【インタビュー】Rhythmic Toy World、通算100曲目の現在地に新局面と集大成「長い年月を経てここに辿り着いた」
■不確かな自信だけあったときのあの青さ
■それってやはりすごく美しい
──ではもう少し詳しく歌詞についてうかがいますが、“青が あの青があまりにも美しかったから”という歌詞をはじめ、“青”という言葉が象徴的に出てきます。昨年、京都文教中学高等学校ダンス部とコラボした「青と踊れ」、1年前にリリースした新体制後初の新曲「青炎」など、“青”がRhythmic Toy Worldのキーワードになっているようですが。
内田:そうですね。今の自分たちを知ってくれてる人は、“一連のあの青のことを唄ってるんだろうな”って思うでしょうし、それも意味合いとしてあります。その一方で今回の“青”は、僕らの若く青かったとき…技術も何もないのに、ガムシャラで、“俺ら最強”みたいな不確かな自信だけあったときのあの青さ。この年になって客観的に見たときに、それってやはりすごく美しいって思ったんですよ。
──わかります。青春ですね。
内田:人によってはそれを黒歴史って呼ぶかもしれないけど、そういう自分たちを振り返ったとき、僕らに後悔はないと思えたんです。今となってはすごく誇れるものだなって気づかせてくれた。それがすごく気持ちがいいんですよね。で、そういう気持ちを込めたギターソロがほしかったんです。歌詞と関連してギターソロに入る前のところでそれを歌ってるんですけど、ソロはどのタイミングが良いかもすごく考えました。
岸:最初はギターソロが入ってなかったんですよ。ところが、(内田)直孝から連絡があって、「どうしてもお前の熱いギターソロを聴かせてくれ」と。燃えましたね。自分的にもいいギターソロが弾けたと思います。
──この曲にギターソロは絶対あったほうがいいですよね。で、そのソロの入り口がまたエモい。“ここからソロに突入するぞ”って示すようなハーモニクスを合図にソロに入るわけですが、実音も混ぜてます?
岸:ハーモニクスとそれをエフェクト処理した音をミックスしてる感じです。実音も入ってるかもしれないけど…細かいところをよく聴いてくれてますね(笑)。
──アンサンブルはもちろんですけど、サウンドメイクにもかなりこだわってますよね。たとえば、1番Bメロのドラムは引きずるような音です。
佐藤:超低音のキックを入れたんですよ。きっちゃん(岸)の家で「こういう音色にしたい」とか話して、実はいろいろな音を入れてます。たとえば、イントロ終わりの歌に入るところ。ドラムの生音はバスドラしか鳴っていないんですけど、上に金属っぽいスネアみたいな音を重ねて、真ん中ぐらいからハイハットの実音が入ってくるようにしたり。きっちゃんが一緒に、エフェクターを駆使して音色を真剣に考えてくれたんですよ。個人的には、生音よりこっちのほうがいいんじゃないか?って思う部分は結構ありました。
内田:僕がデモを作ってたとき、DTMソフトの電子ドラムの音を入れていたんですよ。ユウスケ君が「その感じがいい」と言ってくれてたんですけど、僕としては“バンド感が少ないけど大丈夫かな?”っていう気持ちがあって。そこを2人(岸と佐藤)がすり合わせてくれたので、僕的には自分が望んでいた方向に向かってくれたという。音色ひとつ取っても、考え方が柔軟なのですごくありがたいですね。きっちゃんも「バンド感はちゃんとあったほうがいい」って悩んでたよね。
岸:作り込んだ音をあまり入れ過ぎないほうがいいとは思ってた。
──“若く青かったとき”を表現するにはバンド感が必須でしょうから。
内田:やっぱり“中二感”っていうか、少年漫画感っていうか。仲間が続々集まって最終決戦に向かう、みたいな感じがいいんですよね。「途中からベースで歌う感じを入れたい」と言ったのもまさにそれで。バンドサウンドとしても、アンサンブルとしても表現したかったことだから。
──100曲も作ってきても、中二感がほしいという(笑)。
内田:いや、そこは大事です。本当に。
──ジャケットはこれまでにないサイケデリックなテイスト。このイメージは?
内田:うちのマネージャーに描いてもらったんですけど、彼は僕らのグッズデザインもやってくれているんですよ。最初に“マーブルカラーであること”と“円であること”を伝えて。デザインラフを綺麗な線で仕上げてくれたものの、僕の中では、境目がぼやけてないと意味がなかった。なぜなら、この円の真ん中が現在だとしたら、外に行けば行くほど、気づけば人生は“縁”で出来ている“円”だったということを表したくて。そういう意味を込めているんです。
──だからこそ、色を線で分けるのではなく、グラデーション化したかったんですね。
内田:全部綺麗な線にしちゃうと思い出の美化になっちゃうから。悔しかったこと、嬉しかったこと、腹が立ったこととか、そういう思いがぐちゃぐちゃに混ざり合って現在があるし、ずっとここまで来たっていう。そういう意味を大事にデザインしてほしいってことを伝えたら、この絵を描いてくれたんです。
──では最後に、来年の結成15周年に向けて、ひと言ずつお願いします。
佐藤:僕は新参者のドラマーなので、みんなと歩んできた年月や形は全然違うんですけど、いつでもやることは変わらないと思ってます。1周年だろうが15周年だろうが100周年だろうが、今できることを全力でやる、それが僕の仕事だから。2023年11月9日から2024年11月9日まで、今と変わらず、自分のできる一番良い音楽を表現していきます。
須藤:もう15年か…って思うんです。ここまでやれてきたことに感謝ですし、向かうベクトルが同じみんなでやれていることにも日々感謝。ライブ会場へ来てくれるお客さんとの出会いや縁を大事に、これからもずっと歩み続けられればなと思います。あと、健康でいたいです(笑)。
岸:こんなに長く続けられたのはメンバーやチームのみんなが居てくれたからで。15年やってきて今初めて見えてきたものもすごく多いんです。続けてると、まだまだ知らないことがいっぱいあることに気づくこともできる。これから先も、新しいことを見つけて音楽を楽しんでいきたいと思います。
内田:「命の絵」の冒頭の歌詞にもあるんですけど、歳を取ると夢を語ることが難しくなる。勝手に良くない結果を想像して、言葉にもせず行動にも移さずっていうことが多くなってくる。そう思っていたんです、すごく。でも、何回だって夜を越えて、始めることができる。そういう意味で2023年は、自分たちのやりたいことと向き合ったし、充実した1年だった。改めてこの4人でずっと続けたいっていう思いが強くなったんです。
──15周年が楽しみですね。
内田:“15”という数字が持つパワーを借りて、来年は自分たちが生涯をかけて守っていくようなものを始めたい。今まで出会った仲間たちと一緒に、自分たち主催フェスをいつか実現したいと思っているんです。規模はまだわからないけど、そこに辿り着くまでの第一歩を15周年を迎える年に踏み出すつもりで。それについてはもうみんなと話して動き始めてもいます。2024年は新しいスタートの年にします。
取材・文◎岡本貴之
■デジタルシングル「命の絵」
STROKE RECORDS ¥250(税込)
配信リンク:https://orcd.co/inochinoe
※主要音楽配信サービスより順次配信開始
■ライブ/イベント出演情報
2023年11月29日(水) 東京・渋谷 CLUB CRAWL
w) LACCO TOWER
▼<FIVE PEACE企画 PEACEmind vol.15 Thunder Snake ATSUGI>
12月20日(水) 神奈川・Thunder Snake ATSUGI
w) FIVE PEACE / Jacob Jr. / Dot.panda(OA)
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