【スロー・アンダースロー/リーガルリリー海の短編連載】第3回「毛布」

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そのプラネタリウムはカビ臭くて、柔らかくて、少しだけ痒かった。
一緒に足で持ち上げると、虫に食われた穴から光が貫通して星が降っているように見える。
赤く腫れた肌に星が点々と浮かんだ。君の身体は宇宙みたいに綺麗なのになあ。


光の穴に目を凝らすと、外では相変わらず怪物が暴れている。
真っ赤な顔してどっちゃん、がっちゃん。テレビの音がうるさくて、うるさくてうるさくてよかった。
僕たちはこれ以上怪物を怒らせないようにそっと息をした。地球から持って来た限りある酸素を分け合うように。
僕の耳を温かい手が包むから、コーって血の流れる音がする。お腹の中の音がする。
「しってる?みんな宇宙の塵の中から生まれたんだよ」
こんな時にいたずらっぽく笑うもんだから、どうしようもない気持ちになった。

「毛布の穴ふえたね。このまま何億年も経ったら食べ尽くされて無くなっちゃうのかな?」
「そうかもね。」
「いなくならないでよ。」
「わかってる。」


リーガルリリー 海

スリーピースバンド、リーガルリリーのベース。独創的な歌詞とバンドアレンジ、そして衝動的なライブパフォーマンスが特徴。国内のみならず、カナダ、アメリカ、香港、中国といった、海外でのグローバルなライブ活動も行う。2月1日に新曲「60W」を配信リリース、4月にはライブハウスツアー『街の星』を実施して、7月2日はバンド初の日比谷野外音楽堂公演を行う。

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