【インタビュー】川崎鷹也、アルバム『ぬくもり』完成「あなたに向けて曲を書いてきました」

■人生は思い通りにいかない
■だからこそ人生は面白い

──そんなふうにリアリティのある物語や、映画等からインスパイアを受けて制作された楽曲が収録されたアルバムは、川崎さんの人間性が存分に曲に反映された「This is 人生」で締めくくられます。

川崎：今作で唯一の一発録りで、しかもマイクはSHUREのSM58です（笑）。

──レコーディングではコンデンサーマイクを使用されることが多いですが、あえてダイナミックマイクをセレクトしたのは、やはりライブ感を意識したからですか？

川崎：そう。本当にライブ感のある音が録れましたね。たとえば、生きているとうまくいかないことだらけだし、予想通りにこれまで歩んできたことなんて一度もない。でもだからこそ面白くて、それこそが人生だな……ということを、子どもが泣いている姿を見て思ったんです。“今、この子はめっちゃ人生を謳歌している。すっごい顔して全力で泣くことも人生だ”と思って、それを曲にしたんです。だからこの曲を聴いてくれた人にも、“そんなに重く考えなくていいんだ”と感じてもらえたらうれしいですね。


──“うまくいかないのが人生だ”と歌ってもらえるのは、すごく励みになります。マイナスなことはプラスなことよりもついつい気にしてしまいがちですから。

川崎：悩んだことや苦しいことが自分にもたくさんあったけど、今振り返ってみると“それほどでもないな”と思うことが多いんですよね。今、ものすごくつらい気持ちを抱えている人も、この楽曲を通して、何年後かに“そんなに重く考えなくていいんだ”って思える日が来るかなと、少しでもそう思ってくれたらいいですね。

──でも嫌味を言うと、川崎さんはブレイクして、今は音楽以外にも活躍なさっていたりと恵まれているから、「“THIS IS 人生 うまくいかないな”という歌詞を川崎さんが歌う？」とちょっと首を傾げてしまいます（笑）。

川崎：でも、歌手を志した18歳の僕の未来予想図だと、20歳で日本一のスーパースターになってるはずだったので（笑）。20歳でスーパースターどころか、フリーターでしたからね。自分が思い描いていた未来予想図に全然届いていないし、今もそれは変わってないかな。もちろん今、すごく楽しいですし、いろんなことにチャレンジさせてもらっていてすごくありがたいですけど、満足することはこの先もないだろうし。“思い通りに行かない人生だ”って、僕はたぶん一生言い続けてるんじゃないかな。だからこそ人生は面白い。もっといい歌が歌いたいし、いろいろな仕事をやってみたい。僕は一生満足することはないし、もし満足したらたぶん音楽を辞めると思います。

──より高みを目指して。

川崎：そうですね。現状維持は衰退だと思っているので、常に前を上を見続けて…だからしんどいんですけどね。でもそれが楽しいんですよ（笑）。これからも自分自身を更新し続けていきたいです。今回のアルバムもアレンジャーさんのおかげで自分にないアイデアや自分にない世界をたくさん見せていただいたし、今作の制作を通して“やっぱり音楽って面白いな。全然知らないことがまだまだたくさんあるな”と思ったんです。チームみんなで同じ方向を向いて必死にアルバムを作ることができたし、僕自身もたくさん学びがあった。得るものがすごく多い制作でしたね。この経験を次のステップに活かしていきたいです。

取材・文◎沖さやこ





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