【インタビュー】goomiey、新体制後初のミニアルバム『Be』が物語る「ロックンロールは生活の中にあるもの」
■カッコいいと思ってもらいたいという気持ちが
■どの曲のプレイにも詰まってます
──鎌田さんのベースは「運命」に限らず、どの曲もけっこうフレーズが動いているという印象でした。さっき「ギターもやっていた」とおっしゃっていましたが、ギター経験があるからこそのベースプレイなのかなと思ったのですが。
鎌田:リードギターをやっていたので、ソロを入れたがる傾向はありますね(笑)。4曲目の「無愛敬」のベースが一番がんばった感じなんですけど、男性にもカッコいいと思ってもらえるようなガールズバンドと言うか、女性に歌詞を共感してもらえるとか、バンドマンから見てもカッコいいと思ってもらえるとか、いろいろな人から好きになってもらえるように考えました。カッコいいと思ってもらいたいという気持ちが、どの曲のプレイにも詰まってますね。
──「無愛敬」のベースはイントロから歪ませていますね?
鎌田:Cメロでちょっとテンポが落ちるパートがあるんですけど、そこ以外はずっと、今までにないくらい歪ませました。
──最後の3人のソロ回しも聴きどころです。
平山:いつもスタジオでアレンジしているんですけど、アレンジしている時に「それぞれにソロがあったらよくない?」って、その場の感じでやってみたんですよ。
▲おり (Dr)
──「運命」のミュージックビデオで平山さんはリッケンバッカーを弾いていますが、リッケンバッカーが現在のメインギターなんですか?
平山:そうです。2019年ぐらいから弾いています。
──以前はフェンダーのムスタングでしたよね?
平山:はい。自分でお金を貯めて、初めて買ったのがムスタングだったんですけど、そのムスタングの調子が悪くなっちゃって、その時、リッケンバッカーを半永久的に貸してもらったんです。ずっと弾いてみたいと思っていたんですけど、最初は、そもそも私ぐらいの背丈の人がリッケンバッカーを弾いているところってあまり見たことがなかったから、弾きこなせるのかどうかも含め、似合う人間になれるのかどうかって思ってたんですけど、最近やっと周りにも板に付いてきたねって言ってもらえるようになりました(笑)。
──なぜ、リッケンバッカーを弾いてみたいと?
平山:最初にコピーしたのがリーガルリリーの「リッケンバッカー」だったんです。ガールズバンドの入りが、私はリーガルリリーだったので、たかはしほのか(Vo, G)さんが使っているからという理由でムスタングを買ったんですけど、その後、たかはしほのかさんが初めて買ったギターがリッケンバッカーだったということを、とあるインタビューで知って、いつか絶対弾きたいと思っていたんです。完全にリスペクトですね。
▲先行デジタルシングル「運命」
──なるほど。そういう理由からだったんですね。さて、そんな「運命」に続いて、5月に配信した「ロックンロール」も音楽への思いを歌っているという意味で、新しい出発にふさわしい曲だと思いましたが、“ロックンロールを信じる君なら”と歌っていることにちなんで、3人がそれぞれに信じるロックンロールは、たとえば誰の、どの曲なのか、みなさんのバックグランドを知るという意味で聞かせてもらえないでしょうか?
おり:何だろう? いろいろなバンドが思い浮かんできますけど、私がバンドをやりたいと思ったきっかけは、中学生の時にBase Ball Bearを好きになって、「初恋」という曲を聴いたことだったんです。その時の衝撃がすごくて、そこからバンドをたくさん聴くようになりました。今、やっている音楽とはちょっと違うんですけど、自分の中にルーツとしてずっとあるのは、Base Ball Bearなんです。これまでガールズバンドをずっとやってきましたけど、女の子のドラマーみたいに思われるのがちょっとイヤだったんです。ベボベの堀之内(大介)さんってやっぱり体格からして、いかにも男の中の男ってタイプのドラマーじゃないですか。私もそういうドラマーになりたいとずっと思っていたんですよ。高校卒業後、専門学校に進学するため上京してきてから、専門学校で女の子だからこそできるプレイスタイルもあると教わって、ずっと憧れていた堀之内さんみたいなかっこいい男性の力強いドラムと、女性ならではのドラムをうまく使い分けられたらいいなというふうに思うようになりましたけど、ベボバの音楽はいまだに私が信じるロックンロールであり続けていますね。
鎌田:私はELLEGARDENの「The Autumn Song」です。大学のサークルで代々受け継がれている曲が何曲かあって、その中の1曲だったんです。合宿とか、文化祭とかで演奏すると、みんな手を上げてくれて、すごく盛り上がるんですよ。ステージから見るその景色がすごく好きで、それをずっと永遠に作れたらいいなっていうのが、バンドをずっとやりたいというところに繋がっているんです。
──平山さんは最初にコピーした曲がリーガルリリーの「リッケンバッカー」だとおっしゃっていましたが。
平山:「ロックンロール」を書いたとき、“私の中のロックンロールは生活の中にあるものだ”と考えていて。今、ぱっと思い浮かんだのは、スピッツの「運命の人」。母がスピッツが大好きで、子供の頃、車の中でよく流れていたんです。なぜ、その曲が心に残っているのかと言うと、“愛はコンビニでも買えるけれど”って歌詞が子供の頃は全然わからなかったからなんです。もちろん、今はわかるんですけど、当時は、愛はコンビニには売ってないぞ。どういうことなんだろうって。そういうちょっとした引っかかりがあると、生活の中でたまたま耳にした曲を後からちゃんと聴いてみようと思ったり、それがきっかけで好きになったりすることがあると思うんです。私はそういう音楽こそがロックンロールなんじゃないかと思ってます。
▲先行デジタルシングル「ロックンロール」
──「運命」「ロックンロール」の2曲を作った時にはミニアルバムをリリースすることを考えながら、他の曲も作り始めていたと思うのですが、曲作りを進めているとき、どんなミニアルバムにしたいと考えていましたか?
