【インタビュー】Cö shu Nie、<何もしたくない>と歌う「no future」に色濃い人間味「救いや安心に繋がるんじゃないか」

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すでに来秋にメジャー3枚目となるアルバムのリリースを発表しているロックバンド、Cö shu Nieがニューシングル「no future」を配信リリースした。昨年9月に配信リリースされたローファイR&B「夢をみせて」からは約9ヶ月ぶりとなる新曲は、生演奏によるヒッポホップのビートをベースにグランジやパンクの要素を加えたバンドサウンドで、「何もしたくない」という日常のダルさを歌ったオルタナティブロックとなっている。バンドのクリエイティヴを担うヴォーカルでマルチプレイヤーの中村未来が「アルバムのテーマに向けての1枚目のカード」と語る新曲に至るまでの過程を聞いた。

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■1公演やるたびに、ライブへの欲がすごく高まっていった

──少し前になりますが、新しいフェーズに入る前の話からお伺いできますか? 昨年3月に「心に光を灯す」をテーマにしたメジャー2枚目のアルバム『Flos Ex Machina』をリリースして、4月から6月にかけては全国11都市をめぐるツアーを開催しました。アルバムの曲を実際にお客さんの前で演奏したことで何を感じたのかというところから始めたいなと思います。

松本駿介:あのときはまだ声出したらだめだったんだけど、一応やっとやっと廻れたみたいな状況でした。

中村未来:そうそう。わ、懐かしい。今、改めて、聞いていただいて、そのときの感情を一気に思い出しました。やっぱりライブでみんなと顔を突き合わせることはすごく特別なので、私達がアルバムに込めた思いもあったけど、むしろ、みんなからもらったものが大きくて、次の活力にすごくなりましたね。終わった瞬間に、もっとライブしたいと思ったし、次の作品のこともずっと考えてました。

松本:ツアーを廻ってて、1公演やるたびに、ライブへの欲がすごく高まっていった。

中村:もうすぐ終わってしまう、寂しいって。

松本:こんなに楽しいのに、っていうのは特に思ったツアーでもあったから、ライブしたいなっていう気持ちがあったよね。

──次の作品に向けてはどんなことを考えてましたか。

中村:ライブをやっちゃうと、もっとバンドっぽいものを作りたい、バンドサウンドで音楽を作っていきたいなって思うんですよね。だから、新曲は生音にフォーカスしてて。私達はロックバンドとしてやってきて、そこにまた立ち返るような作品を作りたいなっていう強い気持ちが沸き上がってきました。

松本:今、結構、ライブができてるんですよね。フェスにもちょこちょこ出させていただいていて。ちゃんと行動に移せていて嬉しいです。やっぱりライブをすると、来てくれる方の顔もよく見えるし、声出しもOKになってるから、余計にあのときの感じは間違いじゃなかったなって思う。また一緒に進めてる感じがありますね。

──そのあと、去年の9月に配信シングル「夢をみせて」をリリースしましたよね。前アルバムの後の新曲としては、第1弾があのローファイチルヒップホップだったわけですが。

中村:いろんな曲を書いたんですよ。もっとバンドサウンドっぽいものとか、ハイテンポなもの、リズムの複雑なやつ、ノリのいいものも書いたけれど、周りの方が「私の声がいい」と言ってくれて。最終的に「声の特徴がよく出て、歌が伝わるものを出してみよう」っていうことになって、あの曲になりました。

松本:ライブでも声が一番届くっていうのは感じましたし、だからこそ、声の届くものっていうのは意思疎通してて。これはみんな、監督(中村)の声にメロメロなっちゃうなと感じましたし、だからこそ、ベースのアプローチもしっかりと声を生かせるようにっていうのは考えてましたね。

中村:あの曲に関しては、めちゃくちゃバンドっぽいものとの振り幅を作ろうとも思って。声を生かすっていうことに焦点を絞っていたので、音数の少なさと空間の広さみたいなところを意識して作りました。

──歌詞はどんなイメージですか。アルバムに収録されていたピアノバラード「miracle」で母性が溢れてたので、この「夢をみせて」で産んだのかな? と錯覚してしまいました。

中村:あははは。産んじゃいましたか? 産んでないですけどね。

松本:「miracle」は優しいニュアンスでしたよね。

中村:「miracle」や「夢をみせて」は私の得意分野でもあって。自分でやってて、すごく楽しいんですよね。ライブでやると緊張感が漂って、すごくシーンとして。歌ってて、自分が全ての空間を掴んでるような気持ちになるんですよ。ああいう曲がすごく好きだから、「miracle」のようなっていう意識はありましたね。

