【レポート】“渋谷を楽器の街に”という思いの下に生まれたプロジェクト“#シブヤサウンズ”始まる! 第一回のゲストはcoldrain弦楽器隊
■ワークショップや楽器体験コーナーを通じて
■だれもが楽器に触れ、音楽を楽しむ機会を
2024年2月2日(金)、世界的な活躍をみせるラウドロックバンド“coldrain”のメンバーをフィーチャーしたスペシャルイベントが、東京・渋谷「イケシブ」(池部楽器店 渋谷旗艦店)と、Rock oN渋谷店B1F「LUSH HUB」の2カ所で開催された。
本イベントは“渋谷を楽器の街に”という想いの下に生まれたプロジェクト“#シブヤサウンズ”の一環として企画されたもの。イケシブとRock oN、そしてcoldrainのコラボレートで、楽器、さらには音楽の魅力を発信していこうという趣旨である。
第1弾は、イケシブにて開催された<#シブヤサウンズ Positive Grid Spark トップアーティストによる ギターサウンド制作術 feat. coldrain>。タイトルにもあるように、Y.K.C(g)、Sugi(g)、RxYxO(b)の3名が多彩な機能を搭載したコンパクトアンプ“Positive Grid Spark”を使って、それぞれのサウンドメイクの手法を明かすといった内容となった。
Sparkはスピーカー一体型のコンパクトなスマートアンプで、Bluetoothでスマートフォンなどに接続して専用アプリを活用すれば、さまざまな音色のプラグインを使用して音作りができたり、バッキングトラックを使って演奏が楽しめたり、YouTubeにアップされている楽曲のコード解析ができたりと多彩な機能を有するアンプである。今回は、coldrainの3人がそれを実際に活用して、その使い勝手をレクチャーしてくれるというわけだ。
会場は平日の16時開演にも関わらず、立ち見が出るほどの盛況ぶり。そんな中、司会を務めるMedia Integrationのソーイチ氏が登場し、イベントがスタートした。まずは“#シブヤサウンズ”について改めて説明。
「流行の発信地として知られる渋谷は、数多くの楽器店が集い、ファッションと同じく音楽のトレンドの発信地でもあります。“#シブヤサウンズ”では、ワークショップや楽器体験コーナーを通じて、だれもが楽器に触れ、音楽を楽しむ機会を提供したいと考えています。楽器の街としての渋谷の魅力を世界へ発信し、新たな音楽体験と交流の舞台を切り拓くプロジェクトとして今回#シブヤサウンズを立ち上げた次第です」
3人が楽器のセッティングを済ますと、今回のためにSparkで制作したプリセットを使ってデモ演奏を披露。まずはその迫力に驚かされる。Sparkに小型キャビネットにつないで音を鳴らしていたが、しっかりとバンドの音となっていた。Y.K.Cも「意外とそれっぽくなるね」と笑顔をみせた。
ここからは今、鳴らしたプリセットをどのように制作したのかを、それぞれが説明。
「いつも使っているアンプの音をイメージして作っていった」(Y.K.C)
「ミッドが大切なので、それを上げることを意識して作って、最後にイコライザーで調整した」(RxYxO)
「デジタルアンプを使うときに、いつも基本としているセッティングがあるんだけど、それを試したらもう“合格”だった」(Sugi)
と各自の制作におけるコンセプトを明かしつつ、Sugiは“Boost”を足すことでcoldrainらしい音になると語りつつ、その有無でどう音が変わるのかを実演してみせるなど、それぞれに音作りの細部までを解説していった。
ここで、Y.K.Cが「さらに解説をした方がいい? それともQ&Aを長くやった方がいい?」と観客に質問。本来であれば、音作りの話をさらに掘り下げる予定であったが、この日は、楽器初心者の観客も多かったことで、話がさらに専門的な内容になると、楽しめない人もいるのではと配慮したのだろう。また、せっかく間近で話ができる機会を大切にしたいという思いもあったことだろう。
ともかく、Y.K.Cの提案でここからはQ&Aコーナーに。「ギターを始めて2~3年目のころはどんな練習をしていましたか?」との質問には、
