【インタビュー】MAMA.、初O-WESTワンマン直前に語るV系への愛と破壊「どこまでも上へ。国境だって越えたい」

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2023年3月に独立事務所を設立、バンド名を大文字表記に改名し、新体制で走り出したばかりのMAMA.。“VISUAL HYBRID MUSIC”をコンセプトに掲げるとおり、同年7月に早くも完成した1stフルアルバム『ANIMISM』には、ヘヴィかつ耽美なヴィジュアル系ロックを軸に、さまざまなジャンルの要素を盛り込んだ楽曲が並んでいる。和風デジタルなインスト「KAGUYA」で幕を開け、「天命の雨」や「OMEN」などのバラード曲群で壮大な世界観を示しつつ、バンドアンサンブルではなくトラックで始まる「不幸物」「Nightmare.」や、ゴリゴリのリフが牽引する「Psycho」「GREEN HEAD MEN」まで。とにかく今の自分たちが表現したいことを詰め込んだ大ボリュームの作品だ。

◆MAMA. 画像

先人たちが積み重ねてきた“ヴィジュアル系”の音楽と美学をリスペクトしつつ、今の世代ならではの柔軟さで自由なアレンジを施す。MAMA.の音楽には、一見相反しそうな“愛情”と“破壊”が共存しているなど、まだまだ未知数の可能性を秘めた存在だ。アルバムをひっさげたツアーを終え、ファイナルの初O-WESTワンマン公演を前にした5人に、バンドの現在地と意志を語ってもらった。


▲1stフルアルバム『ANIMISM』

   ◆   ◆   ◆

■ヴィジュアル系のノリや文化を大事にしつつ
■僕たちにしかできないことをどうぶっ込むか


──2023年3月にバンド名が小文字のmama.から大文字のMAMA.になり、新体制で再始動したわけですが、皆さんとしては新しく始まったという心境なんでしょうか?

命依:そうですね。個人的には、もう新しいバンドになったくらいの気持ちでやれています。

真:独立して個々の責任が増えたことで、自分たちの意識も一段階上がった感じがします。

JiMYY:新バンドという気持ちもありつつ、ずっとやってきた歴史もあるので。今、自分たちの考えで直接バンドをより動かせるようになったことで、レベルアップというか進化した感覚ですね。

──蓮さんは、MAMA.への改名タイミングで加入されたんですよね。

蓮:はい。10代の頃から命依とは一緒に遊んでいた仲で、普通にmama.のファンだったんですよ。そこからメンバーとして声をかけてもらって、すごくいいメンバーに恵まれたなと思っています。みんな、いい人たちなので。

真:ははは! 言わされてるみたい(笑)。最初、半分遊びのノリでスタジオに入ってみたんですけど、その時から不思議と違和感がなくて、馴染んでる感じがしたんですよ。やっぱり空気感がダメだとすぐわかる。蓮ならいけるかもと思ったんです。

命依:そうそう。


▲命依(Vo)

──再始動からすぐにEP『BLACK DOG.』(2023年3月発表)、そして7月には1stアルバム『ANIMIMSM』がリリースされて。かなりのスピード感ですが、制作自体は前から行っていたんですか?

命依:いや、結構ギリギリで(笑)。新体制になって、「じゃあアルバム出そうぜ!」って張り切って動き出した感じです。活動休止中から少しずつ曲作りは進めていたんですけど、結局切羽詰まらないとやらないメンバーなので。

JiMYY:みんな、夏休みの宿題は最後の1日にやるタイプ(笑)。これまでフルアルバムを出せていなかったから、出したかったんですよね。

真:アレンジから、レコーディング、ミックス、マスタリングまで、結構JiMYYがメインでやっていたので、JiMYYのスケジュールはエグかったと思います。

JiMYY:うん、寝れない夜しかなかった(笑)。

──とにかく、まずは名刺代わりの作品を作ろうという気持ちですか。

命依:まさにそれです。作曲は、基本的に僕がメインでやっているんですけど。休止中じっとしていられなくて、ひらめきはたくさんあったんです。ヴィジュアル系って…他と比べるわけじゃないですけど、僕からすると、なんだか同じような曲が多いイメージがあるんですよね。“もっとこうすれば面白いのにな”と日頃から感じているので、そういうアイデアを形にしていくところから作っていきました。MAMA.でしかできない音楽を作っていきたいなと思っているんです。

