【ライブレポート】ATEEZ、世界を魅了するネクストレベルの体験「今年も、もっと成長した姿をお見せします」

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躍進が止まらないATEEZが、ワールドツアーの日本公演<2024 ATEEZ WORLD TOUR [TOWARDS THE LIGHT : WILL TO POWER] IN JAPAN>を2024年2月3日、4日の2日間にわたり自身初となるさいたまスーパーアリーナにて開催。今や世界を魅了する彼らのステージは、最強パフォーマンス集団という称号を自ら更新したネクストレベルの体験だった。

2023年5月に東京 有明アリーナにて行われた<ATEEZ WORLD TOUR [THE FELLOWSHIP : BREAK THE WALL] ANCHOR IN JAPAN>を観覧した際にはATEEZの時代が来ていることを確信したが(【ライブレポート】ATEEZの時代が来ている)、もはや彼らは時代の先を行き人々を導くエンターテナー集団と化している。「2023 MAMA AWARDS」にて「Worldwide Fans’ Choice」と「Favorite Global Performer Male Group」の2つの賞を受賞しているように、活動初期から名曲の数々を高次元のパフォーマンスで表現してきたのがATEEZであり、そんな8人のパフォーマンスを直近に観られるというだけで貴重な体験だが、今回の公演ではそれに加えて、アクションやストーリーもふんだんに織り交ぜた実に作品性の高いステージを創造してくれた。



さいたまスーパーアリーナ公演の2日目の2月4日。ステージ中央にそびえ立つ巨大なタワーの中から姿を現した8人がまず披露したのは、2024年12月にリリースされたアルバム『THE WORLD EP.FIN : WILL』のタイトル曲「Crazy Form」。既成概念や世間の抑圧をぶっ壊すATEEZらしい刺激的で扇動的な幕開けだ。そして、キャプテンHONGJOONGが、日本のATINYとの再会を喜ぶと共に、「みなさんは存在しているだけで光り輝く命です」「どんな暗闇も僕らを邪魔することはできません」といった力強いメッセージを初っ端から投げかける。初期の代表曲「Say My Name」へ続き、この猛々しい所信表明に対して会場はより強固に一つになった。さらに、勝利宣言する「WIN」を間髪入れずにパフォーマンスしたのだから、さいたまスーパーアリーナは完全に覚醒。序盤から圧倒してくるセトリ。「私たちはみんな光を持っています」というメッセージがビジョンに映し出されていたように、まさにファン一人一人の存在、アイデンティティを表すように場内いっぱいに無数のペンライトが輝く光景も、感動の立役者となった。



だが、“暗闇”というのは予期せず襲来する。突如警報が鳴り響き、輝いていたはずのタワーのテッペンには不気味な目玉が浮かび“監視タワー”と化していった。スクリーンにも場内の様子が不気味に映し出され、辺りには窮屈で重苦しい雰囲気が漂う。YUNHOはステージを駆け回り何者かから逃げ惑い、SANは謎の敵たちと激しく格闘するなど、得体の知れない何かが自由を奪おうとする不穏なシーンが続く。ATEEZメンバーのアクションや表情は真に迫っており、憑依型と形容される彼らの表現力の高さを実感する。時折客席からは思わず悲鳴が上がった。椅子、スカーフ、羽根などさまざまなモチーフを駆使した多彩かつ圧巻のパフォーマンスにも一瞬たりとも目が離せず、彼らはパフォーマンスの幅をさらに広げていることを伝えた。「Guerrilla (Flag Ver.)」のイントロでHONGJOONGが掻き鳴らしたエレキギターも起爆剤となり、暗闇から光を取り戻すべく、屈せずに進もうとする様を8人は全身全霊で表現していった。

▲HONGJOONG


▲YEOSANG


▲MINGI


また前半戦のハイライトのひとつが、デビュー以来初めて披露したユニット曲、ソロ曲のシーンだろう。鳥籠の中から出ようとするように、白〜ベージュを基調としたネイキッドな趣の衣装に身を包んだYEOSANGの羽化した鳥のような美しいソロパフォーマンスののち、「IT's You」では、YEOSANG、SAN、WOOYOUNGが爪の先まで神経の通った繊細なステージを披露。一変して続く「Youth」では、ステージ上に電話ボックスが登場。スーツ姿のYUNHOとMINGIが、若い日々特有の葛藤を描いたこの楽曲を息の合ったダンスの掛け合いで魅せた。次曲の「Everything」では、コート姿のJONGHOが冬が似合う切ないラブソングをメインボーカルらしく感動的に歌い上げ、タワーのテッペンにもスノードームが浮かぶなど一気にムーディーに。改めて述べるまでもないが、この3曲では全く異なる空間が目の前に広がり圧巻の展開を見せた。