「好きな曲の伴奏もメロディも同時に弾くということをやっていた。音楽を楽しみながら、変則的な左手の動きが出てきたりして練習にもなるのでおすすめ」(Y.K.C)
「基本的には好きな曲をコピー。さらに、曲が弾けるようになったら、どこまで突き詰められるかといった感じで、フォーリングやニュアンスまで再現できるようにと思って弾いていた」(Sugi)
とアドバイス。「ベースをやっているんだけど、ツッコんでしまいます。良い練習法は?」と聞かれると、
「自分はモタる方なんだけど、まずは好きな曲を死ぬほどコピーして耳を鍛えることが大事」(RxYxO)
「リズム練習という意味では、ウラをとれるようになることが大事。クリックを使ってウラを意識した練習するといいと思う」(Y.K.C)
「その通り! それ俺が言いたかった(笑)」(RxYxO)
と笑わせる場面もありながら、3人は練習方法から曲作り、ライブでのサウンドメイクにいたるまで、多岐にわたる質問に答えていった。
最後は、改めてSparkを使ってみた感想を。
「家で使うと楽しいアンプ。いろいろなことができるので、練習も楽しくなるし、ぜひ試してみてほしい」(Y.K.C)
「普段はデジタル機器を使わないアナログな自分でも使えた。いろいろな機能があって遊ぶには最高だし、勉強にもなった」(RxYxO)
「キャビがなくても良い音だし、Bluetoothスピーカーとしても使える。これが4万円台なんてすごい! 機材には必ずメリットとデメリットがあるけど、デメリットを考慮しても良いアンプだと思う」(Sugi)
さらにSugiが「買うしかないでしょ!」と付け加えて、イベントは終了となった。
彼の最後の言葉が象徴していると思うが、多くの機能を備えたSparkは、その利便性とコストパフォーマンスを考えれば、試してみる価値大いにありの逸品だろう。その実力の一端を大いに感じることができた意義あるイベントであった。また、冗談を交えて場を和ませながらも、サウンド制作についてしっかりと語り、観客からの質問に真剣に答える3人の真摯な態度も印象的。そこからは音楽に本気で向き合っていることがひしひしと伝わってきた。会場に集まった人たちは、さらにcoldrainのことが好きになったのではないだろうか。
■Sparkは小型なので
■フットワーク軽く使える(Y.K.C)
続いて18時30分からは、会場を LUSH HUB に移して<#シブヤサウンズ Y.K.C による coldrain流デモ制作術>が開催された。
こちらもずばり、Y.K.Cが自らデモ音源の制作過程を明かすという内容で、coldrainの楽曲制作の“裏側”が垣間見えるだけでなく、Y.K.Cのデモ制作のノウハウまでもが学べてしまうという興味深い内容だ。
ここでも司会を担当したソーイチ氏が、改めて“#シブヤサウンズ”について説明した後、Y.K.Cが呼び込まれてイベントがスタートした。
今回は彼らの楽曲「Rabbit Hole」を“教材”とするため、まずはその完成バージョン……正確には、各楽器の音色などを聴き取りやすくするためにボーカルレスのインストトラックを聴いてみることに。そして聴き比べる形で、デモバージョンを試聴したのだが、これが想像以上にクオリティが高い。「違いを明白にするために、あえて最終アレンジ前のバージョンを聴いてもらった」と話していたが、それを差し引いても曲の雰囲気を十二分に伝えるものだった。
いわく「デモをしっかり作ると、完成品のクオリティも上がる」のだそう。「アイディアをメンバー間で共有することで、完成したイメージも共有できる。また、しっかりとしたデモがあると、エンジニアとも話がしやすくなり、レコーディングですべきことが明確になる」ために、本番を想定して、細部にまでこだわったデモを制作しているという。
さて、Y.K.Cのデモ制作は、ケースバイケースではあるものの、ドラムから作り始めることが多いという。「ドラム・サウンドにはバンドのカラーが出ると思っている」ということで、既に自分の好きなドラム・サウンドを作り込んであり、ここではその構成を実際のMIDIの編集画面をモニターで表示し、音色を足すことでどんな変化が生まれるのかを実際に聴き比べながら丁寧に説明してくれた。
