【インタビュー】林部智史、カバーアルバム『カタリベ2』リリース「自分の軸がしっかりした今なら大丈夫だと思えた」

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林部智史が、6年ぶりとなるカバーアルバム『カタリベ2』を6月5日にリリースした。

◆撮り下ろし写真

8年前のデビュー時から現在に至るまで、ライブでは毎回カバーソングを多数披露してきた林部。2018年にリリースされた『カタリベ1』から、満を持して発表される『カタリベ2』にも、ファンから大きな期待が寄せられていた。

今回BARKSでは、林部に初のインタビューを実施。林部がアマチュア時代から聴き、歌い、影響を受けてきたという本作収録の楽曲についてや、歌うことについての想いを語ってもらった。

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◼︎聴いてくださる方に優しい楽曲を

──6年ぶりのJ-POPのカバーアルバム『カタリベ2』発売おめでとうございます。

林部智史:ありがとうございます。そもそも、デビューのきっかけはカラオケバトルの番組ですし、コンサートでは毎回カバーを歌わせていただくので、僕にとってカバー曲はとても大切なものなんです。6年前にカバーアルバムを制作することになったときは、シリーズとして続くように願いを込めて『カタリベ1』とあえてナンバリングしました。それもあって、ファンの方々から「カタリベ2はいつですか」とか、「そろそろ2を聴きたいです」といったお声をいただくようになって。ただ、デビューしてしばらくはオリジナルで実力を磨きたいと思っていたので、カバー曲とは少し距離を置こうと思っていたんです。そうした僕の意思を尊重してくれたレーベルの理解はありがたいですし、待っていてくださった皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

──今回は、1990~2000年代を中心としたヒット曲が収録されています。選曲にはどのような意図があるのですか?

林部智史:今回は、僕が生まれた1988年以降の楽曲を選ばせていただきました。女性アーティストの楽曲に絞るつもりはなかったのですが、結果的にそうなりました。僕がコンサートでカバーするのも、オリジナルが女性の方の曲が多いんです。女性の曲を歌うときは、キーを変える必要があるため、オリジナルといい意味で線引きができるんですよね。だから、自分の色を乗せやすいと感じます。

──女性アーティストの楽曲は、透明感があり柔らかさを携えた林部さんの歌声の個性が活きると考えたのですね。

林部智史:『カタリベ2』の1曲目は今井美樹さんの「PIECE OF MY WISH」ですが、僕がデビュー前にカラオケバトルの番組に出演したときに、この曲を歌唱したのがきっかけでデビュー曲「あいたい」を歌うことができたんです。「あいたい」ははじめ、女性シンガーが歌うのを想定して作られていたのですが、僕の歌を聴いて曲調に合うのではないかということで。まだ歌詞もできてないときだったのですが、僕の声は女性の歌う曲と相性がいいと。この曲がきっかけで、「あいたい」と出会うことができたんです。


──『カタリベ2』は、単にヒットした曲ではなく、林部さんの思い出や思い入れが詰まっていると。

林部智史:はい、学生時代に歌っていた曲も多いです。広瀬香美さんの「promise」は、フラメンコギターが使われていたりリズムも独特で、異国情緒を感じさせてくれますよね。今回のアルバムには、そうしたかっこいい曲や、DREAMS COME TRUEさんの「サンキュ.」のようなかわいらしい曲など、いくつか僕のお気に入りのアップテンポ曲も入れたいと思いました。しっとりした“泣き歌”が僕の特徴だと言っていただくことも多いですが、アルバム全部がしっとりした曲ばかりだと重たくなりすぎたり、メリハリが無くなってしまいますから。コンサートでも、アップテンポの曲がいいアクセントになって全体の構成がうまくハマることも少なくないんですよ。

──「promise」は、広瀬さんの強い声や広い音域を活かした、テクニックも必要な難曲というイメージがあります。実際にレコーディングしてみて、いかがでしたか?

林部智史:「promise」は、もともと好きな曲で、J-POPにスパニッシュなムードを取り入れた、時代を先取りした楽曲だなと思っているんです。ただ、元歌のインパクトが強いため、いろんな方がカバーを歌う今の時代になってもあまり歌われていませんよね。もちろん、歌いこなすのは簡単ではありませんが、僕にとっては「こんなかっこいい曲をオリジナルでも歌いたい」「この曲みたいに、コンサートで景色が変わるような歌を歌いたい」と、イマジネーションの源になってきた曲でもあります。挑戦しがいがあると思いましたし、ワクワクしながらレコーディングできましたね。

──アレンジに関しては、どのように取り組まれていますか?

林部智史:カバー曲に関しては、やはりオリジナルへのリスペクトをすごく大事にしています。ただ、AIさんの「ハピネス」に関しては少し僕の思いというか、自由度も入れさせていただきました。僕は幼いころからいろんな音楽を聴いてきた雑食性ですが、なかでもCHEMISTRYさんやEXILEさんのような、R&B色が強くてハーモニーが特徴の音楽に憧れていました。そういう僕のルーツに近いニュアンスが「ハピネス」のオリジナルにはあるのですが、逆に僕の曲を普段聴いてくださる方々とはやや距離があったりします。なので、聴いてくださる方に優しい楽曲を……と考えた結果、オリジナルとは異なるアレンジに着地しました。

──聴き手に優しいアレンジを創るとは?

林部智史:僕はいま36歳ですが、コンサートに足を運んでくださるのは、20代から70代の方までいらっしゃいます。幅広い世代の方が僕の歌を聴きてくださるので、世代を問わず親しんでいただけるアレンジを常に意識しているんです。一定のジャンルに寄せ過ぎてしまうと、そこになじめない方も出てきてしまうのかなと思うので、間口の広い親しみやすさを大切にしているんです。……僕がそんなふうに考えるのはきっと、100回以上もオーディションに落ち続けてきたからでしょうね。いくらR&Bが大好きでも、そうした楽曲に似合う声かどうかは別問題なんです。ですから、カバーでは原曲の魅力を大切にしながら、自分の声が活かせるようなオーガニックなサウンドに仕上げることが多いです。6年前には、アレンジの知識が乏しかったためお任せすることも多かったのですが、今回はイントロの音1つからこだわって音を選び抜きました。もちろん、歌唱に関しては自分が歌いたいように歌わせていただいたので、そうしたサウンド面や歌唱法にも注目して聴いていただきたいですね。

◆インタビュー(2)へ
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