【インタビュー】THOUSAND EYES、初のライブ盤&初期2作品リマスタリング盤発売「自分たちの満足できる作品が作り続けられれば一番幸せ」

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◾️「日本人なのに海外基準じゃん!」
◾️僕の思う僕なりの日本人らしさは、この形


──再発される『BLOODY EMPIRE』については、どのような観点でリマスタリングを行ったんですか?

KOUTA:基本的にはファーストは結構満足してるところもあって、大きくは変えたくなかったんですよね。Hiroさん自身も「玄人向けのリマスター」っておっしゃってましたけど、(オリジナル盤と)よく聴き比べたら、ちょっと音が分厚くなったかなぐらいに感じてもらえるような……大胆な変化ではなく、いじりすぎないリマスターにして欲しかったんですよ。あとは、当時の店舗特典だった「Bloody Empire」のアコースティックアレンジが気に入っていたので、この機会に録り直してボーナストラックとして収録しました。

──一方の『ENDLESS NIGHTMARE』に関しては?

KOUTA:逆にセカンドのほうが反省点みたいなものがありましたね。改めてHiroさんと聴いてみたときに同じ問題点を見つけたので、そこを修正しつつ、あとはファーストと同じく少し厚みが感じられるような方向性でリマスターしてもらって。セカンドに関しては、本来あるべきだった姿をHiroさんに考えていただいて、それを形にしてもらったものになりますね。

──改めてファースト/セカンドアルバムと向き合ったとき、自分たち自身の音楽性などはどう感じるのでしょう?

KOUTA:ファーストは当時の自分が持てる最大限を詰め込んだアルバムだったし、メロデスを好きな人たちを驚かせたいっていう、自分のワクワク感みたいなものが詰まってるなって、今でも思うんですね。全曲速いですし、ある意味、やりすぎな面もあると思うんですけど、それも含めて狙ってた部分でもあったので。客観的に聴いても衝撃を受けられるような作品だったなと思いますし、いつ聴いても興奮が蘇ってくる(笑)。2度と作れないものなんじゃないかなって。だから、後悔がないですし、本当にあのタイミングで出せてよかったなと思えるんですね。セカンドはファーストで出し切っちゃったところがあったので、そこから次の作品に向かっていく産みの苦しみみたいなものを振り返っても感じますね。なので、蘇ってくるのは興奮よりも苦しみのほうが個人的には多いんですよ。ただ、いい意味で、そういった苦悩が聴く人々の慟哭に繋がっているのかなとか、そんなふうに思いますね。だから、どっちかというと反省点はセカンドのほうが実は多いんですけど、それがあったからこそ、3枚目、4枚目と作る原動力にもなったのかなと思うんですよ。

──確かに作り手の苦悩が聴き手の心を惹きつけることは、往々にしてありますよね。THOUSAND EYESを始めたとき、その10年後にはどんな構想がありました?

KOUTA:いや、何の構想もないですね。僕もDOUGENもそうなんですけど、ミスター無計画なんで(笑)。自分はTHOUSAND EYESを始める何年か前に、もうやめようかなみたいに思っていたんですね。そこからいろいろあって音楽活動を続けることになり、何となく調子に乗ってじゃないんですけど、自分が納得できるメロディック・デスメタルを作れるかもっていう土台が、自分の中で出来上がった時期なんですよ。なので、ちょっと思い出作りで1枚作ろうかみたいな、そんな軽い気持ちで始めてしまったので……。もちろん、上手くいけばずっとやっていこうとは思ってたんですけど、何年後にどうなっていようとかは、あんまり考えてなかったですね。


──実際にどうですか、10年経ってみて。

KOUTA:特にファーストは、自分の体感ではあるんですけど、口コミで広がっていったような感覚があるんですね。そういったファンの方たちの後押しで10年続けることができたのかなと思いますし、逆にもっと「こんな活躍をして欲しい」みたいに思ってくださってる方たちもいるのかなとは思うんですけど、そこで無計画ぶりが露呈してるのかなという気もしつつ(笑)。だから、活動していってどうなろうとかいうことより、とにかく自分たちの満足できる作品が作り続けられれば、それが一番幸せなのかなと思うんですね。多分、DOUGENもそう思ってると思うんですけど。

