【インタビュー:前編】キズ、来夢が感じるライブの“匂い”の正体「迷わなくなった」

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◼︎「続けるかっこよさ」がわかったから、タバコも酒もやめた

──これまでのインタビューは来夢さんがテーマの話をしているから当たり前ですけど、来夢さんが主語になることがほとんどでしたよね。でも今日は登場人物が多く感じます。きょうのすけさんもそうですし、先輩や後輩の話が最初から出てきています。

来夢:確かに確かに! なんかそれ、気持ち悪いですね。最近なんですけど、この1ヶ月誰のために頑張ってるかと考えると、自分じゃない。人のために頑張っている気がする……なんだこれ。

──《誰かの為に生きるなんて簡単だから》と7thシングル「ヒューマンエラー」で歌っていた来夢さんにとって、大きな変化ですか?

来夢:そうなんですよ。最近は自分のためだけには生きてないかもしれない。その実感はあります。でも、無理にしようと思ったわけじゃないです。自然に変化してますね。



──どうして自分以外のひとのためにも頑張れるようになったんですかね?

来夢:僕が一番わかってないかもしれない。だって、いま言われて気づきましたから。余裕ができたからかな。いまは「ソールドアウトさせないと」とか余計な心配もプレッシャーもありません。だってできるし。キャパが1000だろうが2000だろうが、上がってもできるんです。迷わなくなったな。

──いつからその「迷いがない」状態になりましたか?

来夢:きっかけは2022年の<V系って知ってる?」です。憧れのバンドであるMUCCとの初対バンを武道館でやる。やばくないですか? タイムテーブルがMUCCの後にキズってなっていて「やべー、殺される」ってなって、迷いはじめました。「どうやったら勝てるんだろう」とかいろんな余計な事を考えて悩んだんだけど、そのライブがあり得ないくらいうまくいきました。「自分がやっていることは正しいのかもしれない」と確認がとれたというのかな。

──”匂い”はしましたか?

来夢:ずっとしていました。あんまり言いたくなかったですけど、ずっと鳥肌が立っていました。もうパニックですよ。セットリストも何もかも真っ白になるくらい。ライブやってる感覚もありませんでした。でも、1秒が1秒が洗練されていました。あの日はあり得ないプレッシャーだったな。「hide Respect Session」でPATAさん(X JAPAN)とミヤさん(MUCC)と明希さん(シド)がいるし。自分の声の出し方も一瞬わからなくなるんですよ。ボーカリストはよくあるらしくて、本当に声が出なくなる人もいるらしいです。

──いわば“ステージの魔物”がやってきた、と。でも来夢さんはうまくいったんですね?

来夢:身体に染み付いていたんでしょうね。染み付いていたことをそのままやっただけなので、等身大になれたんだと思います。

──フロー状態に入ったのかもですね。例えばサッカー選手とか、大声援の中でも自分の周りだけ静かになって、周りの選手の動きもゆっくりに見えて、自分が打つべきシュートの道がくっきり見える、みたいな。

来夢:へぇ〜! おもしろいですね。フロー状態に近いのかもしれない。武道館の日は全編で鳥肌が立っていたから、あれが技術で毎回出せたらすごいですよね。

──フローは自分で作れるみたいなんですよ。試合の日は必ず左の足の靴紐から結ぶとか、120%を出すためのスイッチになる行動を毎回している、といった話もあるんです。

来夢:いつもやることか。確かに、後から振り返っても良いと思えるライブができるときって、ライブ前に楽屋で格闘技を見ていたりするんですよ。年末の特番とか見ると燃えてきます。武道館は格闘家としても来ていたこともあるので、武道館の匂いを嗅ぐと闘争心が出てくるですよ。

──匂いは記憶に直結している感覚みたいですね。「なんだかおばあちゃんの家を思い出すな」みたいな。

来夢:やっぱそうなんですね。僕は春の匂いを嗅ぐと懐かしい気持ちになるし。あれなんなんだろう。不思議ですね。

──いまも格闘技のトレーニングはしますか?

来夢:最近はやれてないなぁ〜。バンドマンの友人よりも格闘家の友人と遊んでる方が多いかもな。生活リズムが変わったんですよ。昼型になりました。朝の7時には起きて、8時には曲をつくったりしてるんですよ。11時半にはもう飯食ってて、12時半にはまた曲つくりはじめていて、17時には終わるみたいな生活です。夜遊びに来る友人は減りましたね。

──ミュージシャンは夜のイメージを持っていました。

来夢:そうなんです。でも僕は23時とか24時には寝ちゃいます。健康なんですよ。タバコも酒もやめちゃったし。

──だ、大丈夫ですか?

来夢:オレはどんなイメージよ(笑)。自分に必要のないものはもう省きました。「早寝早起きの生活を20代前半からやってたらもっと人生変わってたんだろうな」って思いますね。おっさんになっちゃったな(笑)。あの頃は17時とかに起きて、みんなに朝を託して寝る、みたいな生活です。そうなると酒も飲むし、飲むような人間といるとダメなんですよ! 酒って飲んだらすぐ終わるわけでもないじゃないですか。酔っ払って仕事もできないし、次の日にも響くし。

──いまは音楽に集中できそうです。

来夢:ほんとそう。音楽しかしてないです。でもロックしている感覚はとても強いです。酒を飲むことがロックだとは思わない。タバコを吸うことも、不健康であることがロックとも思わない。冷静に考えて、朝7時からつくる奴の曲はすごいですよ。

──タバコやめたのはいつからですか?

