【インタビュー】Cö shu Nie、新しいロック「Burn The Fire」で示す闘う姿勢「道標でありたい」

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■ 自分や自分の作品と向き合うことが最大のインプット

──「no future」もそうでしたけど、今回の「Burn The Fire」も、歌詞の筆致にわかりやすさがあると思うし、普遍的な言葉で聴き手に語り掛けるようなニュアンスがあるように思いました。こうして歌詞の書き方や言葉遣いが変わっていくことに対して、最初に戸惑いはありませんでしたか?

中村:最初はありました。でも、私は前々からミュージックビデオとかで自分を見たときに、自分のことを「遠い存在感だな」と思うことがあって。できる限り噓なく生きてきたことに変わりはないけど、「それがもっと伝わり切るにはどうしたらいいんだろう?」と思っていたんですよね。「私の愛が本物であることを知らしめるにはどうしたらいいんだろうか?」と。そのために、ダイレクトな言葉であることは重要だなと思ったんです。みんなが知っている、普段使う言葉でどういう表現ができるのか?を「no future」と「Bun The Fire」の2作は考えましたね。自分自身のダメな部分やしんどい部分、辛かったり苦しい部分を表現しきる、伝えきるにはどうしたらいいんだろう?ということを考えながら書いています。

──そうしたときに、聴き手との関係性が変化していっているという感覚はあるものですか?

中村:いえ、そこは前からずっと延長線上にあるものだと思います。最近、ライブでもよく喋るようになったし、「そんなこと思ってたんだ?」という感じかもしれないけど、私は普段から言わなくても思っていたし、今までは言葉にしないことに意味があると思っていたところが、最近は言葉にしたいときはするようになったし、したくないときはしていないし。最近は自分がナチュラルな状態でファンのみんなと関わることができているなと思います。でも、それができる一番の理由は、みんなのマナーがよくて、すごく愛してくれるし、愛し方をよく知っている素晴らしい人たちだからですね。私は変わらないです。私は、音に真摯に向き合うことこそが、ファンと向き合うことだと思うので。私はいい曲を出していくだけですね。

──Cö shu Nieのお客さんの品格は、先日、Zepp DiverCityでツアーファイナルを拝見したときにも感じました。

中村:こしゅらーにはどれだけ助けられているか、という感じです。嫌なことを言われたこともないし。みんなもきっと、傷ついたことがあるからわかるんだと思います。





<unbreakable summer>ファイナルの模様@Zepp DiverCity(TOKYO)(撮影:河本悠貴)


──11月からは<Underground>と題されたイベントが始まるんですよね。このイベントはどういった思いから発生したものなんですか?

中村:今まで私たちには“シーン”みたいなものがなくて。いい言い方をすると孤高の存在……「ぼっち」とも言いますが(笑)。まぁ、孤高の存在であったということにしておきますけど、そういうところから、もうちょっと地に足を付けた形でやっていきたいなと思ったんですよね。今回のイベントの会場はキャパも下げているんですけど、そのぶん自由度が高くて、色々な企画ができると思っているんです。例えば、マスタークラスというのをいつかやりたいと思っているんですけど。

──マスタークラスというのは?

中村:海外のアーティストがよくやるんですけど、自分がどうやって曲を作っているかを譜面やデータを見せながら解説するんです。聞くところによると、Cö shu Nieってリファレンスになることが多いらしくて。それなら、自分のクリエイターとしての考え方や在り方をみんなに知ってもらうのもいいなと思うし、これまで関わってくれたクリエイターの方や好きなクリエイターの方と、インスタレーションをやってみたい。いろんな企画を考えています。ライブもするんですけど、それ以外にもみんなで特別な体験をしようって。ずっと「ぼっち」なままでもいんですけど(笑)、私たちの素のままで、みんなと関わっていくことができたらいいんじゃないかなと思って。私たちには、見せたいもの、やりたいこと、共有したいもの、いっぱいあるので。

松本:実際、MVの衣装とかもすごいクリエイターの方がたくさん関わってくれていたりするので、もっとみんなに知ってもらいたいし、みんなで味わいたいなと思うよね。

中村:Cö shu Nieのシーン、Cö shu Nieのアート。そういうものを作っていけたらなと。


──最後に、音楽以外のもので、最近おふたりにとってインプットになったと感じたものや体験はありますか?

中村:音楽以外か……やっぱり、人と話すことかなぁ。私、本当に家にこもっているから。そういう意味でもLAに行ったことは大きかったんですよね。海外のアーティストと仲良くなって音を鳴らしたりもしましたし、そういう体験があったからこそ視野が広がったのもあると思います。LAに行ったとき、「私は私のままで突き進んでいけばいいんやな」という感じがすごくしたんですよね。「間違っていないんだな」って。だって、知らない土地に行って、急に2000人とか3000人くらいの人が割れんばかりの歓声を上げてくれて……。

──大きな体験ですよね。

中村「ああ、いるんだ」と思いました。みんなが待っていてくれる感じがしたし、自信に繋がった。お客さんにインタビューをしてもらう機会もあったんですけど、「インディーズの頃から好きでした」と言ってくれる人もいて、ちゃんと届いている実感がすごくあって。みんな、<Anime Expo>のチケットを買って、さらに会場に来るためのチケットも買って来てくれている。その姿を目の当たりにして、「やってきたことがちゃんと伝わっている、間違っていない」と思えたのが大きかったです。あの経験があって、より自由になれた感じがします。

松本:僕もLAは大きかったです。それに、僕が最終的に何からインプットしているかというと、やっぱり監督のデモなんですよね。監督のデモがインプットとしては一番刺激的です。贅沢な話ですけど、そこは昔から変わらないです。

中村:あと、アルバムを作るうえで、結構時間をかけていろんなことを調べたり考えたりしていたんですけど、それが段々と、自分が今まで表現してきたことを振り返ることにもなって。「自分が今まで形にしてきたことって、1本の線に繋がっているな」と思ったんです。私たちが最初に作った「迷路」という曲があるんですけど、今やろうとしていることは、「迷路」という1曲でやっていたことを、アルバムとして表現しようとしているんだなと思って。そういう意味では、自分と向き合うこと、自分の作品と向き合うことが最大のインプットになっている気がします。自分の作品と向き合うことが、自分を知ることになったというか。なんとなく書いてきたと思っていたものの意味が、点と点が線で繋がるようにして、今になってわかってくることがあって。「何故、この言葉をこのとき言ったのか?」みたいなことが、ちゃんと繋がってくる。その気づきが一番のインプットになったかもしれないです。

取材・文:天野史彬

  ◆  ◆  ◆

配信シングル「Burn The Fire」


配信日:10月18日(水)

<Cö shu Nie presents 「Underground vol.1」>

開催日:Vo.1. 2023年11月13日(月)
場所:渋谷WWW

■イベント内容
渋谷スペイン坂の地下(Underground)にあるライブハウスから、クリエイターやファンと共に独自のシーンや世界観を創り上げていこうとする試み。
今回は通常のライブのほか、「創作における秘話などを語るトークイベント」を行います。

チケット:https://coshunie.com/Underground01_ticket/

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