【ライブレポート】The BONEZ、10年がかりで体現してみせた<SUNTOWN>という名の理想郷「ひとつのバンドが夢叶える瞬間」
結成10周年を迎えたThe BONEZが4月6日、千葉・幕張メッセ イベントホールにて<The BONEZ 10th Anniversary Tour 47 AREAS Grand Finale “SUNTOWN”>を開催した。47都道府県50公演ツアー<Tour “47 AREAS”>のグランドフィナーレとして行われた自身最大規模単独アリーナ公演のレポートをお届けしたい。
◆The BONEZ 画像
“ピンチをチャンスに変える”とか“ネガティヴをポジティヴに転換する”といった言葉は、長きにわたりごく日常的に用いられてきたし、窮地に追いやられた時に自分自身にそう呼びかけたりすることは誰にでもあるはずだ。とはいえそれは“言うは易く、行なうは難し”という諺が示すように、なかなか容易なことではない。そして、だからこそそれが実践されている光景を目の当たりにした時に、人は感動をおぼえることになるのだと思う。
2024年4月6日、それはかつてマイナス地点からスタートしたThe BONEZが、紆余曲折を経ながら築き上げてきたものを糧としながら、現時点での理想を体現する機会となった。バンドは2023年、始動から満10年という大きな節目を迎えているが、その記念すべき年に彼らがスタートさせたのは、全都道府県のライヴハウスを巡演する<47 AREAS>と銘打たれたツアーだった。2023年5月から2024年1月まで継続された同ツアーは、当然ながらThe BONEZ史上最長となるもの。しかもその狭間にあたる2023年8月から9月にかけては、東名阪でのホール公演も実施している。いわゆるアニヴァーサリーイヤーに派手な展開を仕掛けるのではなく、彼らはまさしくライヴ会場を主戦場とするロックバンドとしての気概を見せつけるかのような活動展開をみせてきた。
そしてこの4月6日、4人は幕張メッセイベントホールの舞台に立った。言うまでもなくThe BONEZの単独公演としては過去最大規模ということになるし、これが10周年に伴う一連の流れを締め括るライヴになることは疑いようもない。実際、その場で披露されたライヴパフォーマンス自体、バンドの今現在の充実した状態がうかがえる素晴らしいものだったが、それ以上に重要なのは、彼らがこの節目において自らの理想体現に成功したことだろう。
<SUNTOWN>と銘打たれた今回の公演は、単なるライヴともフェスとも異なった趣のものだった。それを最初に感じさせられたのは、会場へと向かう道すがら、カラフルなフラッグがたくさん並んでいるのを目にした時だった。そこにはThe BONEZのロゴと共に“WELCOME TO SUNTOWN”という文字が躍っていて、人々を誘導していく。「SUNTOWN」は言うまでもなく彼らの楽曲のタイトルだが、この日ばかりはこのバンドと彼らに共鳴する人たちにとっての約束の場所、理想郷の名前だったのである。
アーティスト自身の主宰によるフェス開催も目につく昨今ではあるが、<SUNTOWN>はそれとも趣を異にするものだ。なにしろ出演者はThe BONEZのみ。そして大規模会場ならではの広い空間を利用して、館内には通常の物販エリアばかりではなく、バンドと所縁のあるさまざまなブランドやショップのブースが設けられていた。そのひとつが一般社団法人SNOWBANKによる献血ブースで、その場で骨髄ドナー登録が行なわれていたことにも注目したい。こうした試みは決して唐突なものではなく、彼ら自身がごく身近なところにそれを必要とする人がいることを実感してきたからこそ実践されたことであるに違いない。たとえば彼らは以前からライヴ会場内にファミリー席エリアを設けてきたが、そうした取り組みも、彼ら自身が父親目線を持ちながらファンのニーズを把握し、ライヴは危ないから観に行けないという子供たち、子供連れだからライヴには行けないという親たちにも諦めて欲しくないという想いを抱いているからこそのもの。こんな事実ひとつにも、彼らの寛容さと包容力を感じずにはいられない。
筆者がこの<SUNTOWN>をThe BONEZにとっての理想体現の場と捉えた最大の理由は、この催しの端々に、そうしたバンド側の意志を感じさせられたからに他ならない。もちろんそこに音楽的・精神的に共鳴するさまざまなバンドを呼び寄せてフェス的な展開をすることも可能だったはずだが、彼らはむしろ自分たちを取り巻く文化や彼ら自身の考え方を提示することで、自らの歴史の節目となるこの局面において、改めてThe BONEZがいかなるバンドであるかを示すことを選んだのだと思う。そして同時に痛感させられたのは、それを可能にしたのが音楽の力、The BONEZとBONERと呼ばれるコアファンを繋ぐ信頼関係の強さだったということ。それは、2時間40分以上にわたって繰り広げられたライヴにより実証されていた。
実際、彼らのこの夜の演奏内容自体が特殊なものだったわけではない。アンコールを含めて全23曲という演奏曲数は、通常のワンマン公演の際と比べても極端に多いわけではないし、めずらしい要素があったとすれば、ライヴが中盤に差し掛かる頃にメドレー形式での演奏が組み込まれていたことくらいのものだった。ただ、確かにこの公演はアニヴァーサリーイヤーに伴う流れを締め括るものではあれ、彼らの歴史を総括するためのものではない。ここで彼らが提示してみせたのは、これまでのヒストリーではなく、山あり谷ありの10年間と、長い時間を費やしながらの全都道府県ツアーを経てきたうえで到達した現在だからこその、過去最強の姿だったのだ。