──資料に“VISUAL HYBRID MUSIC”という言葉がありますが、自由にいろんなジャンルを混ぜていこうという発想が根底にあるんですか。

命依:そうですね。でも、ジャンル的にミクスチャーという意識はなくて。昔からの歴史のある王道ヴィジュアル系の曲調を土台にしながら、そこにいろいろ好きなジャンルを取り入れていったりするイメージですかね。ただ、実験しているというか。


──なるほど。その意志が、EP『BLACK DOG.』にはすごく反映されていますよね。攻めた楽曲が揃っていて。たとえば、タイトル曲の「BLACK DOG.」は、ヘヴィなTHEヴィジュアル系という部分もありつつ、和の音やスクラッチが入ったり、トラップビートになったり。かと思ったら、後半はきれいなギターが重なってきて。面白いアレンジだと思いました。

命依:改名する前にデモは出来ていた曲なんです。“傑作だ!”と思ったのでリリースタイミングをうかがっていて今になりました。やっぱり、この曲も含めて、EP『BLACK DOG.』が完成した時点で“こういうことがやりたいんだ”って固まってきた印象がありますね。

──その方向性は、メンバーにも共有したんですか?

JiMYY:特に言葉にはしていないですけど、曲を聴いたら、そういうことかって伝わってきました。

──原曲は命依さんが作って、JiMYYさんを中心に皆さんでアレンジするんですか?

命依:アレンジも含めて僕のほうで出来るところまでデモを作って。そこからJiMYYに渡して、細かい同期やシンセフレーズなどをいじってもらう感じですね。ほかのパートでもこだわりたい部分は僕から伝えるんですけど、 結構みんなが弾きたいものを弾いていると思います。

──そして、初のフルアルバム『ANIMISM』は、EP『BLACK DOG.』の挑戦的な曲も入りつつ、バラードから始まってバラードで終わるという意外性があって、さらに幅が広がりましたね。

命依:僕は曲順にこだわるほうで。今回バラードで始まってバラードで終わるのは…“一番のMAMA.の良さなんだろう”と再始動して考えた時に、歌モノだと思ったからなんです。メロディーが悪いバンドにはなりたくない、という気持ちがみんなに共通していて。なので、ぜひ聴いてもらいたい曲ということで、アルバムの最初と最後をバラードにしました。結果、ライブ向けの曲が少なくて困ってるんですけど(笑)。

──「天命の雨」はリード曲にもなっています。

命依:アルバム用に6/8拍子の歌モノがほしいなと思って作った曲で。最初は別の曲をリードにしようとしていたんですけど、この曲を作っているうちに自分の中でインパクトが強くなってきて、“これだな”と思ってリード曲にしました。バラードをリード曲にするのはちょっと迷いましたけど、やっぱりやるならわかりやすいほうがいいかなと。


──では改めて、今作が完成しての手応えを教えてください。

かごめ:小文字のmama.時代にはなかったものがしっかりプラスされて、さらに新メンバーの蓮の独特のノリも加わって、進化したという手応えを感じています。

──新体制で苦戦することもなく、スムーズに進められた感じ?

かごめ:うーん、ちょこちょこはありましたけど、全体的には苦戦せず、楽しくやれました。

JiMYY:僕は苦戦しかなかったです!

真:食い気味に発言きた(笑)。

JiMYY:自分たちだけで制作から納品までやったのは、今回が初めてだったんですよ。だから、“こんなにやること多いんだ!?”っていろんなことに驚きつつ、だからと言って手は抜きたくなかったので。それがひとつ形になった喜びが本当に大きいですね。

──アルバムのサウンド的な全体像をまとめ上げるのはJiMYYさんの役割だったわけですね。

JiMYY:基本的にはそうです。何かしらゴールが見えないと進めないので、全体像をイメージしながら制作していきました。イメージしたものとしては…それこそさっき命依が言った、「ヴィジュアル系は似たような曲が多くなっちゃう」みたいな話に戻るんですけど。ヴィジュアル系のノリや文化は、型ができているからこそ、似たような雰囲気の曲が生まれやすいというふうに僕は分析していて。だから、その型をいかに破壊しながら、なおかつその文化を大事にしつつ、僕たちにしかできないことをどうぶっこむか。特に1stアルバムですから、どれだけ詰め込めるかを考えて進めていきました。自信はあります。

命依:僕は音楽理論とかはわからないので、風景を想像したりしながら曲を作るんですけど。JiMYYがアレンジして完成したものを聴くと、本当にイメージどおりに仕上げてくれたなと思います。リリースしてから、普通にサブスクとかで聴いていると、人の曲みたいに感じるくらい(笑)。

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