【インタビュー】INKYMAP、10周年を経て新境地へ「何事も始まったら終わる。でも、俺達はそれを繰り返す」
東京のサバーバン ロックタウン・八王子を拠点とする4人組ロックバンドINKYMAPが6月7日、自身初となるセルフタイトルのアルバムをリリースした。結成11年目にして、初めてバンド名をアルバムタイトルに冠したわけだから、そこにアルバムに対するメンバー達の誇りや愛着を感じずにいられないが、いつも以上に入っていたという気合は、音圧も含めた迫力満点のサウンドからも、メロディックパンク、ハードコア、オルタナロック、ギターロックを横断する全13曲の振り幅からも窺える。結成10周年を経てもなお、“君の声が聞こえる 何かが始まる気がしている”と1曲目の「Beginning」から歌えるバンドの新境地は、メンバー自身の言葉からぜひ感じ取っていただきたい。
◆INKYMAP 動画 / 画像
今回、バンドを代表してインタビューに応えてくれたのは、Kazuma (Vo, G)とJun (G, Cho)の2人。さまざまな示唆に富んだセルフタイトルを通して、彼らが一番言いたいのは、「これさえ聴けば、今のINKYMAPのことはわかる。だから、INKYMAP初心者もとりあえずこれだけ聴いて、ライブに来てほしい」ということらしい。キャリアやリリースを重ねれば重ねるほど、「これだけ」とはなかなか言えなくなるはずだ。つまり、それだけ自信があるということだろう。INKYMAPは7月14日の千葉LOOK公演から全国各地で計16公演を開催する<BAKATEN TOUR 2023>がスタートする。
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■GROWING UPからTHE NINTH APOLLO へ
■ターニングポイントは大きくふたつ
──セルフタイトルの最新アルバム、とても聴き応えがありました。もちろん自信作だと思うのですが、リリースから1ヵ月が経って、そろそろ周囲の反応も耳に入ってきている頃だと思います。それも含め、最新アルバムについてどんな手応えがありますか?
Jun:すでにライブでも何曲かやっているんですけど、いつも以上にライブ映えするという声もあって、バンド内でも「いい感じだね」ってなってるよね?
Kazuma:そうだね。今回、これまでとはちょっと違う作り方をしているんです。去年、結成10周年を迎えたこともあって、曲作りもいつもよりも気合が入っている状態でスタートしたんですけど、そこから1年間、がっつり制作に取り組んだんです。進化したものを作りたいという気持ちが強かったので、曲のバリエーションもすごく広がったことも含め、さらに奥行きのあるアルバムになったと思います。
──気合が入っているというのは、アルバムを聴いてまず一番に感じたところでした。そんな最新アルバムについて聞かせてもらう前に、BARKS初登場なので、バンドのキャリアを簡単に振り返らせてください。結成は2012年8月だそうですが、INKYMAPはどんなふうに始まったんでしょうか?
Kazuma:元々、Junと僕が長野県上諏訪で高校生の頃からバンドをずっとやっていたんですけど、18歳の時に上京して、新たにメンバーを2人見つけたんです。
Jun:ドラムのTetsuoは専門学校が一緒で、ベースのRyosukeは僕らが高校生の頃、東京でライブをやるときに先輩が繋げてくれた東京のバンドマンの1人だったんです。その後、上京して、メンバーを探そうってなったときに連絡して。Ryosukeは元々ギター&ボーカルだったんですけど、「うちでベース弾いてよ」って半ば無理やり引き入れて(笑)、現在の4人でやるようになりました。
▲Kazuma (Vo, G)
──その後、同じメンバーでずっと活動を続け、さっきもおっしゃったように2022年に結成10周年を迎えたわけですが、10年やってきたことについてはどんな感慨がありましたか?
Jun:あっという間でした。
Kazuma:もう10年経ったんだっていう。
Jun:振り返ると、山あり谷ありだったよな?
Kazuma:でも、普通に通過していった感じです。
Jun:10周年のイベントも打ったんですけど、そこまでがっつりと振り返るっていうのはなかったですね。
Kazuma:まだまだこれからだっていう。
Jun:そうだね。前しか見てないですね。
──では、結成してからの11年の中で、ターニングポイントと言える出来事はありましたか?
Jun:大きくふたつありますね。20歳ぐらいの時にGROWING UP (ELLEGARDEN等も所属していたレーベル)に所属して、音楽で生きていきたいとメンバー全員で気持ちをひとつにしてやり始めたタイミングと、2020年にGROWING UPから現在のTHE NINTH APOLLO (My Hair is BadやHump Back、ハルカミライ等が所属していたレーベル)に移籍したタイミングという2回が大きかったと思います。
──レーベルが変わったことはバンドの活動にどんなふうに影響を与えましたか?
