【インタビュー】超学生、“ヴィラン”シリーズ第3弾・煮ル果実コラボ「超獣戯画」に覗く美学「僕は変化していきたい」

◾️昔から“難しいことをたくさんしていきたい”という考えを持っている

──ヴィランシリーズの制作背景からも、今まで以上に超学生さんの意志が反映されていることがうかがえました。冒頭の話題にもつながりますが、超学生さんの目指すものがはっきりしているからクリエイターの方々もフルスイングの制作ができて、リスナーの方々もカバー曲とオリジナル曲どちらも同じ熱量で受け取れるのだろうなと。

超学生：やっぱりファンの方々も（アーティスト側の）行動が惰性だった場合は、それをなんとなく感じ取ると思うんです。超学生は“やりたいことをやりたいときしかやらない”が実現できる、とてもありがたい環境に身を置けているので、オリジナル曲もカバーも全部含めて超学生（の表現）としてフラットに受け止めてくださっている方が多いかもしれないです。

──発信するものすべて、ひとひねりふたひねりあるところも、多くの人の心を引き付けるのだと思います。今年の春と秋に開催されたワンマンライブも、どちらも非常に個性的で。

超学生：あんなに演者がMCをしないライブもなかなかないですよね（笑）。でも1stワンマンの＜入学説明会＞より、2ndワンマンの＜入学式＞のほうがしゃべりましたね。

──とはいえ2ndワンマンも、本編最後の曲の前の「ラスト！」と、最後の「ありがとう！」の二言だけですけどね（笑）。

超学生：とはいえ増えてますね（笑）。でも、ゲストで参加したライブではたくさん喋ってますよ（笑）。


──確かにああいうことができるのもワンマンライブならではだと思います。オリジナリティの実現に妥協しないところは、超学生さんの美学なんだろうなと。

超学生：かっこよく言うとそうなりますけど、たぶんそうしないと自分が飽きちゃうというだけな気もします。「スペースキャットビッグバン」リリース時のインタビューで、“厳しいダメ出しを自分から求めにいくことで心身が疲弊しないのか”という質問をしていただいて、そのとき僕は「そのダメ出しは超学生に向けられたもので、超学生を操作している僕に向けられたものではないから耐えられる」といったお話をしたと思うんですけど。

──はい、そうですね。

超学生：でも最近は、クリエイトがうまくいったときは“超学生”のおかげで、うまくいかなかったときは“操縦士側の超学生”がしくじったんだなと思うようにしてます。それまでは心身的な負担を避けることが多かったので、最近は高みを目指すというか、敢えてストレスの掛かる考え方をするようにしているんです。

──それもご自分が飽きないように。

超学生：昔から“難しいことをたくさんしていきたい”という考えを持っているので、取り組み方そのものから変化をもたすようにしてるところはありますね。今は皆さんのおかげで本当に恵まれた環境に身を置かせていただいているんですけど、ずっと同じことをするだけなら、僕はやめちゃうだろうなって。それも全部、活動が趣味に近い感覚だからだと思います。効率化したいとは思わないというか。

──なるほど。ゴールすることが目的なわけではないから、過程も楽しめるということですね。

超学生：過程も面白いし、もちろん完成した後の皆さんのリアクションも楽しみですね。新しいことをすると、みんなからの反応も新しいものになるんです。たとえその変化が結果的に後退とみなされるものであっても、僕は変化していきたいんですよ。もちろんずっと進化し続けられるのが理想ですけど、変化を求めた結果の失敗や後退ならば、長い目で見たときそれは面白いものになるとも思うんですよね。僕の勝手な要望ではあるんですけど、リスナーの方にもそういう変化を楽しんでいただけるといいなと思っています。

──SNSで“曲ができた”と投稿していましたが、久しぶりにご自身で作詞作曲をなさったのも新鮮さを求めることの一環ですか？

超学生：2019年に“気楽に自作曲を出そう”という方針で湯月凛空名義のリリースをしたんですけど、そこから時間もあいたので、ちゃんと超学生名義で責任を持って自作曲を出そうという気持ちが前々からあって。でもそうするとプレッシャーが大きくて、なかなか取り組めない日が続いて……それをやっと、この前作ったんですよね。僕はシャワーを浴びているときにしか曲が浮かんでこないので、自作曲はすべて電気代と水道代の犠牲の上で生まれています（笑）。

──（笑）。その犠牲があっても曲は作りたいと。

超学生：やっぱり自作曲は隅々まで自分の好きな音で埋められるので、オーダーメイドスーツを作るみたいでうれしいですよね。あくまで持論ですけど、完全に自分の好みにフィットしたもをほかの人が作ったものから探すのは、すごく難しいと思うんですよ。“この曲人生でいちばん好き”みたいな曲でも、隅から隅まで全部の音が好きということは、他人が作っている以上難しいというか。

──そうですね。

超学生：それを解消するためには自分で作るしかない。僕が自分でミックスをやっているのと同じ理由ですね。だから僕がクリエイターの方々とコラボレーションしたり、他の方の曲を歌わせてもらうことって、好きなものを作りたいからやっているのではなく、やりたいことだからやっているんです。


──“好きなこと”と“やりたいこと”は別物。

超学生：この曲が難しいから歌ってみたい、このクリエイターとタッグを組んだらどんなものが生まれるのか知りたいからコラボレーションをしたいというのは、やりたいことなんです。でも曲作りは完全に好み。自分の“好き”だけでやれるものって、人生において少ないんじゃないかなと思っているので、曲作りを頑張っていきたいなと考えているところです……ってこんな話をしておいて出さないままになったらダサいんですけど（笑）。

──（笑）。聴ける日を楽しみにしています。今年を振り返ってみると、メジャー1stフルアルバムのリリース、初ワンマンライブの実施、初アニメタイアップ、今回のヴィランシリーズと、メジャーデビューを果たした去年以上に盛りだくさんでしたね。

超学生：いろんなことに挑戦をする1年でしたね。同時に超学生という名を轟かすことができた年ではなかったかな、とも感じているので。来年は今年の経験を生かして、バズる曲も出て来てくれたらいいなと思うし、超学生という存在をもっともっと広めていけたらいいなと考えてます。やっぱり活動をしていて思うのは、“自分ひとりだけだとキツい”ってことで。投稿するだけだと、虚無に向かって投げてる感じなんです。みんなからの反応あってこその活動なので、どんな反応もうれしいしありがたくて。皆さん積極的に送ってきていただけると嬉しいです。

──ファンやリスナーの皆さんからのリアクションが活力になることは、以前から変わらないですね。先ほど“バズる曲も出てきてほしい”とおっしゃっていましたが、それをオリジナル曲で成し遂げられたら感動もひとしおだろうなと。

超学生：それはもう、おっしゃる通りですね。だからめちゃくちゃ頑張ります。

取材・文◎沖さやこ