【ライブレポート】ニノミヤユイの本懐「ネガティブの先にある希望を信じて」
ニノミヤユイが11月11日、SUPERNOVA Kawasakiにて<ニノミヤユイ LIVE TOUR ~本壊~>神奈川公演を開催した。
◆ライブ写真
初めて声出しが可能となった、コンセプトミニアルバム『本壊』を引っ提げての約2年半ぶりのワンマンライブ。10月21日 愛知公演とあわせて自身の楽曲27曲をすべて披露し、“ニノミヤユイ第一章”の集大成ともなった本公演の模様をお届けする。
「また延期になってしまうかもしれないけれど、絶対絶対、皆さんの目の前でライブをやります。なので、その日まで待っていてください」
開演時刻を迎えてモニターに映し出されたのは、2020年3月28日、1stライブを行うはずだった日の生配信での様子。不安と悔しさが入り混じった肉声に続けて、人影がなくなった都内各地の映像とともに、当時の緊迫したニュース音声をフラッシュバックしていく。
“陰キャのカリスマ”という立ち位置を目標に掲げ動き出した、声優・二ノ宮ゆいのニノミヤユイ名義でのアーティスト活動。そのデビューから3年半、彼女なりの新たな決意が詰まった「本壊」の始まりだ。
真っ白な衣装に身を包んだニノミヤがステージに現れると、デビューアルバムのタイトルナンバー「愛とか感情」でフロアを一気にニノミヤワールドへと引き込む。初の有観客開催となった前回のライブを締めくくった楽曲でもあるが、あえて逆光気味に照らすライトが彼女のネガティブさを強調し、あの日とはまた違う景色を作り出している。
脇役にスポットを当てた『本壊』とも通じる軽やかなジャズナンバー「ヤミノニヲイ」。女の子の恋心を華やかに歌い上げる、ネガティブ要素は少し控えめな「Lemon Gelato」。これまでになかった挑戦的なポップサウンド&キャッチーな手振りとは裏腹に、友達にだからこそ感じる嫉妬心がむき出しの「主役のあの娘は友達」。
“ネガティブ”を軸にした幅広い音楽性を提示していくニノミヤだが、逆光をまとったその表情は、誰とも目を合わせないようにして自分の殻に閉じこもっているようにも見える。特に「乱反射↘↑↗」はそれが顕著で、キラキラしたサウンドとともに飾らない歌声が響く中、歌詞も相まって、自分の音楽が必要とされているのか悩んでいたというデビュー当初の彼女を思い出さずにはいられない。
「呪いを背負って生きたいよ。」ではその独特な音色の数々を全身で豊かに表現しながら歌い、ストレートなロックナンバー「痛人間讃歌」、「愛したあの頃に哀を」と、MCを一切入れずにひたすら音楽だけを紡いでいく。
作詞する過程で改めて自身の弱さと向き合ったという「光なくても」は、照明がすべて客席を照らしていてステージ上は真っ暗という状態から始まり、先の見えない中で模索していたニノミヤとファンとの関係性を温かく映し出した。
歌い続けること10曲目、こちらも自作詞の「Indelible」。自身の存在意義さえ不確かな日々も、“君”と希望を約束した瞬間も、落ち着いたミディアムナンバーで繊細に聴かせた。
歌だけで10曲を一気に駆け抜けたライブ前半。ニノミヤらしいネガティブな感情とコロナ禍での暗中模索がぎゅっと濃縮されていて、画面越しにしか想いを交わせなかったあの日々に感じたことを直接共有し直すような、今このタイミングだからこそできる表現となった。
しばしのインターバルを挟み、「みんなお待たせ!」と元気よくステージに駆け込んだのはオールブラックスタイルで決めたニノミヤ。すぐに後半戦1曲目に相応しいキレのあるギターリフが炸裂し、「わたしを離さないで」がスタート。空気感もがらりと変わって、一人一人の目を堂々と見ながら、時に煽り、時にマイクを向け、フロアを巻き込んで初の声出し解禁ライブを楽しんでいく。次の「私だけの、革命。」ではステージを端まで使い、間近で浴びる“生の歓声”に彼女の瞳の輝きは増す一方だ。
