【インタビュー】GLASGOW、2nd EPに求めた積極果敢な変化「これこそが今のロックなんだよって」
胸を焦がすメロディをファルセットも交えながら歌いあげるハイトーンボイスと煌めきをまとったギターサウンド、そして熱量とテクニックを兼ね備えたドラムに支えられたソリッドなバンドアンサンブル。その魅力が歓迎され、インディーズシーンでじわじわと注目を集めてきたGLASGOWにとって、2023年は飛躍の1年になりそうだ。
◆GLASGOW 画像 / 動画
そんなことを予感させるのが、彼らにとって初の全国流通盤となる2nd EP『FOOLISH AS THEY MAY SEEM.』だ (これまでの作品はタワーレコードのみの流通)。同EPのレコ発ワンマンライブを成功させたばかりのアラタニ(Vo, G)、藤本栄太(G)、長谷川翔(Dr)に話を訊いたところ、ひとつ前の作品にあたる1stミニアルバム『twilight films』からの2年の間に、バンドが自ら積極的に求めた変化が同EPには捉えられているという。伸び盛りと言えるバンドが迎えた、決して小さいとは言えない転機を、音源からはもちろん、インタビューを通してメンバー自身の言葉からも追体験できたのは、ライター冥利、いや、リスナー冥利に尽きる貴重な経験になったと思う。ちなみにGLASGOWというバンド名は、「イギリスのグラスゴーには普通の人がカッコいい音楽をやっているバンドが多いから」という理由から付けたそうだ。
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■多くの人にすごく意識が向いた
■バンドが大きく舵を切った作品
──4月14日に下北沢LIVE HAUSで開催した<レコ発ワンマンライブ>はソールドアウトになったそうですね。
アラタニ:はい。ありがたいことにおかげさまで。
──ライブの手応えはいかがでしたか?
長谷川:とても良かったです。PAさんもこちらで入れさせてもらう乗り込みという形で、ドラムテックの方にも入っていただいて、万全を期して臨んだんですよ。イヤモニも使ったんですけど、それも思っていた以上にやりやすくて。バンドとしてしっかりまとまっていく中で、ちゃんと曲が届いていることもお客さんの反応から実感しつつ、パンパンの状態でできたっていうのは、すごくいいステップアップに繋がったと思います。
アラタニ:今回はリリースライブをその1本だけに絞ったんですよ。それはこれからのGLASGOWという意味で一発目の大事なライブと位置づけたからなんですけど、そういうライブをしっかりソールドアウトできたことがうれしい、というのがまずあります。それに加え、ワンマンということで、僕らだけを観に来たお客さんに向けて、これまでの曲だったり、今回リリースした曲だったりをしっかり鳴らせたのは、長谷川も言ったとおり、次のステップに進めるようなライブになったんじゃないかと思っています。
藤本:GLASGOWのことが好きな人達が100人近く集まると、こういう反応になるんだって初めて観られたんですよ。それがすごく新鮮でした。
▲2nd EP『FOOLISH AS THEY MAY SEEM.』
──2nd EP『FOOLISH AS THEY MAY SEEM.』収録の6曲もすべて披露したようですね?
アラタニ:もちろんです。今回のEPの曲は、すでにライブで何度も演奏している曲も入っているし、レコーディングが終わる直前に出来た曲もあるし、ベストアルバムってわけではないんですけど、本当に今の我々を詰め込んだ作品になっているんですよ。
──6曲の中には、その日、初披露した曲もあったんですか?
アラタニ:いえ、EPに入っている曲は前に何度かやったことがあります。
──では、お客さんも知っている曲ばかりで。
アラタニ:でも、お客さんもEPの6曲をやるとわかって来場していたと思うんですよ。そういうところでは、鳴らし方も以前に比べてちょっと変わったのかなという気はしています。たとえば、「vvaves」はサビの自分のハイトーンの歌から始まるんですけど、リリースする前は新曲感と言うか、新鮮な気持ちで演奏していたんです。だけど、今回はリリース後のワンマンなので、お客さんが音源として聴いていた歌のまま、歌詞がちゃんと聴き取れるというところも含め、ちゃんと歌えるかなってところはすごく意識しました。
藤本:エゴサーチすると、これまでは「音がデカすぎて、最高!」みたいなお客さんが多くて、それはそれでよかったんですけど、今回のEPは多くの人にすごく意識が向いた作品だったので。だからイヤモニの件もそうなんですけど、歌が抜ける音作りや、それに合わせたライブの運び方を考えたんですよ。ギターのフィードバックを、深いリバーブを掛けてゴオォォォーっと鳴らすみたいな見せ方から、バンドが大きく舵を切った作品ではあるので、ライブにもそれが色濃く出たのかなと思います。
──なるほど。今のお話から、GLASGOWが音にすごくこだわっていることが伝わってきました。
藤本:そうですね。こだわりすぎてもよくないっていうこともわかった上でのこだわりではあると思います。多くの人に届けたいと思ったら、やっぱり歌だと思うので、そこと共存できる、いい音っていうものに初めてと言ってもいいくらい向き合って、鳴らしていたのかなとは思います。
▲アラタニ(Vo, G)
──そんなGLASGOWはどんなふうに始まったのか、というところも聞かせてください。プロフィールには2018年9月に活動を開始とありましたが、この3人はどんなふうに集まったのでしょうか?