▲YUNHO


▲JONGHO


それとぜひ伝えたいのが、「IT's You」のパフォーマンス後にスクリーンに「僕たちは本当に光を探し出せるか?」と、本心を吐露するようなフレーズが映し出されたことで、迷いの心境も表現するリアリティーにも拍手を送りたい。ATEEZの表現に対する信頼を深めた瞬間だった。そして、「光に向かって進んでください」というメッセージがスクリーンに現れると、スタイリッシュなWOOYOUNGのソロパフォーマンスから、暗闇から抜け出し光へと向かう「Silver Light」に突入。攻撃的な楽曲とは毛色の異なる抒情的な曲調が心に染みる。スパンコールが煌めく衣装に身を包んだ8人の姿も美しい。次曲の「WAVE」では弱さとも向き合った強さを手にし、次なる挑戦にも勇気が湧いてくるような清々しさをもたらし、無事にタワーも輝きを取り戻している。こうして今回の公演は、失われた光を奪還するまでのストーリーが描かれるのかと思いきや、後半戦はさらにその先の景色も描いて見せた。解放を勝ち取った私たちがATEEZのパフォーマンスを存分に楽しみ、思い切り音楽で一緒に遊ぶという最高のひとときが待っていたのだ。先のソウル公演では、「今年はATEEZの『証明の年』。素敵な姿と行動でお見せするアーティストになります」と抱負を掲げ、この日本公演でも「今年も、もっと成長した姿をお見せします」と頼もしく宣言したATEEZだが、実際、信じられないくらい濃厚なステージを準備していた。



さらに怒涛のセットリストが待っていた(ATEEZは楽曲の層がものすごく厚い)。残る一つのユニット曲「MATZ」では、HONGJOONGとSEONGHWAがMVと同じくリッチなファーの衣装で登場、ギラギラと自信に溢れたオーラがたまらない。間髪入れずにスムースに続いた「ARRIBA」ではBARのセットが迅速に組まれ、もうミュージカルのよう。ハットとサングラスとステッキ姿のMINGIの存在感が特にすごい(対して、発表されたばかりのソロ作「Tunnel」の切実な歌にも心を撃ち抜かれた)。頭を空っぽにして身を委ねたい新たなアンセム「BOUNCY (K-HOT CHILLI PEPPERS)」に続いて、「WONDERLAND」ではSEONGHWAが剣でモンスターを一撃するなど、この日何度目かの最高潮の盛り上がりに達すると、劇的に本編を締めくくった。

▲SEONGHWA


アンコール。ステージには“TOWARDS THE LIGHT”の文字。自由を掴み取った黄金の手の巨大オブジェも出現。<TOWARDS THE LIGHT : WILL TO POWER>という公演タイトルについてSEONGHWAは、「誰でも周りの目を気にして、何かを諦めたり自分を隠した経験ってあると思うんです。でも僕は、メンバーとATINYのおかげで、僕自身の輝きを見つけられています」と、このタイトルが彼の心に響いた理由を述べていたが、あの場にいた人々の人生がまたひとつ好転するきっかけになり得るエポックなライブだったと思う。一瞬のトキメキに留まるものではない、月曜日からまた始まる日常の景色も変わる一生もののライブ。夢のようなこの瞬間を抱きしめるように歌う「Dreamy Day」から、「Eternal Sunshine」「I'm The One」「The Real」のメドレーで最高の時間を共に分かち合い、最後は、「夜間飛行 야간비행 (Turbulence) (Japanese Ver.)」「UTOPIA (Japanese Ver.)」で日本のファンに向けて精一杯歌を届けた。

▲SAN


▲WOOYOUNG


次々と新たなアンセムを生み出し、既存曲もバンドサウンドにアレンジしたりと音楽的な挑戦を進めながら、これだけメッセージ性豊かなライブを作り上げたATEEZ。「さいたまスーパーアリーナは日本でも有名な大きな会場のひとつですよね」と、HONGJOONGは今回の大舞台に立つ興奮を伝えたが、日本でさらに大きな舞台に立つのもきっとすぐだろう。そして、アルバム『THE WORLD EP.FIN : WILL』はアメリカの「Billboard200」で自己最高の1位を獲得するなど既にワールドワイドに評価されているが、4月に開催される世界最大級のフェス<コーチェラ>初出演でさらにその磁場をもっと拡大させ、世界中の人々を虜にするのだろう。と、彼らの眩しく壮大な近い未来を想像していた矢先、みんなの近くに行きたいという願いから最後の最後にトロッコで場内を巡った8人。「僕たちは、いつもみんなのそばにいるから心配しないでください」というSANのメッセージを早くも実行したように見えた。ファン一人ひとりに寄り添いながら、カリスマ性溢れるアーティストであるATEEZは、近くて偉大な存在。みんなの日本語がさらに上手になっていたことにも感激。2月28日にリリースする日本で3枚目のシングル「NOT OKAY」、今年の夏に開催される日本初のファンミーティングにも期待が高まるばかりだ。進化し続ける彼らは、また想像を超えた楽曲やステージを見せてくれるのだろう。



文:堺 涼子
撮影:宮田浩史 ©KQ Entertainment

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セットリスト

<2024 ATEEZ WORLD TOUR [TOWARDS THE LIGHT : WILL TO POWER] IN JAPAN>
M-1 Crazy Form
M-2 Say My Name
M-3 WIN
M-4 This World + Wake Up
M-5 Guerrilla (Flag Ver.)
M-6 Cyberpunk (Japanese Ver.)
M-7 Deja Vu
M-8 IT's You
M-9 Youth
M-10 Everything
M-11 Silver Light
M-12 Crescent pt2.
   WAVE
M-13 Dancing Like Butterfly Wings
M-14 MATZ
M-15 ARRIBA
M-16 DJANGO
M-17 BOUNCY (K-HOT CHILLI PEPPERS)
M-18 WONDERLAND (Symphony No.9 “From The Wonderland”)
M-19 Dreamy Day
M-20 Title Medley
(Eternal Sunshine+I'm The One+The Real)
M-21 夜間飛行 야간비행 (Turbulence) (Japanese Ver.)
M-22 UTOPIA (Japanese Ver.)

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