だからこそ聴き慣れた楽曲たちにも従来以上の説得力が感じられた。これまでライヴハウスでは各曲の等身大の姿と向き合ってきたわけだが、それらがアリーナ規模の会場にも似つかわしいスケール感を持ち合わせていることも伝わってきた。そして結局のところ、The BONEZの最大の武器は、4人のメンバーの人間力なのだと改めて実感させられた。確かにステージ背景に設えられた大型LEDスクリーンをはじめ、大規模会場に似つかわしいステージセットも組まれてはいたが、それはあくまでステージと客席との距離感を解消するためのものに過ぎず、過度な演出要素は皆無だったし、メンバーたちの呼吸が聞こえてくるかのようなリアルさはまったく損なわれていなかった。
各楽曲はもちろんのこと、メンバーたちがステージ上から発した言葉の数々にも印象深いものがあったが、なかでも序盤の3曲を演奏し終えた直後にJESSEが発した「俺らがこの日をどんだけ待ったことか。ひとつのバンドが夢叶える瞬間、是非観てってください!」という言葉は象徴的だったといえる。その数曲後、彼はオーディエンスに「ようこそ、SUNTOWNの住人の皆さん。誰も置いてかないから、最後まで楽しんでってください」と呼びかけ、The BONEZがひとりの人間の死を起点としながらスタートしたバンドであること、決して楽しい始まり方ではなかったことを認め、99%絶望で塗り潰された中でかすかな希望を見つけることができたからこそここまで来ることができた、と告げた。
Pay money To my PainのヴォーカリストであるKが他界したのは2012年12月30日、その事実が公表されたのは翌年1月10日のことだった。そしてThe BONEZの原型にあたるJESSE AND THE BONEZが初めてのワンマンライヴを下北沢シェルターで実施したのが、その翌日、2013年1月11日のことだった。それから11年3ヵ月という年月をかけて幕張の大舞台に辿り着いた彼らが証明してみせたのは、1%未満の希望にも信じるべき価値があるということだったのではないだろうか。もちろんそれを信じてマイナスをプラスへと転換し、理想を追いかけ続けていくことは、まさしく“言うは易く、行なうは難し”である。希望を信じて続けさえすればすべてが叶うというわけではないし、彼らがこれまで歩んできた道程の険しさを思わずにはいられなくなる。ただ、こうしてThe BONEZの歩みがこの地点に到達し得たのは、詰まるところ彼らの発する音楽と言葉に宿るものが人々を引き寄せてきたからこそ、このディケイドを通じて彼ら自身が大きく人間的成長を遂げてきたからこそであるはずだ。
ライヴ本編終了後には、映像を用いながら、いかにも重大発表がありそうな空気を漂わせながら「特にありません(笑)」という言葉ひとつで大観衆を沸かせ、なごませてみせた彼ら。実際、こうした大規模公演には次なる展開に向けての公約めいたものが提示されるのが常ではあるが、この場で今後の動きについての具体的な告知がなされることはなかった。ただ、T$UYO$HIが口にした「10,000人で1回よりも1,000人で10回やるほうが、10回会えていい」、「今年もちょっとパンチのきいたことをやろうと企んでるんで」といった言葉だけで、BONERたちは納得できていたはずだし、彼らの口から「これが見せたかった景色です」、「ホントに俺の人生変えてくれてありがとう」、さらには「俺らに夢を与えてくれてありがとう」という言葉まで引き出したのは、まさしくBONERたち自身だったように思う。
最後の最後、すべての演奏を終えた4人は、ステージ中央で肩を組み、オーディエンスに向けて深々とお辞儀をしてみせた。これまで何度となく目にしてきた光景であるにもかかわらず、何故か涙が溢れ出てきた。そして記念すべき日を過ぎた後も、The BONEZは当たり前のようにステージに立ち、一歩ずつ理想を更新し続けているはずである。
取材・文◎増田勇一
撮影◎Yoshifumi Shimizu / Taka “nekoze photo”
■<The BONEZ 10th Anniversary Tour 47 AREAS Grand Finale “SUNTOWN”>2024年4月6日(土)@千葉・幕張メッセ イベントホール SETLIST
02. You and I
03. GIMCRACK
04. Numb
05. Louder
06. Adam & Eve
07. The BONEZ “songs medley” (Rude Boy〜Moves〜Breath〜Revolution〜Rude Boy〜Ending)
08. Sun forever
09. Remember
10. Friends
11. For you
12. LIFE
13. We are The BONEZ
14. Love song Intro-long ver.
15. Rusted Car
16. New Original
17. Leaf
18. Place of Fire
19. Thread & Needle
20. SUNTOWN
encore
en1. That Song
en2. Zenith
en3. Hey, You
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