【インタビュー】JIRO(GLAY)、61stシングル発売「コロナ禍が無ければ絶対に生まれなかった」
GLAYが2月15日にリリースする、2023年第一弾にして両A面シングルとなる「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」。今回インタビューに応じてくれたのは「THE GHOST」を作曲したJIROである。シンセベースと生のベースがシンクロし、スリリングなビートを繰り出すイントロ数小節を聴いただけで、GLAYの新機軸に驚くことだろう。
◆JIRO 撮り下ろし写真
コロナ禍で生まれた空白の時間を活かし、ロックに限らずR&B、ディスコミュージックなどに触れベーシストとしての探求を深めてきたJIROは、GLAYの音楽性の幅を更に押し広げる楽曲を誕生させた。この実験的な冒険作を絶賛し、3月2日からスタートするロングツアー<HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY->のシンボル曲として抜擢したリーダーTAKUROの“攻め”の姿勢にも、GLAYというバンドが長きにわたり活躍し、愛され続けている秘訣がある気がしてならない。
今回はシングルに収録されている4曲についての制作秘話、ベーシストとしてのJIROの心の現在地、更にはツアーへの意気込みについて、たっぷりと語ってもらった。
◆ ◆ ◆
■近年世界的に流行っているような音楽に興味を持ち始めて
■「THE GHOST」は、その中から生まれた曲
──1月に配信された『カタカナ禁止飲み』(※YouTubeチャンネル『HISASHI TV』の特別企画で、3年連続配信の人気コンテンツ)、最高でした(笑)。デビュー30周年を目前に控えたベテラン・ロックバンドの皆さんがコタツでトークを繰り広げるなんて……癒されましたし、奇跡だと思います。
JIRO:僕はファンの人から「もっとしゃべろ!」と言われるんですけど、しゃべる隙がないっていう(笑)。
──TAKUROさんのトークが圧倒的に多いですもんね(笑)。では早速ですが、2月15日リリースのシングル「HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-」について伺います。JIROさん作曲、TAKUROさん作詞の「THE GHOST」は、GLAYの新機軸を感じさせるR&B調のナンバー。完成した今、手応えはいかがですか?
JIRO:音源がラジオとかでようやく解禁になって、ファンの人たちの評判はいいですね。
──JIROさんが得意とされてきた、いわゆるロックな音楽性とはまた別の扉が開いた、新たな試みですよね。どのような経緯で生まれた曲なのでしょうか?
JIRO:コロナ(の時代)になってから、やっぱり仕事がすごく減って。最初の年(2020年)は、個人的に“機材に詳しくなろう”と思って。例えば、今まではしてこなかったような、自宅でもハイクオリティーでちゃんと録音できる環境を整えようとしたり、あとは、ベース以外の楽器を練習したり。
──空白になってしまった期間を、音楽家としての深化に活かしたのですね。
JIRO:例えば、シンセベースを練習するために鍵盤をやってみよう、とか。実際にやってみたもののベースのほうが早いな、と思って辞めてしまったんですけども。そのうちに、YouTubeなどの動画サイトで、モータウンだとか、自分に馴染みのない海外のいろいろなベース動画を見つけては、見様見真似で練習するようになったんです。そうするうちに多田尚人さんという日本のスタジオミュージシャンの方のYouTube動画に出会って、その方のプレイとか、ベースに対する愛情に感銘を受けて。多田さんはコロナ以降、レッスン動画だとかいろいろな映像をたくさん配信されていたから、それを観ながら練習し始めたら僕もベースを弾くのが楽しくて止まらなくなって。その感動を人に話していたら、「本人に会ってみたらいいんじゃない?」という話になったんですよ。飲んでいた勢いもあったから、マネージャーに「この方と連絡取ってみたいんだけど」と伝えたらアポイントが取れたんです。
──行動が早いですね!
JIRO:それで一緒に飲めることになって、すぐに仲良くなったんですね。そこから始まって、モータウン系もそうですけど、他にも最近のR&Bだとかいろいろと「JIROさん、このベースたぶん好きだと思いますよ」とか情報をいただく中で、近年世界的に流行っているような音楽に興味を持ち始めて。「THE GHOST」は、その中から生まれた曲だと思います。
──JIROさんのレギュラー・ラジオ番組『Buggy Crash Night』(FM802)などで、デュア・リパの『Future Nostalgia』にインスパイアされたと発信されていました。ああいったディスコミュージックの現代風再解釈と、「THE GHOST」には相通じるものを感じます。
JIRO:あのアルバムは僕の中での練習バイブルで、本当によく聴いていましたね。ほぼ全曲ベース的に面白いフレーズのオンパレードなんです。最近のつくりとしてはシンセベースが多い中で、わりとあのアルバムは生ベースが使われていて、フレーズ的には取っ付きにくくはないんですよ。僕の中では、頑張れば弾けるというレベルで、「難し過ぎてもうお手上げだな」という感じじゃないところがまたちょうど良くて。あとは、リゾの『ABOUT DAMN TIME』とか。あの辺のディスコっぽい感じのフレーズも、弾いていても聴いていても楽しいし。あの辺りの影響をかなり受けているんじゃないかな?と思います。
──推察ですが、以前のJIROさんであれば「俺はこの音楽が好きだけど、GLAYに持ち込もうとは思わない」という線引きがあったのではないか?と思うんです。でも今回は、GLAYの新曲として提案されていて、JIROさんの心境の変化を感じるのですが、いかがでしょうか?