──でも、別れの曲なんですよね。

松本:悲しいですよね。

中村:いつかは終わってしまうみたいなことをどっかで書いちゃうんですよね。どうしようもない別れって感じですね。どう考えても終わってるけど、惰性で続いてることってみんなもあると思うんですね。それに対しての決別。でも、決別っていうのは、次のスタート地点に立つってことだから。スタート地点に立つ前段階の一番エネルギーを使う決断みたいなところを書くことが多いですね。すごい昔の曲だけど、「アマヤドリ」も別れててもまだ、踏ん切りがついてないみたいな状態。もう一度会って、そのときの「これは本当にもう終わってるんだな」っていう本当の心の決別みたいなものを書いてて。「夢をみせて」も新しいスタート地点に立つっていうことを書いてるので、この登場人物も別れの後は、ダラダラはしてないはずです。

──何よりMVが衝撃的だったんですが。

中村:驚きましたよね(笑)。

──驚きました! 意外な場面もあったので。



中村:あのMVは、監督さんの脚本でやりたいなと思ったので、テーマとムードの提示をして、後は全部お任せしたんですよ。なので確かに戸惑う部分もあったのですが、これはこれでチャレンジして良かったと思ってます。監督のYUKARIさんとの信頼関係があるからこそ、やってみようと思えた感じですね。

──抵抗なく受け入れられましたか。

中村:それは、私がどういうこうよりも作品が一番ですし、曲がストレートに伝わるのであればいいんです。

松本:僕は出なくてよかったと思いました(笑)。ただ、衝撃的ではあったし、皆さん驚かれたとは思うんですけど、直接的な表現だけじゃなくて、例えば相手の足に乗ったり、そういう絶妙な表現もあったし、あの曲を表すにはぴったりのMVになったんじゃないかなって、思ってました。

──前回のアルバムのジャケやMVが異世界のようなインダストリアルで幻想的なアートだったので、それとは違う生身感がありましたよね。

中村:そうですね。前のファンタジー感みたいなところから、すごく距離を詰めたものを作りたいっていうところはオーダーでありました。そのオーダーにYUKARIさんが応えてくださって、ああいう形になりました。あと、カメラマンの方が元々、私達のファンでいてくれて、すごく気合が入ってて。映像的にもびっくりするぐらい綺麗になったなと思いました。やっぱりそういう気持ちみたいなものが入ってると嬉しくなって、作品としてもいいものになりますよね。YUKARIさんもかなり根詰めて作ってくださったんで、シーンのリクエストに対しても、応えたいなという思いでいましたね。

──最後、光の中でピアノを弾いてるシーンで終わります。

中村:あれは、終わってからの心の状態ですね。Cö shu Nieでは“諦め”や“虚無”みたいなものが表現のどこかに入っていて、どうしようもないことへの諦めみたいなところを表現したのが、ただただ鼻歌を歌いながらピアノを弾くというシーン。私にとってはすごく日常のことなので、そういう日常の場面を入れたって感じですね。あの場面にはすごくこだわっていて、わざわざ別のスタジオで撮ってくださって。

松本:何となくの空っぽな感じ、悲しい感じは、あの鼻歌を聞いるだけで感じますよね。すごく喪失感があるというか。

中村:常に空っぽな感じなんですよね。空洞が開いてるような感じというか。ツアーのMCでもずっと言ってたんですよ。Cö shu Nieのライブを見に来てくれてる人にも、多かれ少なかれ、空洞みたいなものがあって、そこの中身をやり取りしてるような深みのある、濃いライブがしたいなって思っていて。

──まだうまく言葉にはできないですけど、空洞を抱えた人たち同士を音楽で繋げていくのが、Cö shu Nieのテーマのようにも感じてます。そして、年が明けて、2023年4月からインディーズ盤の音源を3ヶ月連続で配信しました。どうして、今、このタイミングだったんですか。

中村:初心に返るということかな。ふと、聴き直したときに、やっぱり根源なんだなって思いましたね。今、やってることにも通ずるものがある。心の芯の部分で叫んでることってやっぱ変わらない部分もあるなと感じたし、その始まりみたいなものをみんなと共有することで、信頼に繋がるというか。今やってることへのスタート地点が見えるっていうのは、すごくいいことなんじゃないかなと思って決めました。

松本:ライブでやる曲もたくさんあって。なかなか入手しづらいっていう声もあったんで、配信であれば基本的にみんなが聞ける状態にはなるし、これから先、ライブやっていきたいと思うのと、ツアーも決まりましたし、生のCö shu Nieをより楽しめるようになったらいいなと思ってました。

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