来夢:話が前後しちゃうんですけど、きっかけは<Vocal Summit>なんですよ。「一撃」が<Vocal Summit>のボスの目に止まってオファーしてもらって。中島卓偉さん、田澤孝介さん(Rayflower)、椎名慶治さん(SURFACE)、牧田拓磨(wyse)さんはいるし、RYOさん(KING)さん、逹瑯さん(MUCC)、DAISHIさん(Psycho le Cému)って、すごい人しかいないわけですよ。第一回の頃は「一撃」もやって、歌が上手いつもりでいたんです。心折られましたね。本当に歌の上手い先輩たちが近くで歌っている様子を見て、「自分は歌がうまいんじゃなくて、声が高いだけなんだ」って気づいちゃって。恥ずかしくなりましたね。そこから歌を真面目にするようになっちゃいました。


──以前は「練習はしない」と話してましたね。

来夢:いまはします。吸入器とか「気持ちの問題だ」くらいに思ってたけど、いまはめっちゃ使います! ちゃんとやっているひとがさらにちゃんとやってると、マジでかっこいいんですよ。<Vocal Summit>の一年目は吸い続けてたんですけど、二年目も呼んでもらって、「一番下手くそなくせに喫煙所でタバコ吸っている自分はダサい」って気づきました。

──禁煙するのも大変ですよね?

来夢:<Vocal Summit>のボスと沖縄に一緒に行く機会があったんですけど、そこでボスに「この沖縄でタバコやめますわ」って宣言しました。そうするとやめるしかないじゃないですか。やめて半年以上経ちますね。そのおかげで、肺はひとつ増えたくらいの感覚です。声もめちゃくちゃ出るようになりました。ファンのみんなは気づいてると思うんですけど、僕は自分でつくったのに「地獄」のサビをつるっと歌えたことはなかったです。どう考えてもブレスが必要で、人間的に無理なんです。でもタバコやめたら歌えるようになっちゃって。全ボーカリストはタバコやめた方がいいですよ(笑)。

──タバコって影響力が強いんですね。

来夢:損してたな、もっと早く辞めればよかったなと思います。きょのすも後輩もやめはじめました。たくさんのひとの肺を守っています(笑)。

──お医者さんのような来夢さんが出てきました(笑)。

来夢:田澤さんにも言われたんですよ。「めちゃくちゃいいもの持ってるから、タバコやめたらもっとおそろしいことになるよ」って。田澤さんの脅威になりたいと思って。田澤さんは師匠と呼んでいます。歌はだいぶ変わりましたね。表現の仕方というか、ライブ一本一本、一曲一曲にしても、セットリストひとつとってみても、丁寧に考えるようになったな。器用になっちゃったかもな。



──これまでは「倒れたらそれまでだ」といった印象でした。

来夢:そうだった(笑)。でもいまは僕が倒れたら困る人が増えたんですよ。バイクも全部後輩にあげました。昔は「いつバンドを辞めてもいい」ってずっと言ってましたけど、いまは続けたいんですよね。できるならですよ。「続けるかっこよさ」が見えてきたんです。


◆   ◆   ◆

武道館のあの日から変わり続ける来夢は、半生を共にしていた酒もタバコも手放した。代わりに得たものは大きいようだ。ライブの“匂い”もその一つである。

後編は来夢が「見えてきた」と話す「続けるかっこよさ」を深掘りする。キズの魅力の一つであった、花火のように一瞬咲いて散る「瞬間の美学」は捨ててしまったのだろうか?「音楽は手段」に込めた真意は何なのだろうか?

後編は、変わり続ける来夢の変わらない“芯”が明らかになる。

取材・文◎神谷敦彦
編集◎服部容子(BARKS)

15th SINGLE「鬼」


2024年5月13日 RELEASE
1. 鬼
発売元:DAMAGE

配信開始日
2024年5月13日(月)0時より
※各サービスの開始時間に誤差が出る場合があります。

<キズ 単独公演「星を踠く天邪鬼」>

2024年6月1日(土) 国立代々木競技場第二体育館
[開場 / 開演]16:00 / 17:00

【チケット料金】
アリーナVIP席:¥12,000  SOLD OUT
[アリーナセンターブロック席+VIP限定グッズ+先行物販優先レーン]
アリーナ席:¥6,000  SOLD OUT
[アリーナ上手側か下手側ブロック席のいずれかになります]
スタンドVIP席:¥10,000  SOLD OUT
[スタンド前方席3列エリア+VIP限定グッズ+先行物販優先レーン]
スタンド席:¥2,800 残少

【チケット発売中】
・TicketTown
・イープラス
・ローソンチケット
・チケットぴあ
info. NEXTROAD 03-5114-7444(Weekdays 14:00~18:00)

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