【インタビュー】THE BEAT GARDEN、アルバム『Bell』が運ぶ幸せ「ひとつひとつに出会って一歩ずつ進んでいく」
■wacciの橋口さんに書いてもらった「あかり」
■みんなを惹き込んでくれるパワーがある
──REIさんはどの曲が印象深いですか?
REI:「夏の三角関係」は、僕がメロディーを書かせてもらったんですけど、夏にリリースするということで、“横ノリ感と夏感”がテーマとしてありつつ。ただ、僕は空元気な音楽はあまり好みじゃなくて、明るい中にも哀愁感があるものが好きなんです。エレクトリックピアノのサウンドで、それを上手く表現できたら、という気持ちでメロディーを作り始めました。“三角関係”というテーマはその後、曲を詰めていく過程で出来たもので、さっきUさんが言ったように、まずは「夏のドライヴソングを作りたいね」という話が出発点でした。
U:REIが作ったメロディーが、一発で覚えられるサビがあって本当にカッコよかったんです。だけど、こんなに切ない歌詞を書いてしまって、申し訳ないという(笑)。REIも言ったように、単に明るいだけではなくて哀愁が漂っているので、そこに呼ばれた歌詞でもあると思う。実は、楽しい感じの歌詞も書いていたんですけど、しっくりこなくて書き直したんですよね。…歌詞は僕の実体験です。
──それは切ない…。
U:残念ながら上手くいかなかったですね(笑)。夏の恋って実らないことが多いのは、なぜなんでしょうね。夏ならではのイベントがそうさせるのかな。
▲REI
──10代の頃のあるある話みたいな感じですよね。男女のグループ内で全員が片想いをしていて、両想いは1組もないみたいな。
U:まさに、そういう感じでした(笑)。
──そういう苦い想いを経験して、みんな大人になっていくんでしょうね。歌詞は切ないですが、歌がウェットではないところも絶妙で、結果、爽やかな雰囲気になっていますよね。
REI:それはすごく嬉しいです。
U:ディレクションも、あまり悲しく歌わないように、気持ちよく聴いてもらえることを大事しましたね。
──さすがです。Uさんの印象深い曲も教えていただけますか?
U:wacciの橋口さんに書いてもらった「あかり」がすごく好きで、歌うたびに“いい曲だなー”と思うんですよ。リリースイベントで披露させていただいたんですけど、みんながこの曲の世界にしっかり誘われるというか。このメロディーと歌詞を歌えば、大げさに気持ちを込めたりしなくても、それだけでみんなを惹き込んでくれるパワーがあるんです。
──「あかり」は、R&Bが香るJ-POPというアレンジの落としどころも光っています。
U:そうですね。もともとは生ギター1本の弾き語りの状態でデータが送られてきて、それがカッコいいトラックに合うというのは、すごいことですよね。真の良質なポップソングというのは、そういうものなんだろうなと思います。メロディーがよくて、歌謡曲だけど全然演歌っぽくない。僕らが歌ってもシックリくるんです。
▲U
──たとえば、洋楽っぽい「High Again」もすごくカッコいいです。ロックチューンがアルバムの幅を広げていますね。
U:これは僕を中心にメロディーを作らせてもらったもので。以前僕は、リンキンパークとかのコピーバンドをやっていたので、ロックな曲を作るのがすごく楽しいんです。ただ、THE BEAT GARDENがJ-POPの方向に歩んでいく中で、こういう曲をシングルカットするのは難しいというか、メインには成り得ないんですよね。そういう意味では、「Start Over」みたいな曲を作るのもアリかなと思ってた自分もいたんですけど、狙ってしまっている時点で、それは違うというか。であれば、もともと僕らがやってきたエレクトリックダンスロックをもう一度ここでやりたい、という気持ちになって作った曲が「High Again」です。
REI:「Start Over」から僕らのことを初めて知ってくださった方が、アルバム『Bell』を聴いたときに、「High Again」は少し毛色が違って感じられるかもしれない。だけど、僕らの過去曲を遡っていただくと、今まで培ってきたもの、そのときに自分たちが表現していた音楽、届けたいメッセージを理解してもらえると思うんです。インディーズ時代の「Sky Drive」(2016年2月発表)は、「High Again」とはまた違ったテイストなんですけど、原点であるエレクトリックダンスロックをテーマに制作がスタートしていて、いい形に落とし込むことができた楽曲のひとつです。
MASATO:「High Again」は、“あのアーティストのあの曲”みたいなテーマではなく、「Sky Drive」の進化系を作ろうというところから始まっていて、自分たち自身をリファレンスにすることってあまりないと思うんです。つまり、アルバム収録曲のバリエーションを豊富にしようとして作った曲ではない。僕らはそれぞれが得意な曲調があって、それを伸ばしてきた結果が今の状態であり、『Bell』にはそれが詰まっている。だから、今回のアルバムは、“THE BEAT GARDENというジャンル”なんだという気がしています。
──さらに言うと、ファンク香る素材が、打ち込み感を押し出して透明感のある雰囲気に仕上げられた「ROMANCE」もオリジナリティが高いです。
U:これは、2021年冬のシングルリリース時、「冬のラブソングを作ろう」って言ってたのにREIが反則して(笑)。ファンキーなダンスミュージックを持ってきたんですよ、それも2曲(笑)。僕とMASATOはちゃんとバラードを作ってきたんですよ。
MASATO:そうそう、テーマに沿ったものを(笑)。
U:REIのルール違反です(笑)。最初の段階ではもっとファンキーだったんですけど、やっぱりREIのメロディーにはすごく“泣き”の部分があって。サビに苦しみのある歌詞を乗せたらいいラブソングになるかも、っていうところから育てた曲ですね。
REI:「ROMANCE」は、'80sとか'90sサウンドをひとつ形にしたいという僕の個人的な気持ちがあって。それを、冬のラブソングに落とし込むことができたら面白いんじゃないか、という着想だったんです。だから今考えると、最初のデモトラックは、もう少し歌謡曲に寄せていたかもしれないですね。楽曲アレンジは、トラックメーカーのESME MORIさんと初めてご一緒させていただいたんですけど、僕は“いつかコラボしたいトラックメーカー一覧”みたいなメモを作っていて、ずっと前からESMEさんの名前を記入していたんです。結果、より洗練されたダンサブルなサウンドになりましたね。
MASATO:僕はJ-POPで育ったので'80年代とか'90年代の日本のR&B……たとえば、中西保志さんや米倉利紀さんとかをめちゃくちゃ聴いてきているんです。ただ、単にあのトレンディーな時代感に落とし込むより、僕らみたいに爽やか……まぁ見た目だけですけど(笑)、爽やかっぽい青年たちが歌ってもフィットするトレンディー感がある気がしていたんですね。その温度感に「ROMANCE」は着地させることができたと思います。
U:「ROMANCE」の歌詞は、これも10代男子のあるあるな感じだと思うんですけど、どうです?
──はい。両思いであることは分かっているけど、なかなか一線を越えられない若い男性は多い気がします。
U:ですよね。僕らは正直なところ、全くモテなくはないんですけど、皆さんが思っている以上にモテない。それがTHE BEAT GARDENです(笑)。3人のうちの誰かが断トツに伊達男なわけでもなく、恋愛の温度感も結構似ているんです。それって、歌詞を書くときにも意識していることで。100%相手の気持ちがないというのは嘘っぽい……もちろんそういう恋愛もあったりしますけど、気があるようなないような状態が多いんです。わりと自然に描いたのが「ROMANCE」の歌詞ですね。
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