──ファンの様々な声は期待感の表れだと思いますが、日本だけではなく、海外でも活動して欲しいと進言してくる人も多いと思うんですよ。

KOUTA:はい。それこそ何度かそういうタイミングはあったんですけど、それぞれメンバーが他のバンド活動もやっていますし、それが逆にTHOUSAND EYESのよさと言っていいのかわからないんですけど、上手くバランスが保てている一つの要因かなと思うんですね。だから、たとえば海外公演の機会が失われたからといって何だとも別に自分は思わないですし、そういう機会もまた訪れると思いますし、なかったとしても、自分の作る音楽が変わるわけではないですからね。だから、国内でもライブをする会場が大きくなろうが小さくなろうが、正直、気にしてないですし。

──今や音源をリリースしたら、世界中の人が聴くことが容易にできる時代になりましたよね。実際、THOUSAND EYESに対しても、日本以外のリスナーからもリアクションが届いていると思うんです。

KOUTA:結構来てはいるんですけど……THOUSAND EYESは、ジャケットの厨二要素もそうですけど、音楽性でいうと、メロディアスな部分とか、ギター・ソロがわかりやすいとか、そういう日本人らしさはあるとはいえ、わかりやすい日本人らしさってないじゃないですか。


──たとえば和音階を用いたり、和楽器を入れたりとか?

KOUTA:そうですね。和服を着てるとか。そういう意味でいくと、海外の人にとっては、数あるバンドの中の一つという感じなのかもしれないなと思ってて。なので、反応もあまり気にしてないというか……どっちかっていうと、日本の洋楽ファンみたいな人たちに向けて作ってるじゃないですけど(笑)、そういう人たちに刺さったら嬉しいみたいな。「日本人なのに海外基準じゃん!」みたいなことですよね。だから、海外に広まっていくことを目指すという活動の仕方には、まったく興味がなくて。その意味では思った通りの活動ができている。本心はそういう感じですね。

──でも、日本人らしさという視点は面白いですよね。わかりやすい日本ではなく、日本人らしい情緒、緻密さを組み込んだ音楽を目指すことは、具体的に考えていたんですか?

KOUTA:そうですね。わかりやすく言語化するなら、わかりにくい日本人らしさみたいなことなんですけど(笑)、全部がヨーロッパ的かといったらそうでもなく、めちゃくちゃアメリカンかといったらそうでもなく。日本にいるからこそ、いろんな海外の音楽を聴くわけじゃないですか。主にアメリカとヨーロッパなんですけど。そういうメタルを聴いて育ったらこうなりましたみたいな日本人らしさだと思うんですよね。和楽器を取り入れてみるのも全然いいんですけど、それは他の人がやってることですからね。僕の思う僕なりの日本人らしさは、この形なのかなと思ってますね。

──THOUSAND EYESを始める前からそういう感覚があったんですか? 以前はたとえば、SUM RIZEやTHOUSAND LEAVESなどでの活動もありましたよね。

KOUTA:うーん……でも、そこまで深くは考えてはなかったかもしれないですね。特にSUM RIZEのときは。

──SUM RIZEはバンド名からして和を匂わせますよね(笑)。

KOUTA:そうですね(笑)。そこは自分がタッチしてない部分もあるんで何とも言えないんですけど、SUM RIZEに関しては、100%自分の創作を反映しようというものでもなかったんですよね。音楽的な部分だけ切り取ったら、リフにこだわるとか、ソロにこだわるみたいなところで、そこにまたバンドとしていろんな人の情報が加わってくる。歌詞も9割日本語ですし。自分がアウトプットしたものは今と近かったかもしれないですけど、最終的に形になるものは、THOUSAND EYESみたいなものにはならないだろうなとは思ってたので。ただ、たとえば、THOUSAND EYESの「Eternal Flame」は、オケに関してはSUM RIZEのときに作ったものをほとんど変えずに使ってるんですね。でも、まったく逆の方向性というか、だいぶ印象の違う曲に生まれ変わった。やっていたことは実は同じだったのかもしれないですけど、そこにどういう人たちのアイディアが加わるかで、やっぱり出来上がるものは変わるのかなとは思います。

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