【ライブレポート】杏里、80年代から現代まで。スペシャルな45周年ツアー
杏里が45周年を記念したツアー<ANRI LIVE 2023 45th Anniversary Circuit of Rainbow>を開催、10月にファイナル公演を終えた。ここでは、8月19日に行われた東京・LINE CUBE SHIBUYA公演のレポートをお届けする。
◆ライブ写真
近年、アメリカではジャパニーズシティポップが再評価されているが、その先駆者のひとりでもある杏里は幼少期から洋楽に影響を受け、1977年のデビューシングル「オリビアを聴きながら」をロスでレコーディング。その後もロスで活躍するジャズ/フュージョン、A.O.R界のトップ・ミュージシャンたちとレコーディングを重ね、後にハワイで10年に7回もコンサートを行うことになった。
つねに開拓精神を忘れることがなかった杏里の楽曲が今また世代を超えてアジア諸国やアメリカで聴かれているのは、海のある風景に溶け込む洗練されたシティポップがそれだけグローバルだったからだろう。日本でリリースされたばかりのアナログEP盤『杏里 夏盤 45rpm EP』にはアメリカで特に人気のあるナンバー「Last Summer Whisper」と「Remember Summer Days」の2曲も収録されているが、1980年代の初期の曲も数多く披露されたLINE CUBE SHIBUYAでのライブは周年にふさわしいスペシャルな内容。全24曲が披露され、集まったファンから惜しみない拍手と歓声が送られた。
拍手の中、杏里はコバルトブルーの鮮やかな衣装で登場。幕開けは「最後のサーフホリデー」(1988年のヒット曲「Summer Candles」のカップリング)だ。ステップを踏みながら歌う杏里が眩しく、間奏ではスラップベースからサックスソロへと移行する展開が心地いい。続いてキラキラ光る海が目の前に広がるようなグルーヴィーなシティポップ「WINDY SUMMER」に。
「元気? 東京! 久しぶり。今日は最後までよろしくお願いします」
そう挨拶し、1982年にリリースされたシングル「Fly By Day」が届けられるとハンドクラップで盛り上がり、大歓声。角松敏生とタッグを組むようになった頃のパラダイスチューンが風を運んでくるようだ。話題となっている「Last Summer Whisper」(1982年アルバム「Heaven Beach」の収録曲)では途中で拍手が起こり、夏の黄昏時を浮かび上がらせた。そして雨音が場内に響き、アルバム『Timely!!』に収録されている切ないミドルチューンに。
何十年も歌っていない初期の曲が組み込まれているのはファンやずっとサポートしてくれたスタッフのリクエストもあってのことだとも語られた。
中盤はカホーン(Kenny Mosley)、キーボード(小倉泰司)、ギター(植田浩二)サックス(鈴木明男)の4人編成になってのアコースティックセット。長年共にステージに立っているメンバー、鈴木を「ちょっと焼けてない?」といじる場面もありつつ、「楽屋でセッションしているような、いつもの感じで行きましょうか?」と杏里の澄んだボーカルを際立たせるメローなセクションに移行した。
杏里のバラードの中でも人気が高い「砂浜」はアコースティックギターと鍵盤が繊細に絡み合うサウンドも秀逸。カホーンで始まったボサノヴァタッチの「霧雨に消えてゆく」は杏里が小倉泰司や吉元由美とコラボレートするようになったターニングポイントのアルバム『SUMMER FAREWELL』(1987年)からのナンバー。灯台や花火が夏を彩る切ないラブソングはレゲエ・ヴァージョンで届けられ、アルバム『Bi・Ki・Ni』収録の「Beach Boy in My heart」も今の杏里ならではのムーディで大人なアプローチで響かせた。
2019年に世界配信シングルとしてリリースされた「忘れられない贈りもの」も披露された。ギターの甘い調べ、鍵盤の優しい響きに乗せて、しっとりと歌った。そして空がグラデーション的に明るくなっていくように、映画の主題歌になった「ドルフィンリング」、ドラマの主題歌になり、1988年に大ヒットを記録した「Summer Candles」とウエディングソングを2曲、続けて披露。イントロからハンドクラップの軽快なポップチューン「ボーイフレンド」ではコーラスが華を添え、歌い終わっていったん、ステージを捌ける杏里に大きな拍手が沸き起こった。