Kazuma:チームというか、関わる人によって、やり方って全然違うんですよ。今、THE NINTH APOLLOでは好きなようにやらせてもらっているんですけど、GROWING UPでは細かいところまでしっかり突き詰めることの大切さを教わりました。
──その経験が今、自由にできる環境の中で生きてきているわけですね。
Jun:音楽性の部分でもすごく生きていると思います。曲作りに関してもそうですし、フレーズ1個1個もそうですし、GROWING UPにいる頃は音楽的なインプットがいろいろ多かったですね。いろいろなジャンルの音楽を教えてもらって、自分たちでもいろいろな音楽を聴くようになったことで、音楽的に深くなれたと思います。音楽的に難しいこともやるようになったんですけど、THE NINTH APOLLOに入ってから、そこをいったん崩すことによって、オリジナリティがすごく出てきたと思ってます。
▲Jun (G, Cho)
──その延長上にあるのが今回のアルバムだと。ここからはアルバムについて訊かせてください。さっきおっしゃっていましたが、なぜ、今回、これまで以上に気合が入っていたんでしょうか?
Kazuma:僕ら、けっこうアルバムをリリースしているんですけど、リリースするからには絶対、その時、自分でも最高だと思えるものを作りたいからです。それに加えて、10周年を機に、さらなるステージを目指そうってなった時に、やっぱり中途半端なものはリリースできないと思いました。だから、曲作りの段階から今までとは考え方を変えてやってみたんです。曲作りに真剣に取り組みながら、崩せるところは崩す。そのバランスを、うまく取れるようになったということもあるんですけど、曲を作る段階からさらなるステージに行くためにという思いが強かったですね。
──曲作りを始めた時は、さらなるステージを目指すことはもちろん、どんな思いや考えのもと、曲を作っていったんでしょうか?
Kazuma:ちょっと前まで、苦しめば苦しむほど、いい曲ができるという感覚でいたんですけど、最近、曲作りは呼吸するみたいにやってもいいんじゃないか?って考えが変わってきたんです。だから、その時に思ったことを、ボンっと表現してもいいし、むしろそのほうが人間らしいと思うようになって。まずそういうふうに作りたいと思ったのと、僕はけっこうこだわりが強くある人間なんですけど、周りの意見をちゃんと聞けるようになりました(笑)。曲を作っているのは僕なんですけど、1人でやっているわけじゃないから、周りの人の意見を聞きながら、それをおもしろがって作っていこうというところからスタートしたんです。自分だけが、いいと言ってちゃダメなんだ。みんながいいと言わないとダメだなっていう。
Jun:そこは変わったよね。1年掛けた制作期間の中でレコーディングは何回かやっているんですけど、そのたびに「こういう曲が欲しい」とか「こういうことを曲にしたいよね」とか「こういうフレーズで、明るい方向で」とか、そういうミーティングをけっこう細かくやりながら作っていったんです。それは新しかったですね。
▲アルバム『INKYMAP』
──そういう曲の作り方は、いかがでしたか?
Kazuma:楽しかったです。昔は、「だったら、おまえが作ればいいじゃん」って言ってたんですけど(笑)。
Jun:「100%作れよ」って言ってたね(笑)。
Kazuma:作りたいものがあるんだったら、本人が作ったほうが絶対いいと思ってたので、作ればいいじゃんってなってたんですけど、そういうところもおもしろがってできるようになってきました。中にはJunが持ってきたフレーズから作っていった曲もあるんですよ。
Jun:「Easy Easy」はそうだよね。
Kazuma:ギターのリフからできたもんね。
Jun「Beginning」のようにオケだけ作って、そこに歌詞とメロディを付けてもらった曲もありますね。“コード進行はこれで、ドラムのフレーズはこんな感じで”というふうに作って、みんなに渡して、スタジオで合わせて、またディスカッションしてみたいな感じで曲にしていきました。「星月夜」は、けっこう前からあったんですけど、メロディだけ生かして、今回、オケを作り直したんですよ。
Kazuma:メロディはいいのに、とずっと思ってたんです。
Jun:「93」も俺が作ったギターフレーズにメロディを乗せてもらって、歌詞の内容は2人で話し合いながら、かっちゃん(Kazuma)の家で作ったもんね。
──「93」の93はおふたりが生まれた年ですよね?
Kazuma:そうです。この曲は同じ1993年生まれの友達のことを歌ってるんです。
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