て、“今ってそんななんだ!?”とびっくりしたのと、ちょっと悲しい気持ちになったのと。それがきっかけでこういう歌詞になりました。
──バンド文化を愛する人間にとっては、ショッキングなニュースでしたよね。
AKi:我々の表現したいものって、イントロとか間奏とかギターソロとか、ベースで言えばアウトロの終わり方のニュアンスであって。そこにこそ楽しいものとか、ときめくものが散りばめられているのにって思いますよね。ケーキを食べる時にイチゴだけしか食べないみたいなことで。知った気になったようなカルチャーの触れ方って、すごくもったいない気がするんです。でも、そういう人たちに対して「ダメだ」と言うんじゃなくて、「こっちに来たらもっと面白いのに。もったいないね」って。否定や嘲笑ではなく、目を閉じて触るだけじゃなくて、目も開けて触った先に何かないかと確かめる、そういう気持ちを忘れないでほしいなという想いで書きましたね。
──「Salvation」のアウトロ約50秒間のセッションは圧巻でした。これがカッコいいんだ!と断言するように、堂々と振り切っていて。
AKi:“「ギターソロを聴かない」と言うなら、俺の曲ではギターソロを2回ぐらい弾き倒してやろう”くらいに思っていました(笑)。面白い曲にしたかったし、ライブハウスらしい盛り上がりをつくりたい、という想いからできた曲だったりもします。バンドをやってる人にはこの曲をぜひコピーしてほしいです。僕が思うに、名曲ってシンプルでカッコいいんですよ。例えばTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」もそうだし、LUNA SEAの「TONIGHT」とかもそう。ギターとかベースフレーズとかも全部シンプルでいい曲で、めちゃくちゃ盛り上がるので。僕もそういう発想から曲をつくってみたいなと思っていました。
──その他の曲たちは、どのような順番で生まれたのですか?
AKi:完璧には覚えていないんですけど、「Devotion」は最後でした。あと、シドの「smile」(2007年)ぐらいの頃からあった原曲を持ってきてみたのが、「The Same Dream」です。コードとギターリフとメロディーは残ったんですけど、テンポもリズムも違いますし、全然違うものになりました。
──青春感のある熱い曲で、“♪向かい合わせで 歌っていた”という、ライブの情景が浮かぶ歌詞にはドラマを感じます。どのようなイメージで書かれたのでしょう?
AKi:僕、今年43歳になったんですけど、いよいよ“あと何回ライブができるのかな?”とか…終わりを仄めかす意味ではないですけど、“いつまでバンドをやれるのかな”みたいなことを考える入り口に立ったのかなと思っていて。だから、ライブ1本1本を噛み締めたり、今までやってきたことの重さとか想いもすごく気になってきたりして。それを歌詞にしました。ずっとバンドを続けてきて、途中で辞めてしまった奴や、解散したバンドを幾つも見てきたし…そういう中でシドはまだ活動できていて、21年続けていますし、僕のソロもそろそろ10年近くになるので。
──青春を懐かしむ曲ではなく、これからの1本1本を悔いなく刻んでいこう、という決意の曲なんですね。
AKi:そうですね。出会ったファンの人たちが、自分が見た夢の中に居てくれているわけで。“バンドをやりたい” “有名になりたい” “ライブをやりたい”という夢を抱いて始めて、まだその奇跡が続いているのもすごいなと。そんなことを思いながら書きました。
──「Bluffing」も、ギターリフからのベースソロ、そしてギターソロへと畳み掛ける展開が痛快です。
AKi:結構前から原曲はあったんですよ。リフもので、ちょっとアダルトな雰囲気な曲もあってもいいな、と思ってつくった曲です。
──この曲の冒頭は、地下のクラブで、扉の向こうから音が聴こえてくる情景が目に浮かぶようなサウンドだなと感じました。
AKi:その通りです。ライブが始まって扉を開けて、バーン!と見えてくるような状況ですね。
──そういったアレンジやサウンドの構築は、AKiさんが全部ディレクションされているんですか?
AKi:そうですね。基本的にサポートギターの加藤(貴之/Guitarist, Composer, Arranger)くんが、僕の思ったことを具現化してくれます。二人でアレンジを詰めていって、例えばDAWなどの実作業をするのは加藤くんなんですが、僕は後ろで「こういうフレーズがいい」「こういうコードで」とか、やり取りしながらつくっています。ミックスもマスタリングも二人でやっていて。今回のマスタリング作業なんて、三回ぐらいやり直しました(笑)。
──そういった細かく突き詰める作業は、AKiさんにとって喜びなのでしょうか?
AKi:喜びですね。なんか発明しているみたいな感覚です。
──スタジオが実験室みたいな感じなのですか?
AKi:そうそう、そんな感じです。
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