メンバーはそのままステージに残り、インストゥルメンタルを演奏し、温かい拍手が送られた。ミュージシャンたちによって奏でられる杏里サウンドも含めて愛され続けていることが客席の空気感から伝わってくる。
そして南の島にスッと溶け込みそうな色の組み合わせのドレスに着替えて登場した後半戦は3曲のメドレーからスタートした。ヒットチューン「気ままにリフレクション」では最前列のファンに手を伸ばして、ステージを上手から下手へと動きながらタッチするコロナ禍明けならではの光景も。1979年にリリースされた懐かしいナンバーも歌い、アクティブに動きまわりながら笑顔を見せながら歌う姿がチャーミングだ。
「3階、元気〜?」と呼びかけ、杏里おなじみのディスコチューンでは、ダンスしながら歌う姿に客席もさらにテンションが上がり、コーラス&ダンサーの3人も前に出てきて1983年にオリコン1位の大ヒットを記録したアニソン「CAT’S EYE」では華やかなステージングが繰り広げられた。立て続けに杏里を代表するナンバーが届けられ、杏里がダンサーや楽器陣の肩に手を回して歌う場面も。本編ラストはアルバム『Bi・Ki・Ni』収録曲のナンバーで、「ありがとう。歌えます?」と希望者にマイクを向け、最後はシンガロング。夏の光が降り注ぐような開放感でライブを締めくくった。
アンコールでは真っ白なロングTシャツとダメージジーンズで登場。涼しげでスタイリッシュな着こなしは1980年代から変わらない杏里。1987年にCMソングに起用された「HAPPYENDでふられたい」を歌い、デビューシングル「オリビアを聴きながら」を伸びやかな歌声で届けた。
最後は長年、杏里を撮っているレスリー・キーがステージに呼ばれ、記念撮影。変わらないキラキラした存在感と夏の風や匂いを閉じ込めたような楽曲たちを満喫できる45周年ツアーだった。このあと杏里は、12月19日にビルボードライブ東京、12月25日にビルボードライブ大阪でクリスマススペシャルライブを行うことも決定している。
取材・文◎山本弘子
<ANRI Christmas Special LIVE>
Key:小倉泰治
Gt: 植田浩二
Ba:小松秀行
Dr: Kenny Mosley
Sax: 鈴木明男
Cho: vahoE
Cho: Dawn
Cho: Gary Adkins
▪︎ビルボードライブ東京
【開催日時】
2023年12月19日(火)
1stステージ 開場17:00 開演18:00
2ndステージ 開場20:00 開演21:00
【料金】
サービスエリア¥18,000-(クリスマス・プレート&グラスシャンパン付)
カジュアルエリア¥13,200-(グラスシャンパン付)
[お問い合せ]
ビルボードライブ東京 03-3405-1133
〒107-0052
東京都港区赤坂9丁目7番4号 東京ミッドタウン ガーデンテラス4F
▪︎ビルボードライブ大阪
【開催日時】
2023年12月25日(月)
1stステージ 開場17:00 開演18:00
2ndステージ 開場20:00 開演21:00
【料金】
サービスエリア¥18,000-(クリスマス・プレート&グラスシャンパン付)
カジュアルエリア¥13,200-(グラスシャンパン付)
[お問い合せ]
ビルボードライブ大阪 TEL: 06-6342-7722
〒530-0001
大阪市北区梅田2丁目2番22号 ハービスPLAZA ENT B2
▪︎チケット ※WEB購入のみ
Club BBL会員先行(先着順)= 10月20日(金)正午12:00より|先着(BBL)
一般予約受付開始=10月27日(金)正午12:00より|先着(BBL/ぴあ/イープラス)
◆杏里 オフィシャルサイト
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