【インタビュー】OGAWA RYO、最新作『egos』と創作の背景「衝動やパワーはジャンルと関係ないんです」

ポスト


スマホゲーム『Obey Me!』の楽曲を手掛け、幅広い分野の作品に携わりながらサウンドクリエイターとしても活躍しているOGAWA RYO。5曲が収録された最新作『egos』は、人間の様々なエゴを浮き彫りにしている。サウンドと歌詞のコントラストによって醸し出される多彩な刺激も大きな聴きどころだ。この独特な作風は、どのようにして生まれているのだろうか? ミュージシャンとしてのルーツ、これまでの軌跡も辿りつつ、彼の創作の背景にあるものを探った。

  ◆  ◆  ◆

■ブルーハーツを聴いて衝撃が走った

── 頂いたプロフィールによると、5歳からピアノを始めたんですね?

OGAWA RYO:はい。でも、習い事としてやっていたという感じですね。14歳くらいになるまで、音楽は自分の人生の中での大きな部分は占めていなかったです。

── 中学の吹奏楽部でバスクラリネットを吹いていたのも、部活内での担当だからなんとなく吹いていただけですか?

OGAWA:そうですね。「他に取り柄もないので吹奏楽部にでも入るか」というくらいの感じだったので(笑)。

── (笑)。そういう少年が、中2の時にパンクロックに出会ったんですよね?

OGAWA:はい。ブルーハーツを聴いて衝撃が走りまして。「ロクデナシ」を聴いた時に、当時の僕の気持ちとリンクしてしまいました。音楽に対する僕の主体性は、そこから始まったんだと思います。それまでの僕はかなり適当に生きていて、「やらされている」みたいなことが多かったんです。でもパンクを聴いてものすごいパワーを感じて、僕の細胞か何かが急に活性化されて、「自分も何かやらなきゃ」と思うようになりました。それでバンドを組んだりもしたんですけど、ロックの方向に行くのかと思いきや、そうでもなかったんです。

── バンドはどんなのをやりました?

OGAWA:友達に誘われて、ゆらゆら帝国、ザ・ハイロウズのコピーをしました。友達の影響でオールドなロックな方向にも行って、ジミ・ヘンドリックスのコピーをしたこともありましたね。

── 自分でオリジナルの曲を作りたいと思うようになったのは、いつ頃でした?

OGAWA:高2くらいの頃に「楽器が上手くなければ音楽はやっちゃいけない」と思うようになって、通訳検定士の資格取得を目指し始めたんです。その勉強の合間で家に置いてあったピアノを適当に弾くようになったのがきっかけです。それまでは譜面を見て弾いていたんですけど、適当にいじっているうちに気づいたら1曲思いついてしまって。

── そういう体験をする前は、創作よりも演奏に対する関心の方が圧倒的に大きかったということですね?

OGAWA:はい。「作曲」という種目について考えたことがなかったんですよね。作るようになってからはボイスレコーダーに曲のメモを残すようになって、1年間で680くらい貯まりました。最初はマルチトラックレコーダーを持ってスタジオに行って1人バンドみたいな形でドラム、ベースとかも弾いて多重録音していました。技術がないのでペラペラな仕上がりで(笑)。「クオリティの高いものにできる方法はないかな?」と思っていた丁度その頃に、ボーカロイドが全盛期を迎えつつあったんです。様々なボカロPさんがパソコンで曲を作っているのを知って、そこから今に繋がるものがスタートしました。

── その時点で、通訳検定士はどうなったんですか?

OGAWA:「通訳検定士ではない」となり、もう一度音楽に懸けてみることにして、音楽の専門学校に通うことにしました。入ってみたらものすごい作曲ができる人がいて鼻が折れましたが(笑)。でも、作曲は好きだったので、「絶対にすごい曲を作ってやる!」って思っていました。

── バンタンゲームアカデミーのサウンドクリエイター専攻ですよね?

OGAWA:はい。ゲームサウンドを作る専攻だったんですけど、当時から歌ものばかり作っていました。「作曲を仕事にしたいなあ」という漠然とした感じで、1年通ったくらいから「サウンドプロデュース」という方向でやっていきたいと思うようになりました。

── トクマルシューゴさんの音楽との出会いも大きかったようですね。

OGAWA:大きかったですね。曲を作りたいと思うようになったきっかけとして一番大きかったのかもしれないです。音の魔術師のように感じてしまって。「絶対に自分もこれをやらなければいけない!」って思いました。

▲EP『egos』ジャケット


── 学校を卒業した後はHauptharmonie、ホシノカオリさん、松尾優さんに楽曲提供をしたり、エンジニアとしてのお仕事もするようになったとお聞きしております。

OGAWA:はい。いわゆる裏方の仕事がほとんどでしたね。作曲の仕事だけでやっていくのは難しかったので、とにかく音に関連したことでお金を稼いでいくことに必死でした。音楽とは関係ない倉庫の仕事をしている時に学校から「音響やってみませんか?」という電話が来て、そこからいろいろな仕事に繋がっていきました。

── その経験は、今に活きているんじゃないですか?

OGAWA:はい。特に声優さんの収録、ディレクションは勉強になりました。たとえば
、「今、こういうメンタルになっているから、こうケアしてあげた方がいい」とかを考えるようになったので。それがなかったら、すごく不愛想にディレクションをする感じになっていたと思います。

── 声優さんの音楽に関しては、キャラクターソングという分野もありますけど、「キャラクターとして歌う」というのは、他のジャンルの音楽とはかなり異なる部分がありますよね。

OGAWA:そうですね。楽曲の活かし方が違いますから。「音でここを出し過ぎると邪魔してしまうから、キャラクターを活かすためにこうしよう」って、編曲の面でいろいろ考えたりします。

── キャラソンという点ですと、スマホゲーム『Obey Me!』の楽曲をたくさん手掛けていますね。

OGAWA:はい。海外の方々からのコメントとかを頂いたりもして、ありがたいですね。声優さんとキャラクターのリンクも考えながら曲を作っているんですけど、そういうのも好きなんです。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報