【インタビュー】『マガツノート』チーム哀・屠所之羊、「我々ならではの音楽にまとまった」

近未来戦国×ダーク楽曲メディアミックスプロジェクト『マガツノート』。現在は、プロジェクト初のライヴハウスツアー＜マガツノート全国巡業二〇二三 荒魂決起會＞が開催中だが、この巡業は、今年4月からスタートしたボイスドラマ『戦シーズン 弐nd Battle 荒魂大祭』（通称：戦シーズン2）と連動したものになっている。

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『戦シーズン2』は、武将達が各陣営の枠を超え、「喜」「怒」「哀」「楽」をテーマにした4組のシャッフルバンドを結成。利休が代表を務める解放区最高のアーティスト集団【ORIBE】が主催する音楽フェス＜荒魂大祭＞に出演するという外伝的なストーリーとなっている。また、各バンドの楽曲は、ヴィジュアル系バンドの甘い暴力とRAZORがそれぞれ制作している。

現在、BARKSでは『戦シーズン2』に登場する全シャッフルバンドにインタビューを実施中。第3回目となる今回は、チーム哀・屠所之羊（読み：としょのひつじ）が登場してくれた。直政（Vo／CV:沢城千春）、 左馬之助（Vo／CV:大河元気）、幸村（G／CV:野島健児）、光秀（B／CV:岡本信彦）、小十郎（Dr／CV:堀江 瞬）の5名からなるこのバンドは、「100年に一度の才能」と讃えられた光秀を擁しながらも、彼の低すぎるモチベーションがバンドにとって最大の問題点。しかし、とある作戦が功を奏し、光秀も腰を上げることに。それと同時に彼による地獄のような指導が始まったのだが……その舞台裏や、甘い暴力が楽曲提供した「遺書擬き」について、そして全国ツアーの意気込みなど、幅広く聞いた。

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──屠所之羊というバンド名はどなたが決めたんですか？

光秀：知らないよ。どうせ利休じゃないの。

直政：あーいや、実はいくつか候補を渡されて、そン中からオレらで選んだんだよ。他の候補は【薄滅美】とか【ennui】とかだったっけか？

光秀：は？　何それ。初耳なんだけど。

小十郎：おや、お忘れですか？　初日に光秀様が部屋へ引き籠られる際、「君達の好きにしたら」とおっしゃられたので、その通りにしたのですが。

幸村：【屠所之羊】は『刻々と死に近づく人の命の儚さ』を表す言葉。美しいだろう？　チームテーマの”哀”に最も相応しいという話になってね。

左馬之助：楽曲にも合ってるかな～って思ったんですが……、ダメでした？

光秀：……もうどうでもいいよ、今さらだし……。



──チーム哀の楽曲「遺書擬き」は、内省的な言葉が綴られた美しくも儚くて激情的なミディアムナンバーでした。初めて聴いたときにどんな印象を持ちましたか？

直政：歌の視点になってる主役が陰気で、正直オレに歌えんのか？って戸惑ったな。オレは武将としてはいつ死んでも上等でやってるから、遺書なんざ書こうと思ったこともねぇしよ。

左馬之助：オレは……、ちょっと懐かしい気持ちになったかな。ま、若気の至り的な？　そういうのいろいろ思い出してさ。……どういう意味かって？　残念、それは秘密♪

光秀：……僕は別に。少なくとも、聴いていて頭が痛くならない曲でよかったよ。

幸村：フフフ、これは彼なりの誉め言葉だろうね。私は美しい曲だと感じたよ。遺書をモチーフにするというのは、実に興味深い。“正しい死に方”……という歌詞も、私のライフワークに通じるものもあるからね。

小十郎：難しい感情を歌った歌で、アンドロイドの私には少々難しかったですね。しかし、力不足を嘆く……という点では私も覚えがあったので、そこを起点にして徐々に解釈していきました。



──チーム哀には楽器経験者の方が多いようでしたが、練習していて大変だったところはありましたか？

直政：それを聞いてくれるか……！　ずっと、光秀のヤツに下手下手言われ続けて、心まで折れるかと思ったよ……。ゆっくりな曲ほど、歌唱力が求められるって身に染みて感じたぜ……。

──一番大変だったポイントを挙げるとなるといかがでしょう。本当は楽器がよかったとか、実はそういった要望はありましたか？

直政：一番と言われてもな……。技術どうこうってより、少しでもミスると光秀が殺気立つのが大変だったかもな。パートは勝手に決められたもんだったから、他の楽器なんて考えもしなかったけどよ……ま、どの楽器になってたとしても、光秀の厳しさは変わんなかっただろうがな……。

