【ライブレポート】TOMOOが描く色彩

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「今日は虹色という言葉をいっぱい口にしている気がするんですけど、始まる前、メンバーにも“光は分けると虹色なんですけど、みなさんは虹なので、一緒にムーンライトになってください”とお願いしたんです。今、目の前にいるみんなも含めて、本当は一人ひとりが虹色なんですけど、一つのライトになれたような気がしています」

◆ライブ写真

TOMOOの全国ツアー<TOMOO LIVE TOUR 2023-2024 "TWO MOON">、ツアーファイナルのTOKYO DOME CITY HALL公演。ライブ終盤でのTOMOOの言葉が強く印象に残っている。例えば、人の心の中にあるプリズム、その人をその人たらしめる“核”のようなものが存在するとして、TOMOOとは、プリズムの放つ光には様々な色彩が含まれていること、あるいは色彩の経年変化に目を向けながら音楽を紡いでいる人なのだと、アルバム『TWO MOON』を聴いて思ったからだ。

変わっていくこと、変わりゆくこと、変わらずにいること、変われずにいること。そこにある機微を捉えるTOMOOの歌を聴き、私たちは「まるで自分のことを歌っているようだ」と共感したり、新たな気づきを得てハッとしたりする。サウンドの豊かさや表現の妙、含蓄にうっとりとし、身を委ねたりもする。アルバムリリースから数ヶ月経った今の心境を「いろいろなトーンの曲をまるごと届けられて嬉しい。その嬉しさが、リリースから時間が経つほど増えてます。受け取ってもらえているからだと思うんですけど」と語ったTOMOO。心の動きは虹の瞬き。ツアーファイナル公演は、TOMOOとバンドメンバーと観客、一人ひとりの心の虹が発現しては重なり合う瞬間の連続で、つまりとても美しい時間だった。人と人は完全に分かり合うことはできず、どれだけ長く一緒にいても、会話を重ねても、ふたつの心臓はひとつにはならない。しかし、個々の有する虹色の輝き自体がそもそも愛すべきものであり、私たち一人ひとりは世界に存在しているだけで喜びなのだという前提の上で、別々のまま、一つの音楽を楽しみ分かち合う行為は、この上なく尊いものではないか。


改めて、この記事では、1月30日のツアーファイナルを振り返る。昨年9月リリースの1stフルアルバム『TWO MOON』を引っさげた今回のツアー。11月2日のツアー初日は、TOMOO単独でのピアノ弾き語り公演。その後は大月文太(G)、伊吹文裕(Dr)、勝矢匠(B)、幡宮航太(Key)とともに全国6都市をまわり、ツアーファイナルでは、横山ともこ(Sax)、小松悠人(Trumpet)、前田大輔(Trombone)、永田こーせー(Baritone Sax)、中島優紀(1st Violin)、須原杏(2nd Violin)、河村泉(Viola)、林田順平(Chello)が合流。小西遼のサウンドプロデュースの下、総勢13名で21曲を奏でた。


1月21日放送の『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)で『TWO MOON』収録曲が取り上げられたこともあり、TOMOOにますます注目が集まっているタイミングでのライブ開催となったが、それ以前より彼女の活動を追っていたファンによってチケットはソールドアウトし、立ち見のスペースまで埋まっている。客席に漂う静かな熱気。やがてTOMOOがハミングで「MOON RIVER」を口ずさむSEが流れてきて、開演を告げる。円形舞台上のグランドピアノがスポットライトで一時照らされたあと、再びステージが暗転するという印象的な演出のあと、暗転の中からTOMOOが現れた。1曲目は「夢はさめても」。TOMOOがキーボードでイントロを弾き始めると、その旋律に導かれるようにリッチなバンドサウンドが立ち上がる。

「こんばんは、TOMOOです。ツアーファイナル、一緒に楽しむ準備しましょう!」と観客に呼びかけつつ、華やかなサウンドを背負いながら、のびのびとアルトボイスを響かせるTOMOOは、時代のポップスターと呼びたくなる佇まい。『TWO MOON』を聴いて名盤だと確信した時に近い興奮を、おそらく多くの人が感じていたことだろう。TOMOOの歌いっぷりも、豊かなバンドアンサンブルも、各曲のチャームポイントをより際立たせるライブアレンジも、いいプレイが出たらしっかり讃える観客の熱量も素晴らしい。「恋する10秒」に「HONEY BOY」に「酔ひもせす」と最初のブロックでは4曲続けて届けた。



最初のMCでは、客席からの歓声に「声めっちゃ聴こえるんですけど!」と喜びつつ、「アリーナ! 1階バルコニー! 2階! 3階!」とエリア別に声を掛けるTOMOOの姿が初々しく微笑ましかった。「フルカラー、フルパワーとずっと言ってきたアルバムのツアーですけど、今日はファイナルということで、スペシャル編成でお届けします」と改めて告げたところで演奏再開。のちのMCでTOMOOはアルバムレコーディングを「熱気がどんどん景色を作っていく」ようだったと振り返ったが、「17」「Grapefruit Moon」を披露したこのブロックにも同じ種類の熱気が立ち込めていた。生のストリングスによる深みのある響きは強く雄大な景色を見せてくれるが、同時に儚く繊細でもあり、私たち一人ひとりが抱くごく個人的な感情にもタッチしてくるから不思議だ。TOMOO一人がステージに残り、ピアノを弾きながら歌った「Mellow」も素晴らしい。歌声はもちろん、音の溜めやリタルダンドなどもTOMOOの呼吸から生まれるものであり、音楽が、時間が、ごく自然に流れている。聴く側の呼吸ともフィットし、心のひだに触れてくる感じがあった。