平山:曲を作っている時は、この7曲以外にも候補曲がいっぱいあって、この曲も入れたい、あの曲も入れたいというのが、3人それぞれいろいろあったんですけど、『Be』という(ミニ)アルバムになったとき、どういう曲に入っていてほしいか考えて、この7曲を選びました。
──どういう曲に入っていてほしかったんですか?
おり:舞桜ちゃんが言っていたようにgoomieyの曲が、聴く人の生活の中にあってほしいと思いました。たとえば、朝、出かける支度をしている時はこの曲とか、お昼ご飯を食べている時はこの曲とか、夜寝る前はこの曲とか、そういう場面場面で、この曲を聴いてほしいよねっていうのが3人の中にあって、今回の『Be』は1日という流れの中で、いろいろな曲がバランスよく詰められていると思います。
鎌田:「情けない日々」には“洗濯機ぐるぐる回ってる”という歌詞があるんですけど、そんなふうに日常に馴染む曲が多いと思います。
平山:景色から歌詞になることが多いんです。今、私が住んでいるところって、救急車や消防車のサイレンがよく聞こえるんですけど、夜、一人で部屋にいると、遠くからサイレンの音が聞こえてくるってことあるじゃないですか。だから、「サイレン」はそういう時に聴いてほしいとか、歌詞に“電車”が出てくるから、電車に乗っている時に聴いてほしいとか。「無愛敬」は、女の子だったら、ほんと男の子ってわかってないよねってことが保育園ぐらいからあると思うんですけど(笑)、彼氏とケンカして、私達、弱いところもあるけど、こういうことができるんだよ!わかってるの!?って思った時に聴いてほしいとか。バンドの遠征から帰ってきたとき、首都高から見た明け方の景色から思い浮かんだ「ブリーチ」は、普通に社会に出ている人達とは生活が違うんですけど、朝帰りした時に聴いてスカッとしてもらえたらうれしいとか。
──そんな7曲の中で「まんまる」はバラードと言ってもいいと思うのですが、ここまでバラード然としたバラードは、goomieyとしては初めてですよね?
平山:これまでも落ち着いた雰囲気の曲はありましたけど、ここまでしっとりしていて、深夜に聴いてほしいとか、静かな時間にゆったり聴いてほしいとか、なんなら聴きながら眠っちゃってもいいくらい気持ちで作ったのは初めてかもしれないです。
──そういう曲を作ってみたかったんですか?
平山:そうです。私、家で間接照明しかつけないんですけど、ある時、家に帰ってきて、ぱっとつけた明かりが月みたいだったんですよ。
──それで、“まんまるな月がずっと”で始まるんですね。でも、サビでは“もしも明日 月が出なくても 君に綺麗だと言いたい”と歌っています。
平山:“月が綺麗ですね”は、愛の告白の言葉って言われているじゃないですか。
──あぁ、夏目漱石が“I love you”を“月が綺麗ですね”と訳したという話ですね。
平山:はい。でも、それだと、月が綺麗な時にしか言えないじゃないですか。私はそれがイヤだったんです。好きになった人や物を好きと自分が言いたいタイミングで言いたいと思って、雲が陰って月が見えなくても、雨が降って月が見えなくても、新月で月が見えなくても、それでも月が綺麗だと言いたい。好きを好きと伝えたい。「まんまる」の歌詞には、そういう気持ちをいっぱい詰めました。
──この曲は、アカペラのコーラスも含め、繊細なアレンジも聴きどころですね。
平山:コーラスのインパクトをどんと出したいと思って、コーラスで始まって、コーラスで終わるアレンジにしてみました。最初、3声で始まって、最後は2声になるんですけど、ライブでは最後も3人で歌おうと思ってます。
──演奏面ではどんな工夫を?
おり:弾き語りのイメージをそのまま生かしたくて、ドラムはAメロのリムショットをはじめ、繊細なプレイを意識しました。静かな景色というイメージなので、空間をうまく使えたらいいなと思って、試行錯誤しながらこんな感じになりました。
──確かに「まんまる」はリズムと言うよりもフレーズっぽいドラムになっていますね。その一方で、ベースはやはりけっこう動いています。
鎌田:バラードではあるんですけど、ちょっとリズムがあると言うか、さーっと流れていってしまうのではなく、ちょっと体が揺れるようなアクセントを付けて、印象に残るようなものにしたかったんです。
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