次の行程はベースの打ち込みだが、「チューニングを下げているので、プリセットの音ではうまくいかない」ことが多いため、これは自分で音を加工するという。
ドラム、ベースを打ち込んだ後はギターを入れることになるが、「ギターはやっぱり自分で弾いちゃうよね(笑)」。しかしながら、Sugiが弾くことを想定しているパートは、デモの段階であっても本人に弾き直してもらうこともあるそうだ。「やっぱり彼が弾くとイメージが変わるので、完成度を高めるために弾いてもらうようにしている」。
ちなみに、ギターはKemper Profiling Amplifierのデジタルアンプを使って録音しているとのこと。先ほどイベントで使用していたSparkとの使い分けを問われると「Kemperはライブでも使うので仕事用というイメージ。Sparkはざっくりいうと練習用。小型なので、フットワーク軽く使える。ただし、同じものを使い続けると飽きてしまうし、発展もなくなる。いろいろなものを試してみることが大事だと思う」と話をまとめてくれた。
また、ギター録音の際は、基本的に“素”の音で録り、リアンプ(※ギターやベースなどを DAWなどに録音した後、再度アンプに出力してマイクなどで録音し音作りを行うこと)するときに、いろいろなアンプを試してみるのがY.K.C流だそうだ。
完成度を高めるために、細部までこだわって作っているデモだが、オーバーダブ(※多重録音)はほとんど入れない。これは「ボーカルのイメージが限定されてしまうから」。すべてを完璧にすることがベストではなく、臨機応変にやることが、最終的には完成した楽曲のクオリティを上げることにつながるということなのだろう。
一気にデモ制作のノウハウをレクチャーした後は Q&A のコーナーへ。こちらでも熱心な質問が次々と飛び出し、話は作曲ソフトの使用遍歴やプラグインについて、ドラムの打ち込みで迫力のある音を作るにはどうしたらいいのかといったよりテクニカルなものまでに話は及んだ。
中でも興味深かったのは「完成品に近いデモをメンバーに渡して、メンバーから自分の意図とは違う意見が出た場合はどうしているか?」という旨の質問。
「意見が出たら試してみて、みんなでベストはどれなのか、話し合って最終のアレンジを決めている」
完成型に近いものだとはいっても、それがすべてではなく、正解はメンバー全員で見つけていく……そこに彼らがバンドをやっている意義のようなものがあるようで、何気ない一言だったが、とても意味のある言葉に思えた。
最後にY.K.Cが「またこういった機会を作るので、また質問しにきてください」と締めくくり、再度、デモを試聴してイベントはお開きに。coldrainの音楽性は、荒々しく激しい部分も有しているが、それはこんなに繊細で緻密な作業の積み重ねで出来ているとは! 彼らが心血を注いで音楽を作っている現場を垣間見たようで、なんとも有意義で興味深い時間であった。
今回の 2 つのイベントでは、楽器の初心者から一家言を持つベテランプレイヤーまでが集まった。彼らは、新型アンプの実力を体感し、coldrain の緻密な音楽作りの一端に触れ、多くの刺激を受けたことだろう。今後も渋谷を拠点にこのようなイベントが増え、楽器や音楽の魅力がさまざまな形で発信されることに期待したい。
取材・文:竹内伸一
<#シブヤサウンズ>
2024年2月2日(金)16時〜渋谷イケシブ
ゲスト:Y.K.C(g)、Sugi(g)、RxYxO(b)from coldrain
<#シブヤサウンズY.K.Cによるcoldrain流デモ制作術>
2024年2月2日(金)18時半〜渋谷LUSH HUB
ゲスト:Y.K.C(g)from coldrain
◆Media Integration オフィシャルサイト
◆イケシブ オフィシャルサイト
◆Rock oN Company オフィシャルサイト
◆LUSH HUB オフィシャルサイト
◆ coldrain オフィシャルサイト
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