【インタビュー】MINMI、20周年記念アルバム『essence』が物語る挑戦の連続「希望を見ようと思っています」
20周年を迎えたMINMIからニューアルバム『essence』が届けられた。配信リリースされたシングルベストの楽曲13曲に加え、未発表の8曲を収めた本作は、レゲエ、ソカをルーツにしながら、活動を重ねるごとに進化と変化を続けてきた彼女の軌跡が刻まれている。
◆MINMI 画像 / 動画
2019年からLAに拠点を移しているMINMIに、本作『essence』を中心として、デビューから20年間の変化、そして2023年は<Freedom BAY 2023 千葉>と題して10月15日に千葉ポートパークで開催される、彼女のライフワークとも言えるフェス<FREEDOM>などについて語ってもらった。
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■アーティストとして活動を続けることは
■自分を解放していくことでもある
──20周年を記念したアルバム『essence』は、シングルベストと新曲による2枚組です。
MINMI:コロナ渦のなかで曲をけっこう作ってきたんですよね。しばらくアルバムを出していなかったので、新曲も含めて、出し惜しみせず、みなさんに聴いてもらえたらなと。タイトルに関しては、プロデューサーから「“essence=本質”はどう?」という提案があって、それがすごくピンときたんですよね。アルバムのタイトルは毎回、そのときの自分自身のテーマになるような言葉を掲げているんですが、“本質”ってすごく惹かれる言葉だなって。その後、タイトルナンバーの「essence」という曲を作ったという流れですね。
──“本質”という言葉がフィットしたのは、どうしてだと思いますか?
MINMI:歌詞を書きながら自分の感情を整理していったんですけど……コロナ渦のなかで“自分には何ができるだろう?”だったり、生き方とか働き方を見直して。ファンのみなさんとのコミュニケーションもオンラインを通して出来るようになったり、いろいろな変化があったと思うんですよ。それは私だけじゃなくて、みなさんもそうだし、社会全体が変わったのかなって。
──MINMIさんは2019年からLAに移住。クリエイティヴの面でも大きな変化があったのでは?
MINMI:そうですね。今回のアルバムにも、アメリカで出会った方々と作った曲がいくつか入っていて。「Find me」「never give a feat. Lakopo」「WATARIDORI」などがそうなんですけど、曲を作るときの発想も“これは日本にいるときにはなかったな”ということが多かったです。もともと私は洋楽が好きで、サウンドの変化も積極的に取り入れるタイプなんですけど、こっちいると聴こえてくる音楽も違うし。あと、アメリカってポップの幅が広いような気がします。カントリーっぽい曲も民謡的な曲もポップの中に入るというか。
──「Tsuki」のようなクラシック的な雰囲気の楽曲も、ポップスとして捉えている?
MINMI:はい。「Tsuki」はピアノとストリングスだけの曲で、以前だったら、もっと音を重ねていたと思うんです。そのほうがたくさんの人に楽しんでもらえるだろうなって。今はちょっと考え方が変わって、一人でしんみり聴く静かな曲があってもいいよねって思うようになりました。自分のなかのポップスの定義が広がったというか。あと、聴く人の好みに合わせるというより、“自分が好きなことを「好き」と言ってくれる人を大事にしたい”と考えるようになってきました。万人に伝わらないとしても、自分が好きと思うことを素直にやって、それを気に入ってくれる人がいるといいなって。そういう意味では、今のほうが挑戦的になれてるんじゃないかな。
──なるほど。MINMIさんは“好きなことを貫いて、自分の人生をしっかり生きながら音楽を続けている”というイメージがありますが、それはこちらの勝手な先入観で、ご自身としては“そうでもないよ”という感じなんでしょうか?