アラタニ:元々は藤本と僕が高校からの同級生だったんですよ。ただ、その頃はバンドをやるなんて全く考えてなくて、大学を卒業する間際ぐらいまで、2人ともただただ音楽が好きで、一緒にライブを観に行っていたんです。
──そんな2人がバンドを始めようと思ったきっかけが気になります(笑)。
アラタニ:取材のたびにお話ししていることではあるんですけど、実は僕が失恋をしまして(笑)。すごく寂しかったんですよ。それで、藤本に「この心の穴を埋めてくれ」と頼んだら、「じゃあ海に行こう」とおしゃれなことを言い出しまして。誘われるまま海に行って、沈んでいく夕日を眺めながら、お酒を飲んでいたら、「バンドやろうぜ」と藤本が言ったので、「おぉ。じゃあ、やるか!」って、ほんとそこから始まったんですよ(笑)。
──その時、アラタニさんと藤本さんは、すでにギターを弾いていたんですか?
アラタニ:僕はまったく弾いてなかったですけど、藤本はちょっと弾いてたよね?
藤本:エレキギターでコードを弾くぐらいでしたけど、なんか「やってみようか」ってことになったんですよ。
アラタニ:僕はその直後にギターを買って、ろくにコードも知らないまま、コピーもせずに最初からオリジナルを作ったんですけど、始めた時はただただ遊んでる感覚でした。そこから、自分達で良いと思える曲ができて、「ライブでもやってみたいよね」って話になり。最初は別のドラムがいたんですけど、そのドラムが抜けることになったとき、当時、藤本と別のバンドで活動していた長谷川に声を掛けて、GLASGOWに来てもらったんです。
──2018年9月の活動開始というのは、どのタイミングのことですか?
藤本:初めてライブをやった時ですね。曲は2017年ぐらいから出来てたんですけど、何をするでもなく、ただただあっただけで(笑)。それを、いわゆるディストロって言うんですかね。ネット上でまだインディーズでもない人達を扱ってくれるレーベルがあって、そこに送ったら、デモを全国通販に乗せてもらえて、そこのイベントで初めてライブをやることになって、そこからようやく動き出したって感じです。
──初心者から始めて、1年ちょっとでそこまで行くってすごくないですか?
藤本:でも、酷かったとは思います。
長谷川:僕はそのライブを観に行ったんですけど、“初ライブだな”ってめっちゃ思いました(笑)。
藤本:それもあってか、良くない考え方なんですけど、UKとかUSのインディバンドって下手でもカッコいいみたいなところがあるじゃないですか。だったら、インディ精神じゃないですけど、そういう音像にしたいと思いながらやってきて。ちょっとずつできるようになったり、いろいろな人が関わってくれるようになったりしてきて、さっきの話に戻るんですけど、音もちょっと見つめ直しながらやっている状況なんです。
──長谷川さんはGLASGOWに加わったとき、バンド歴はどれくらいあったんですか?
長谷川:僕は大学生の時からずっと軽音サークルに入っていて、コピバンもやっていたし、自分でもバンドをやりたいと思って、ネットのメン募でバンドを組んで。GLASGOWに入るまでに、たぶん7〜8バンドぐらい組んでは解散、組んでは解散してを繰り返してました。その中で、2018年9月の初ライブ直前に藤本とイベント<BAYCAMP>を観に行ったとき、藤本から「GLASGOWっていう、違うバンドをやり始めた」と聞かされ、その時、YouTubeに上がったばかりの「youth」って曲を聴かせてもらったんです。それがめちゃめちゃ良くて、これまでやってきたバンドの中で一番いいと思って。その後、縁があって入ることになりました。
──バンド歴のある長谷川さんから見て、当時の2人の演奏技術は物足りなくなかったですか?
長谷川:藤本とは、すでに2年ぐらい別のバンドを一緒にやっていたので、素晴らしいギターを弾くってことはわかってたんですよ。彼の作るリフは、そのバンドでも目立っていたから。それを最大限に生かせるバンドを彼自身が始めたらいいんじゃないかと僕もちょっと思ってて、「youth」を聴いたとき、“最高じゃん”ってなりました。アラタニのことは初ライブを観るまで、まったくわからなかったですけど、ライブを観たとき、ここまでハイトーンが出るボーカリストに出会ったことがそれまでなかったので、けっこう衝撃でしたね。あの時の音楽シーンにも合っていたというところでも、“これはいいぞ”って可能性を感じました。
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