JIRO:ロックのほうが、もしかしたら反映させづらいかもしれないですよね。例えば今流行っているロックバンドがいたとして、「これ、めっちゃくちゃカッコいいな!」と思ったからといって、それにインスパイアされた曲をGLAYでつくるのはすごく勇気が要ると思う。でも、今聴いている音楽はロックとは別ジャンルで、だからこそ反映させられるのかも。例えば、一つのコード進行で展開していったりするんですよ。イントロ、Aメロ、サビ……まぁ海外ではだいたいBメロは無いので、そうやってワンコードで全部繰り返していく感じだったり。あと、音数は少ないけどすごくリッチなサウンドだったり。今回はそういうコード展開やサウンドの構造に影響を受けたかもしれないです。「THE GHOST」も、Aメロとサビのコードは同じなんですけど、リズムで変化を付けて少し差別化していて。そういうのは今のJ-POPの中にも無いし、そこをメンバーも面白がってくれたんじゃないかな?という気がします。
──TAKUROさんがこの曲に寄せる大きな期待は、ツアータイトル(<HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY->)を付けて作詞なさった、という経緯からも伝わってきます。そのことに関する重みをJIROさんはお感じになりますか?
JIRO:以前「MUSIC LIFE」という僕の曲がツアータイトルになった例もあったので、そこに関しての重みとか責任感みたいなものは、あまり意識はしていないです。まずこの曲を最初に聴かせたのはTERUだったんですよ。仮歌を歌ってもらうために「今までにない変な曲で実験作だから、僕も自信ないんだけど」という感じで。「そういうテンションで申し訳ないんだけど、歌を入れてもらっていいかな?」とお願いしたら、TERUも「ちょっと変わった曲だね」という反応を見せてくれていて。ただ、歌い方をどうするかは最初戸惑っていて「これってどっちに振ったらいいかな?」と訊いてきたんです。今までのGLAYのラインで行くか、もしくは、ビリー・アイリッシュの「bad guy」みたいなダウナーな感じの歌い方にするか。「俺はそっち(※「bad guy」の歌い方)のほうが合うと思うんだよね~」とTERUは言っていたんですけど、僕は「お任せします」と伝えて。結局音源は“GLAYのTERU”になったんですけどね。TERUに歌ってもらったデモをTAKUROに聴いてもらう時点でも、僕の中ではまだこの曲がいいのかどうか?の判断がついていなくて。過去につくった曲で新たにTERUに仮歌を入れてもらった曲もあったので、それと併せて2曲をTAKUROにプレゼンしたんですよ。「俺的にはどっちでもいいので、もしどっちかを気に入って歌詞書いてもらえるんだったら、お願いします」みたいな感じでしたね。
──実験作だとJIROさんが考えていた曲のほうを「是非これで行こう!」と、TAKUROさんが選んだということですよね。
JIRO:そうですね、面白がってくれて。
──その決断に心意気を感じますよね。この曲のTERUさんは、GLAYらしくはあるんですが、セクシーな低音が新鮮です。歌のレコーディングは函館のスタジオで行われたと伺っていますけれど、JIROさんはどのようなディレクションをされたのですか?
JIRO:サビにコーラスを重ねようとしていたところに、ベーシックなベースラインとは別に、ハイポジションのちょっとパーカッシヴなベースが入るんですけど。それが、サビのメロディーに対しての返しになっているので、「そこにコーラスを入れるとちょっと違和感あるかも」と言ったぐらいで、それ以外は全然。TERUの自由に歌ってもらった、という感じです。
──HISASHIさんが、TAKUROさんに「G1(※GLAYの4人を称してG4)グランプリはJIROだね」と、この曲を絶賛されていたと聞きました。
JIRO:それをTAKUROから聞いて、「あ、そうなんだ?」と思いました。いや、うれしいですよ、本当に。なかなか面と向かって言ってくることもないですけどね。逆もそうで、HISASHIと僕に関してはあまり「いいよ!」みたいな感想を、お互いに述べないので(笑)。
──HISASHIさんのギターリフはエキゾティックな響きで、インパクトがあります。JIROさんはどう聴かれましたか?
JIRO:もう、さすがだなと思いました。僕からは何のリクエストもしていないですけど。TAKUROが「THE GHOST」という曲タイトルを決めたのが先で、それを受けてのギターアプローチだとHISASHIは言っていて。「俺なりのゴースト感なんだよね~」というのをグループLINEに書いていたので、「あ、なるほど」と思いましたね。
──シンセベースが導入されていて、JIROさんの生ベースとどう共存するのか、ライブでの再現や魅せ方が楽しみです。
JIRO:リハーサルにまだ入っていないので(※取材は1月下旬)、どうなるのかまだ分からないんですよね。シンセベースとダブルで、生ベースでも同じフレーズを弾いていて、パーカッシヴなベースを更にダビングしてもいるから。どの比率でシンセベースと生ベースを出すのか?というのも、これから決めていく感じですね。
◆インタビュー(2)へ
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