MINMI:うーん(笑)、トータルで見たら“好きなことをやっている”というタイプの人間だと捉えてもらっている気がしますけどね。とは言え、私もやっぱり日本生まれの日本育ちなので、人目や人の声を気にして生きている部分があるし、そういう葛藤は多かれ少なかれ自分にもあって。アーティストとして活動を続けるというのは、そういう自分を解放していくことでもあると思います。デビューした頃は“みんなに評価されたい。みんながいいと思う曲を書きたい”という気持ちが強くて。自分を表現することよりも、“売れたい”というのがいちばんの目的でした。
──その目的は1stシングル「The Perfect Vision」(2002年発表)のヒットで叶ったわけですね。MINMI:もちろん嬉しかったですが、今度は歌手として何をやればいいかわからなくなってしまって。チームからは同じようなヒット曲を望まれていたのですが、私の中では“それでいいのかな”という思いがあり。そこから“自分が本当に伝えたいことって何だろう?”という旅が始まったんですよね。
──なるほど。変遷とも言えます。
MINMI:デビューしてしばらくは、自然体の表現に抵抗していました。「The Perfect Vision」は“カッコいい自分を見せたい”という感じだったし、写真を撮るときも笑わず、強い女性でいなくちゃいけないと思っていて。それが変わってきたのは、3rdアルバムの『Natural』(2006年発表)のとき。タイトルの通り、もっとナチュラルでいたいと思ったし、“作った自分を見せるのってどうなの?”と思い始めて。その4年後に『MOTHER』(2010年発表)を作ったときは自分のなかに母性が芽生えていたし、優しさや平和を歌いたいという気持ちが強くて。ブランディングよりも等身大の自分を歌うほうが大事だなと思うようになったんですよね。
──アルバム『MOTHER』のジャケットは、妊娠されているときの写真ですよね。
MINMI:そうなんですよ。女性のカメラマンとデザイナーは「これでいこう!」って賛成してくれましたが、レーベルのスタッフからは「お母さんのイメージが付き過ぎるのはもったいない」と言われましたね。そういうネガティヴな意見も多かったです、当時は。「母になると数字(売上)が下がる」「あまり表に出さないほうがいい」とか。私、お腹が大きいときもフェスに出てましたからね(笑)。
──アルバム『essence』には「Single Mother」も収録。まさに等身大の生活を描いた曲ですね。
MINMI:曲を通して自分を出すって、勇気が要るんですよ。「Single Mother」はRED SPIDERプロデュースですが、彼が背中を押してくれなかったら、書けなかったと思います。周りの人たちが「シングルマザーとしての声を曲にしたほうがいいよ」と言ってくれことで、“そうだよね”と思えたというか。この曲に限らず、プロデューサーやゲストミュージシャンと一緒じゃないとできなかったことは、本当にたくさんありますね。
──RED SPIDERさん(「Gi mi di riddim feat. MINMI &ジャパニーズマゲニーズ / RED SPIDER」)、三木道三さん(「花火 feat. 三木道三」)、CHEHON(「GIFT feat. CHEHON」)さんなど、このアルバムにも数多くのミュージシャンが参加していて。コラボ、フィーチャリングの多さもMINMIさんの特徴だと思います。
MINMI:ありがたくてしょうがないです。自分が好きなことを自由にやる嬉しさもあるんですけど、誰かと一緒にやることもすごく好きで。「こうやったらほうがいいよ」とか「ここは自分の色でやりたいです」なんて言われると、グッときちゃいます(笑)。
──(笑)。他者を受け入れる姿勢も、音楽性の広さにつながっているのかも。もちろんルーツはレゲエ、ソカなんですよね?
MINMI:私の中では、“自分がやっている音楽のなかで、たまたまレゲエの側面が目立った”という感じなんです。もともとクラシックピアノを習っていて、その後、ソウル、ブラックミュージックに興味を持って。ハウスやディスコミュージックも好きで、クラブで歌い始めたときにレゲエを知り。R&Bやヒップホップのクラブでもマイクを握っていて、その頃の大阪はレゲエの勢いがすごかったです。もしR&Bが強かったらR&Bシンガーとしてデビューしていたかもしれないし、ハウスが流行っていたら、ハウスミュージックのシンガーだったかもしれないなって。
──活動を始めたときのシーンが影響していた、と。
MINMI:はい。 もちろんレゲエは大好きですけどね。何度もジャマイカに行って、レゲエのカルチャーに触れて。その影響はすごく受けていると思います。
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