【ライヴレポート】deadman×MUCC、22年ぶりに実現した特別で幸せな一夜
deadmanとMUCCによるツーマンライヴ<産声>が7月28日(金) 渋谷Spotify O-EASTにて開催された。到着したオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆ライヴ写真
◆ ◆ ◆
22年という歳月を経て、deadmanとMUCCが再び相まみえたこの夜。<deadman×MUCC《産声》>が行われたSpotify O-EASTへ集った観客は、何とも幸せな気分でいっぱいになったことだろう。両バンドの音楽と個性を堪能し、仲の良い5人の言葉と表情に歓喜し、普段はまず聴けない演奏に狂喜乱舞する。あっという間に過ぎた、まるで夢のような一夜の模様をお届けする。
開演前、幕の開いたステージのセンターでは、ブラックライトに照らされた光と透明なシートで出来た檻が、deadmanの登場を待っていた。フロアを埋める観客からも興奮が漂っているようだ。この夜の幸福は、この時点ですでに約束されていたのかもしれない。
▲deadman
BGMがやみ、会場が暗転。拍手に迎えられる中を静かにaieとサポートを務めるkazu、晃直が登場。闇に溶け込んだまま眞呼が揃ったところで訪れる沈黙。彼らの曲の中でも圧倒的な存在感を放つ「蟻塚」で、ライヴはスタートした。イントロで眞呼が遠吠えのようなファルセットを聞かせ、重苦しい暗黒の世界へと引きずり込まれて行く。照明はごくごく限られ、薄暗いステージから得られる情報は少ない。だからこそ聴覚が鋭敏に音に反応し、想像力を喚起される。ここまで、会場中の集中力を操ることのできるバンドはそうはいないだろう。
まさにdeadmanらしいオープニングから、「rabid dog」「lunch box」と続き、眞呼は檻の中でのたうち回り、透明のシートを破って腕を突き出し、もがき続ける。deadmanというバンドが持つ閉塞感が目の前で体現される一方、サウンドは生命力あふれるように躍動していた。
▲眞呼
この夜はライヴだけにとどまらず、「産声」をテーマに新曲を制作、スプリットシングル「産声」をリリースしたことは、会場に足を運べなかった人にとっても要注目のニュースだ。次に、その収録曲「猫とブランケット、寄り添い巡り合う産声」をプレイ。初披露でもあり、若干の緊張感も漂わせつつ、いつも以上に丁寧にメロディを届ける眞呼の歌声に観客が耳を傾ける。この夜の眞呼の歌は、観客に聴かせたいという意志をいつも以上に感じさせるような、気合いに満ちたものだった。
ここで2マンライヴならではのお楽しみ、MUCCのカヴァーを披露。選曲は、なんと「アカ」だ。表現者としての自身を確立している眞呼とaieゆえ、もともと曲が持つ個性を凌駕し、すっかり自分のものとして演奏していた。そこに、MUCCに対するリスペクトがしっかりと感じられたことがまた、両バンドのファンにとって胸アツだったのではないだろうか。
▲aie
曲が終わり、ひと際大きな拍手で迎えられた後、「今日、元気いいね」と楽しそうな眞呼の声がすっかり温まった会場に広がる。あとはここから強く熱せられていくだけ。「blood」から、立て続けに勢いのある曲で観客を煽り、冷静さを吹き飛ばした観客はヘドバンの波をつくり出し、フロアを埋め尽くす。熱く、それでいてクールにプレイに集中するaieは、同時に人間くさくもあり、そんなステージでのプレイや佇まいは唯一無二だ。
積極的にフロアとコミュニケーションを取りたがっているように見えた眞呼が、最後に「俺たちの歌を」と口にして始まったのは、「聖者の行進」。優しさと温もりが会場を包み込むように広がっていく。儚く切ない願いが込められた美しい曲に、いつしか穏やかな心持ちになっている自分に気づかされた。
▲MUCC
転換中に流れるBGMのZI:KILLをしばし懐かしく聴いているうちに、おなじみ「ホムラウタ」のSEが流れ始めた。大きな手拍子と掛け声が鳴り響く。後攻のMUCCのライヴの始まりが告げられ、フロアを興奮が渦巻いていく。そこへ登場したミヤ、YUKKE、そして逹瑯はみんな、全身真っ黒な衣装に身を包んでいる。アンプさえなく、後方にはドラムだけというシンプルなステージが新鮮だ。
そこに始まったのは、先ほどdeadmanがカヴァーした「アカ」。本家本元の演奏に、改めて両バンドの個性を実感する。もちろんこれは誉め言葉だが、逹瑯の歌は感情過多とさえ言いたいほどで、歌から滴るような感情が聴く者の心をえぐるのだろう。
▲逹瑯
「スイミン」「絶望」と観客の感情が爆発するに任せた後は、「楽しんでるかい、兄弟!」とフロアへ呼びかける。「兄弟」というのは、眞呼おなじみの言い回しだ。楽屋に戻ったaieが、MUCCファンのことを優しいと言っていたという裏話も飛び出し、楽しんでいるさまが伝わってくる。
▲YUKKE
