【ライブレポート】TOMOO、「いい旅でした。そして旅は続いていきます」
TOMOO初の全国ワンマンツアー<TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 “BEAT”>は、その名の通り多種多様な“BEAT”を体現する、クリエイティヴかつエンタテインメント性に富んだライヴとなった。ファイナルのZepp DiverCity(TOKYO)でも、好奇心に突き動かされるように、ポジティヴに新しい挑戦をしていく彼女の姿を見ることができた。
◆ライブ写真
場内が暗転すると、自然に囲まれた町で車に揺られる男性のムービーが流れる。昨年8月のワンマンライヴ<TOMOO one-man live “Estuary” at LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)>時に放映されたものと通ずる世界観に包み込まれたかと思いきや、その映像が終わるや否やサポートバンドメンバーの3人が演奏を開始。瞬時にフロアもクラップを重ね、その音色に導かれるようにTOMOOがステージへ登場した。
彼女は「ツアーファイナルいくよ!」と呼び掛けるとバンドの演奏にピアノを重ね、ポップナンバー「オセロ」でこの日の幕を開ける。曲中ではハンドマイクに切り替え、ステージの端まで乗り出し晴れやかな表情を見せた。「酔ひもせす」では観客の目を見ながら手を左右に振ると観客も同じように手を振り、バンドメンバーも隙あらばクラップを促し、プレイしながらダンスに興じるなど、序盤2曲からホットな空気が立ち込める。これまでの4公演で培ったグルーヴがあってこその、勢いはじけるロケットスタートだ。
すし詰めの会場に感無量の表情を浮かべながらも、「マスクもあって大変だろうからつらくなったら声を掛けて」と観客を慮る。だが続いての「らしくもなくたっていいでしょう」では「こういうことはあんまりしたことがないんですけど……。ツアータイトルの<BEAT>と掛けて、クラップで一緒に遊んでください」と言い、なかなか高難易度のクラップを要求。やるからには妥協せずにとことん極めるところ、最後に観客に向けて盛大に拍手を送るところがとても彼女らしくて頬が緩んだ。
バンドメンバーとともに「レモン」と「地下鉄モグラロード」でゆったりとあたたかい空間を作り上げると、TOMOOが単身ステージに残り弾き語りスタイルに。「心臓のビートのように、耳をすませないと聴こえない音を聴くことをイメージして選曲した」と前置きし、「Mellow」や「夢はさめても」など未音源化楽曲を含む3曲を披露する。鍵盤を打つ指の音、呼吸から生まれる声の揺らぎなど、彼女の心の奥にある飾らない、だが気高い場所に触れるようなセクションだった。
バンドメンバーに加えストリングス隊が登場し、8人編成で4曲を演奏する。「17」で切なくもあたたかいサウンドスケープで包み込み、「スーパースター」はストリングスが加わることでより凛としたムードを高める。ポップナンバー「Friday」ではプレイヤーひとりひとりがより存在感を強めることでグルーヴを育んでいった。
そしてこの日のクライマックスは「Cinderella」と言ってもいいだろう。もともと強い思いの込められた楽曲であることは容易に想像はつくが、ツアーで育んだバンドの結束あっての演奏と、緩急のあるレーザー演出が加わることで、よりその崇高さにも磨きがかかる。燃え上がるような気魄と記憶に圧倒され、自然と涙腺が緩んでいった。同曲演奏後、彼女は「早く聴いてもらいたいと思っていた。この曲を書き始めた5年前には、表現するには何もかもが足りなくて、でも(完成させられたのが)今で良かった。こうして聴いてもらえるのがすごくうれしい」と話していた。彼女の五感や心に記憶されている感情や景色が、心にダイレクトに届いたのだと思う。ライヴでしか感じ得ない、非常に神秘的な体験だった。
「今までやってこなかったことをやってみようとこのツアーを回ってきたんですけど、ツアーファイナルにして初めてを1個加えたいと思います。タオルを使って遊びましょう!」と呼び掛けると、バンドメンバーにホーン隊を加えた8人編成で「HONEY BOY」、続いて「今からみんなにはポップコーンの種になってもらいます。フロアはフライパンです。とにかくこの時間、はじけてください!」と告げ「POP’N ROLL MUSIC」と畳みかける。バンドメンバーのソロ回しなども入った躍動的なサウンドで魅了すると、そのテンションのまま「恋する10秒」で本編を駆け抜けた。
アンコールでバンドにフルート3名を加え「ロマンスをこえよう」でロマンチックな空気で包み込むと、ツアータイトルが“ハートビート”から着想を得たことを語り、「一人ひとり違うばらばらな人間でも、みんな同じ心臓という楽器を持っていると思うと、お互いが可愛らしく見えませんか?」と問いかける。前回のワンマンライヴについてインタビューでも「観客から熱を受け取って、自分がそれを歌で返すような感覚だった」と語っていたが、そこに全員の共通点を見出したからこそ、さらに彼女はオープンな気持ちで新たな挑戦をすることができたのだろう。
メンバーとともに「Ginger」を爽快感たっぷりに演奏すると、再びTOMOOがひとりでステージに残る。「いい旅でした。そして旅は続いていきます。影と日向を繰り返すとしても、お互いの明日からの幸せを願いつつ、最後にもう1曲だけ歌わせてください」と告げると、全国ツアーのエピローグとして彼女が選んだのは弾き語りの「グッドラック」。歌詞に綴られた決意の一つひとつが、音色とともに手紙のように届いた。
暗転すると、オープニングムービーの続きが流れた。白昼だった景色は夕方、夜を経て朝へ。劇中に登場したひまわり畑と花火の音にはどういう意味が込められているのだろうか、と物思いに耽っていると、モニターに6月に東阪NHKホールワンマン<TOMOO LIVE TOUR 2023 “Walk on the Keys”>の告知が映し出された。また意味深なタイトルである。そして「グッドラック」の“ほんとうは どこにだって行けること/うそだなんて思わないで どうか見ててよ”“変わっても 変わらなくても 掴んでも 立ちどまっても/輝いて よい旅を”という歌詞が再び頭によぎった。
初ツアーという新しい領域に足を踏み入れた彼女の旅はこの先も続いていく。そして心臓という同じ楽器を持った我々一人ひとり、それが音を鳴らし続ける日まで旅は終わらない。彼女が立ち去ったステージを観ながら、彼女の旅路をこれからも眺めていたいと願った。
取材・文◎沖さやこ
写真◎Kana Tarumi
セットリスト
2.酔ひもせず
3.What’s Up
4.らしくもなくたっていいでしょう
5.レモン
6.地下鉄モグラロード
7.Mellow
8.ベーコンエピ
9.夢はさめても
10.17
11.スーパースター
12.Friday
13.Cinderella
14.HONEY BOY
15.POP’N ROLL MUSIC
16.恋する10秒
en1.ロマンスをこえよう
en2.Ginger
en3.グッドラック
<TOMOO LIVE TOUR 2023 "Walk on the Keys">
2023年6月3日(土)NHK大阪ホール
2023年6月28日(水)東京・NHKホール
▼チケット料金
指定席 6,500円(税込)
▼チケット販売
オフィシャル最速先行
1/15(日) 20:00 〜 1/22(日)23:59
[受付URL]https://l-tike.com/st1/tomoo
◆TOMOO オフィシャルサイト
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