【インタビュー】“横向きスタイル”のエンヤサン、「ベストアルバムで僕らのことを知ってもらった上で、また新たなところへ行ける気がしている」

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兄のY-クルーズ・エンヤがボーカル、弟のJr.TEAがトラックメイキングとギターを担当している2人組ユニット「エンヤサン」。2012年に発表したアルバム『まさかサイドカーで来るなんて』が反響を呼んで以来、着々と作品リリースを重ねてきた彼らが、ベストアルバム『THIS エンヤサン』をリリースした。これまでの活動の軌跡を辿れる14曲+新曲で構成されている本作は、「前向きでも後ろ向きでもない横向きスタイル」と自称している独特な作風を存分に感じさせてくれる。Y-クルーズ・エンヤ、Jr.TEAが、今作について語ってくれた。

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■ただかっこいい、おしゃれっていうのができない

──中高生の頃にご兄弟で曲を作り始めたんですよね?

Y-クルーズ・エンヤ:そうですね。遊びの延長でしたけど。最初はプレイステーションの『音楽ツクール』でやっていました。

──遊びの延長で始めたことが、ベストアルバムのリリースまでに至ったわけですね。

Y-クルーズ・エンヤ:「そんなに知られているわけではないのにベストアルバムってどういうこと?」という感じは否めないですけど(笑)。

──(笑)。収録されている15曲を聴いて感じたんですが、おしゃれなのかおしゃれじゃないのかわからない作風ですね。「このかっこいいサウンドに、この歌詞⁉」みたいなことがたくさんありますから。

Y-クルーズ・エンヤ:根本的にひねくれているので、ただかっこいい、おしゃれっていうのができないんですよ。ちょっと照れ隠しみたいなところがあるというか。本当はもっとおしゃれで万人受けできたら、レーベルにも迷惑をかけなかったのかなと(笑)。「売れそうだね」とかはずっと言われ続けてきて、そこにアジャストできるかどうかはテーマだったんですけど、なかなか難しいです。バットを上手く持ち替えられないような感じだよね?

Jr.TEA:うん。

Y-クルーズ・エンヤ:もはや過度の期待はしていないんですけど、打席に立たせていただけるチャンスがあるなら立ちたい、ということです。今回のベストアルバムのリリースも、そういうありがたいお話でした。


──「M●THERFUCKIN' SUMMER」などを聴いて感じたんですけど、イケイケのパリピになれない人のパーティーミュージックという感じがするのも、エンヤサンの独特なところだと思います。

Y-クルーズ・エンヤ:夏は「騒げるか、騒げないか?」っていう人間の本質が出る季節なんです。僕、昔から肌が弱くて、夏が特に苦手なので、夏を積極的に楽しめないジレンマがあるんです。「M●THERFUCKIN' SUMMER」は、そういうのがまさに出ている曲ですね。僕は学生時代はわりと目立つグループにいたので周りは結構パリピで、ちょっとチャラい時期があったのに、二十代後半からセンスが変わっていって。「本当の自分はここじゃない」って、どんどん気づくようになったんです。


──Jr.TEAさんは、夏は好きですか?

Jr.TEA:僕も夏に限らず、あまり外に行きたくないです(笑)。

Y-クルーズ・エンヤ:「M●THERFUCKIN' SUMMER」は音的には夏フェスとかで披露するのも合いそうですけど、その場を否定するような曲ですね。そういうのも僕らがあまり広まっていかない要因なのかも。つまり問題は歌詞ということ?

Jr.TEA:それもあるかもね(笑)。

──(笑)。新曲の「ホームパリィ」も、部屋に引きこもっている人のパーティーミュージックですね。

Y-クルーズ・エンヤ:コロナ禍以降の「家で遊ぼうぜ」みたいな意味合いもあるんですけど、ゲームの『DARK SOULS』に出てくる「パリィ」という攻撃を跳ね返す技とも絡めています。このゲームは何回死んでも、あるポイントからやり直せるので、僕らの立ち位置と重ねているところもあるんです。「諦めつつも行けたら行こうぜ」みたいな、ひねくれた表現にしたかったんですよね。

Jr.TEA:これはサウンド的にはシンプルに作った気がします。「乗りたいんだけど乗れない」「はじけたいけどはじけられない」みたいなニュアンスもあるというか。暗くもないけど明るくもないという感じは、どうしても出てしまいます。


──サウンドに関してはシンセや打ち込みのビートが基調にありつつ、ギターリフが効果的に使われているのも、エンヤサンの特徴だと思います。

Jr.TEA:ギターの入れ方は毎回悩むところです。トラックを作る時、「ギターがないと寂しいよね?」くらいが最近は好きです。程よいギターが打ち込みのサウンドの中にある曲にしたいんですよね。

──「肋骨から君が覗いてる」や「It's OK?(エンヤサンと MZP)」とかもそうですけど、ギターを弾く人だったら、弾きたくなるフレーズがたくさんあると思います。

Jr.TEA:「肋骨から君が覗いてる」はギターがすごく簡単です。特にアコースティックギターのパートは簡単ですよ。カポタストを2フレットにはめたら指1本で弾けるので。

Y-クルーズ・エンヤ:ライブでは僕が弾いているんですけど、とにかく簡単です。



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