左馬之助：でも、光秀様の指導のおかげで随分と良くなったんじゃない？　オレは特に大変だった部分はないかな？　もともと、音楽は齧っていたからね。

幸村：私もギターの経験はあったからね、しばらく練習したらすぐに感覚は蘇ってきたよ。



──音楽経験者の左馬之助様と幸村様にお聞きしますが、左馬之助様も昔から音楽は好きで、得意だったんですか？

左馬之助：オレも光秀様と一緒に、一通りの芸事は仕込まれたんだ。音楽は特別好きってわけじゃなかったかな。っていうか、厳しく指導されたからむしろあんまり……みたいな。まあ、苦手ではなかったけどね。今回のバンド活動は自由にやれたから音楽も少し好きになれた気がするよ。

──幸村様は若い頃に手慰みで様々なことをされていて、ギターを弾いたこともあったそうですね。でも、なぜギターをやってみようと思われたのですか？

幸村：昔のことだからあまり覚えていないが……おそらく、そこにギターがあったからだろう。

──ちなみに、ギターのどんなところが好きですか？

幸村：ギターの好きなところか……そうだね、私は不協和音が好きなんだ。弾いているとたまにある、好みの不協和音に出会う瞬間。不思議と安心するよ。

──では、小十郎様はいかがでしたでしょうか。今回はドラムを担当されたわけですけども。

小十郎：私はドラムの経験はなかったので心配していたのですが、アンドロイドですので、楽譜通り正確に叩くことは簡単でした。

──その中でも、人間特有の揺らぎを表現されることに苦心されていたそうで。そちらはうまくできるようになりましたか？

小十郎：ええ。最終的には表現できたと思います。光秀様は最初私に、他の方をフォローしようとせず楽譜通りに演奏するようにと、おっしゃいました。ですが、バンドとして形になっていくと、自分達らしさの表現方法やアレンジの仕方を教えてくれたんです。結果として、我々ならではの音楽にまとまったと思います。

──光秀様は、練習していて大変だったところはありましたか？

光秀：……特にない。誰とは言わないけど、凄く感情表現が下手なヤツが居たくらい。

直政：悪かったな！！

──（苦笑）。フェスが開催されるまでの2週間はみなさんで共同生活をされていましたが、そちらはどんな感じだったのでしょうか。

直政：普段はバラバラの生活してるヤツらが集まるんだ、ストレスが溜まらねぇわけがねェよな？　これでも最初は見ない振りをしてたんだぜ？　オレには関係ねぇってな。だけどよ……、だんだん耐え切れなくなってきたんだ。……光秀の不健康な生活態度がよ！

光秀：ああ……、君うるさかったよね。足引っ張ってたくせに……。

左馬之助：でも光秀様、直政に色々言われて、生活態度直してからは体調良さそうでしたよね？　オレとしては直政が作る意外と美味しい朝食が食べられたのはラッキーだったかな。

光秀：監禁されてたときもそうだけど……、左馬之助はどっちの味方なの？

幸村：直政の健康的な生活についての講義はとても勉強になった。私も、【六道閹】に戻ったらみんなに教えようと思う。やはり、家族には健やかに生きて欲しいものだからね。

小十郎：私も、マスターの健康管理で色々と参考になりました。ARKとの戦いもあり、彼は何かと不規則な生活をしていますから。

光秀：下らない……。健康に長生きして何になるんだか……。



──フェスのステージに立ってみていかがでしたか？

幸村：ああ、ライブというのは良いものだね。あの場に集まった様々な者たち……、彼らそれぞれの“相応しい死”を想像しながら演奏したよ。とても有意義な時間だった。

小十郎：歓声の大きさに驚きましたが、それが音楽への熱量によるものだとひしひしと伝わりました。今までで一番のパフォーマンスが出来たのではないかと思います。

光秀：まあ、悪くはなかったんじゃない？　……と言っても、僕が望むレベルにはほど遠いけど。

──光秀様は昔から芸事に秀でていて、百年に一度の才能だと称賛されていたそうで。そんな文化的かつ教養の高い光秀様にとって、音楽とはどんなものですか？　好きな音楽はあったりします？

光秀：音楽なんて他の芸事と同じく、自分を表現するための、ただの道具に過ぎないよ……。好きな音楽……しいて言うなら『風で木々が揺れる音』とかじゃない……？

──な、なるほど……。この記事が公開される頃には、全国ツアー＜マガツノート全国巡業二〇二三「荒魂決起會」＞がスタートしています。チーム哀をフィーチャーした「悲哀ノ夜」は、7月23日に仙台Darwinにて開催されることになっていて、直政様と左馬之助様が出演されますが、最後にお2人からライブへの意気込みをいただければと。

直政：ただでさえ忙しいときになんでライブなんざって思ってたが、やると決まったからにはしょうがねェ！　全力で歌って、全力で客を楽しませてやるよ！

左馬之助：ライブハウスでライブだなんて、新鮮だよね。練習してきた曲をもう一度披露できるのは良いことだし、楽しんで歌うよ♪　……フフ、良い暇つぶしになるといいな～。

文◎山口哲生