本日初のMCでは、まず「想像以上に人がいる」と手を振ってみるニノミヤ。胃がキリキリするほど緊張していたとは言いつつ、「前半です、今やったの(笑)」「みんな入る前にあの良い香り嗅いだ?」と自由に展開し、笑顔を見せてくれる。
そして、歌って歌って歌いまくるのがニノミヤユイのライブということで、「さっそく次のパートにいってもいいですか?」と一言。「みっともない私なんて」のタイトルコールには、フロアのあちこちから大歓声&拍手が。いくつか会場限定曲がある中で、これもその一つだったのだ。力強いロングトーンから転調し大サビへ、という流れがさらに熱を上げる。
「サイセンタン・コンフュージョン」もまた会場限定曲で、「散文的LIFE」にかけてのさらなる盛り上がりは、「最高!」というニノミヤの心からのシャウトを引き出した。ジャンプを煽ったり、くるっと一回転してみたり、思いのままにこの瞬間を楽しんでいるようで、イヤリングが勢いのあまり取れてしまうほどだった。
「楽しんでますか!」と声を求めるニノミヤ。「ネガティブの先にある希望を信じて、みんなで明るい未来へ行こうぜ!」と改めて気合を入れると、「聞きたかったやつなんですけど」と“どこから来たのかアンケート”を実施。海外から訪れたファンもおり、まさにホリプロインターナショナルだと笑いに包まれたところで、ラストスパートへ。
「運命論」「つらぬいて憂鬱」「安心 to the 安全」と、そのアップテンポなサウンドはもちろんコールやクラップで盛り上がること必至の3曲を畳み掛け、ラストの19曲目にはトラップビートとロックを融合させた「Dark seeks light」をチョイス。シンフォニックなフレーズでは美麗なファルセットをしっかりと聴かせつつも、息つく暇を与えない怒涛のセットリストとなった。
「ありがとう」とだけ言い残して足早にステージを去るニノミヤだったが、大きな拍手は次第にアンコールを求めるクラップへと変わり、ほどなくして再登場。アンコール1曲目「あどけなさも私の武器にする」のあと、コロナ禍でファン一人一人の大切さを今まで以上に感じるようになったと言い、その恩返しとして今回「全部の生歌を届ける」ことにしたと明かされた。事前に「ニノミヤユイ第一章の集大成的ライブになる」とも語られており、この2公演で特別楽曲を除いた27曲がすべて披露されたのだ。
無事に目標を達成した今、「まだまだネガティブかもしれないけど、明日に向かって頑張れるような曲をこれからもみんなと作って歌って生きていきたい」と決意表明してから、ニノミヤユイ第一章のエピローグとなるラストナンバー「ヒロイン」へ。初めて一人で作曲まで手掛けた、コンセプトアルバムのリード曲。ミュージックビデオをバックに背負いながら、エネルギッシュに想いを響かせてピリオドを打った。
2020年7月17日の無観客配信ライブ<愛とか死、或いは名もない感情からの逃避>では、事前収録の語りを用いながら物語風に全11曲を。2021年3月28日のワンマンライブ<消えてくれないアイの痕。>では生バンドを引き連れ全15曲を。そして今回は全21曲を前半・後半で趣向を変えて披露し、大きく成長し続けている彼女。これから始まる第二章でどのような姿を見せてくれるのか、期待せずにはいられない一夜となった。
文◎友安美琴
写真◎Kana Ugai
セットリスト
02. ヤミノニヲイ
03. Lemon Gelato
04. 主役のあの娘は友達
05. 乱反射↘↑↗
06. 呪いを背負って生きたいよ。
07. 痛人間讃歌
08. 愛したあの頃に哀を
09. 光なくても
10. Indelible
11. わたしを離さないで
12. 私だけの、革命。
13. みっともない私なんて
14. サイセンタン・コンフュージョン
15. 散文的LIFE
16. 運命論
17. つらぬいて憂鬱
18. 安心 to the 安全
19. Dark seeks light
アンコール
20. あどけなさも私の武器にする
21. ヒロイン
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