さらに、「その時の自分の気持ちや、何となく目に入ってくる世の中のこと、身近な出来事、いろいろなことがミックスして今歌いたいと思った曲を歌っている」という日替わり曲=「雨粒をつけたまま」「What's UP?」をピアノ弾き語りで披露したTOMOO。その後は、『TWO MOON』収録曲がいくつものハイライトを生み出していった。「人の心にも天気があると思っていて。例えばその人の心が曇りだったり嵐だったりざざ降りだったりしても、その人の尊さが損なわれることは絶対にないなと思ったときに書いた、日記みたいな、あるいは手紙みたいな曲です」と紹介した「窓」は、アコースティックギター3本を加えた編成で、そのやわらかな音像が天使のはしご(薄明光線)を彷彿とさせた。バンド編成に戻ってからの「ベーコンエピ」は、バンドのリズム&グルーヴが心地よく、曲中の二人の弾む足取りを連想させた。特に素晴らしかったのが、フル編成での「Cinderella」だ。ストリングスによる緊張感をたたえたイントロに、音の切れ目から聞こえてくるブレス。初めは寂寞とともに歌が在るが、歌もサウンドもやがて力強くなり、境目なく混ざり合い、主人公の胸に渦巻く感情が懸河がごときアンサンブルによって表現される。圧巻の演奏に、心からの拍手。このツアーのクライマックスと言っていいシーンだった。


「そろそろ後半戦なんですけど、もう1回盛り上がる準備はできてますか?」と「Friday」「オセロ」「POP'N ROLL MUSIC」を一気に届けると、早いもので本編は残すところ2曲だ。本編ラストのMCでは、「10年くらい活動してきたけど、今が一番、私が届けたかったことを受け取ってもらえている実感があるし、それが日々増しているんですよね」と率直な実感を語った。また、「星の光と一緒で、受け取ってもらえて初めてそこにあることが分かる。自分の音楽はどんなか、自分の心はどんなか、改めて分かる」とも。


「月って、太陽からもらった光を反射して光っているわけですよね。同じように、私もみなさんも、光を受け取り合って、照らし合っているんだなと思いました。私の曲を聴くタイミングはいろいろあると思う。元気な時もあれば、そうじゃない時もあるし、聴けない時もあると思うんですけど、ふと触れたときに“生きてる心があるな”って思ってもらえるような曲を、これからも作っていきたいなと思ってます。みんなのおかげで幸せな夜になりました。いろいろな人たち、いろいろな場所のことを思い浮かべながら歌います」

そんな言葉とともに届けられたのが「夜明けの君へ」、そして「Super Ball」。ライブが終わればみんなそれぞれの日常に帰っていくが、今日この場所で感じられた光は胸の内から消えやしない。だから、どうか光を絶やさずにいてほしい。そんなメッセージが読み取れるラストだった。


アンコールでは「スーパースター」「Ginger」を披露するとともに、「終わるってことはまた始まるってことなんですけど、曲も作ってるし、次のツアーも決まってます。とにかく続きますので、ぜひ楽しみにしていてください」とファンに伝えたTOMOO。そして、その言葉を回収するように「実は最後の最後にもう1曲用意しました。2月14日に新しい曲を出します。タイトルは『Present』です。受け取ってください!」と新曲「Present」を初披露し、幸福なムードでライブを締め括った。

取材・文◎蜂須賀ちなみ
写真◎Kana Tarumi

セットリスト

1.夢はさめても
2.恋する10秒
3.HONEY BOY
4.酔ひもせす
5.17
6.Grapefruit Moon
7.Mellow
8.雨粒をつけたまま
9.What's UP?
10.窓
11.レモン
12.ベーコンエピ
13.Cinderella
14.Friday
15.オセロ
16.POP'N ROLL MUSIC
17.夜明けの君へ
18.Super Ball
19.スーパースター
20.Ginger
21.Present

New Digital Single「Present」


2024年2月14日(水)リリース
https://tomoo.lnk.to/PresentPR

<TOMOO LIVE HOUSE TOUR 2024>


2024年
6月20日(木)東京・Zepp Haneda (TOKYO) Open 18:00 / Start 19:00 
6月28日(金)大阪・Zepp Namba(OSAKA) Open: 18:00 / Start: 19:00
7月3日(水)愛知・Zepp Nagoya  Open: 18:00 / Start: 19:00

▼チケット料金
1階スタンディング 6,500円(税込)/2階指定席 7,500円(税込)

<TOMOO OFFICIAL FAN CLUB LIVE "Itʼs YOU!" vol.1>

2024年3月16日(土) 東京・SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
Open 16:30 / Start 17:00

▼チケット料金
指定席 6,500円(税込)
※FC会員様限定の公演です。一般発売の予定はございません。

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