そんなMCの後で、YUKKEのベースから始まったのは、スプリットシングルに収録されている新曲「死の産声」。誕生の瞬間を彩る産声と死を結びつける、そんな死生観は作詞を手掛けたミヤならではのものだろう。“泣いて生まれて 笑って死んでいく”という歌詞は、まさに人生そのものだ。「産声」という同じテーマでも、それぞれの価値観が反映された結果として曲として成立していることが、2曲を並べることで目の当たりにできるのがまた興味深い。
ミヤのギターから「溺れる魚」が静かに始まり、逹瑯が物語るように歌っていく。水の中で窒息する魚の悲哀とでも言おうか、文字通り苦しみに満ちた歌が胸に迫る。
▲ミヤ
そしてそのまま、deadmanの「溺れる魚」のカヴァーへ。同じタイトルの曲があることを逆手にとるように、続けて演奏するというひねくれ具合もMUCCならでは。これまで、逹瑯がさまざまな曲をカヴァーするのを耳にしてきたが、いつになく真正面から挑んだ正統的なカヴァーになっているような印象を受けた。
緊張感に満ちたイントロから、“君に会いたかったんだ”という合唱の声が響いたおなじみ「娼婦」。不穏な空気の中、ベースのスラップが響き、逹瑯が中指を立てながら観客をにらみつけて「大嫌い」が始まる。剥き出しの嫌悪感と相反するように、血沸き肉躍る掛け声と歌声が心地いい。そして最後は「蘭鋳」で荒れ狂った大団円を迎え、MUCCのライヴが終了。
大満足の本編の後は、とっておきのアンコール。Tシャツ姿で登場した5人は、すっかりリラックスムードでとりとめのないおしゃべりを繰り広げる。眞呼がキャラ変して(?)、ステージでしゃべるようになっただとか、aieとkazuが付き合っているというウソをAllenが鵜呑みにしかけただとか、22歳以下の観客がいるかを確認して「パパだ」と笑い合ったりだとか、ファンには嬉しい、貴重な一コマとなった。
▲眞呼(deadman) ・逹瑯(MUCC)
▲aie(deadman) ・ミヤ(MUCC)
アンコールで演奏されたのは、deadmanでもMUCCでもなく、BUCK-TICKの「TO-SEARCH」「さくら」「スピード」の3曲。あっちゃん好きを発揮して櫻井敦司ばりのパフォーマンスに没頭する眞呼をはじめ、バンドキッズに戻ったかのように、BUCK-TICK縛りのアンコールを完遂した。
どこまでも真剣に音楽に向き合い、どこまでも楽しくステージに立っていた5人。そんな姿を目にできたことがファンにとっては何よりも特別で幸せな時間になったのではないだろうか。また次もやりたいと口々に話していた言葉を信じて、22年も経たないうちにぜひ次の機会を企画してほしい。そのときはどんな夜になるのか、今からもう期待はふくらむ。
取材・文◎村山幸
撮影◎マツモトユウ
■セットリスト<deadman x MUCC「産声」>
■deadman
1.蟻塚
2.rabid dog
3.lunch box
4.猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声
5.in media
6.アカ ※MUCCカバー
7.blood
8.quo vadis
9.701126
9.re:make
10 聖者の行進
■MUCC
1.アカ
2.スイミン
3.絶望
4.死の産声
5.溺れる魚 ※MUCCオリジナル
6.溺れる魚 ※deadmanカバー
7.この線と空
8.娼婦
9.大嫌い
10.蘭鋳
<ENCORE>
En1.TO-SEARCH ※BUCK-TICKカバー <Vo.逹瑯/Vo.眞呼/Gt.ミヤ/Gt.aie/Ba.kazu/Dr.晁直>
En2.さくら ※BUCK-TICKカバー <Vo.逹瑯/Vo.眞呼/Gt.ミヤ/Gt.aie/Ba.YUKKE/Dr.晁直>
En3.スピード ※BUCK-TICKカバー <Vo.逹瑯/Vo.眞呼/Gt.ミヤ/Gt.aie/Ba.YUKKE&kazu/Dr.Allen>
■deadman × MUCC スプリットシングル「産声」
¥3,000 (税込)
ツーマンライヴ<deadman × MUCC「産声」>より会場先行販売
※特製B5スライダーケース仕様
※集合+各メンバーソロショットポートレート6枚付属。ポートレートを入れ替えることにより着せ替えジャケットが可能。
▼収録曲
01. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声 / deadman
02. 死の産声 / MUCC
03. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声 (Version 逹瑯)
04. 死の産声 (Version 眞呼)
05. 猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声 (Original Karaoke)
06. 死の産声 (Original Karaoke)
■配信情報
8月4日(金)よりdeadman「猫とブランケット、寄り添い巡り逢う産声」とMUCC「死の産声」の配信開始
https://deadmanmucc.lnk.to/jvKlis
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