【コラム】Spotify「RADAR: Early Noise」に選出の TOMOO。彼女の魅力とは

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Spotifyが毎年1月に、その年に飛躍が期待される注目の国内新進アーティストを選出しサポートするプログラム「RADAR: Early Noise」。これまでにあいみょん、Official髭男dism、King Gnu、藤井 風、Vaundyほか様々なアーティストが同プログラムを通じて多くのリスナーを獲得し、国民的なアーティストとして羽ばたいた。

その2023年版に選出されたアーティストのうちの1組が、シンガーソングライターのTOMOOだ。6歳からピアノを弾き始め、中学に入りオリジナル曲の制作を開始した彼女は、2016年に初作品となる1stミニアルバム『Wanna V』をリリースする。

2021年8月にデジタルリリースされた「Ginger」がOfficial髭男dismの藤原 聡、幾田りら、Vaundyなど様々なアーティストから絶賛されたことをきっかけに注目を集め、翌年8月にデジタルシングル「オセロ」でメジャーデビューを果たした。同時期に開催したLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)のワンマンライブはソールドアウトし、約1900人の観客を魅了したことも記憶に新しい。動画メディアの台頭によりアーティストが世の中に知られる方法は“バズを記録すること”が定説となりつつあるが、彼女は地道に一つひとつの音楽活動と他者からの評価を積み重ねてきた実力派である。



評価されるポイントが多岐に渡ることも、彼女を語るうえで非常に重要だ。恐らく彼女の音楽を愛する人に彼女のいちばんの魅力を尋ねたとしたら、おそらく一人ひとりで異なる返答があるだろう。ゆえにこの原稿を書きながらも、一体どこを切り口にするべきなのだろうかと悩ましいが、彼女を語るうえで重要なテーマをひとつ挙げるならば、聴く人を選ばない純度の高さではないだろうか。

まず彼女が扱うピアノは時代を超えて多くの人の心を掴み、生活にも馴染み深いだけでなくクラシックなど格式高い場でも活躍する楽器である。その音に導かれるように生まれる彼女の楽曲はどれも非常に鮮やかで、かつ奥行きを感じさせる。カラフルで繊細なコードワークと、打楽器的な力強さを兼ね揃えたプレイは、おのずと彼女の呼吸に音符、つまりメロディと歌詞をつけていく。

やわらかくて落ち着いた声が辿るそれらは、一つひとつの単語に色を灯すように連なり、歌となる。早口で刺激的な譜割りでもなければ、目が覚めるほどのハイトーンボイスで突き抜けるわけでもないが、それは裏を返すと堅苦しさを微塵も感じさせないということだ。圧迫感のないヴォーカルは蝶が飛んでいくような細やかな機微と躍動感に溢れ、我々に安心とときめきを与えてくれる。



さらに彼女を語るうえでは、“大胆”もキーワードである。ピアノ弾き語りアーティストならではのアプローチとも言える迫真のセンチメンタルバラード「泳げない」と、底抜けにキャッチーな「POP'N ROLL MUSIC」を初作品に収録しているところにもその要素が表れているが、彼女は自分の音楽性に制限を設けていない。それは幼少期から常に、映画音楽やその当時に流行していたJ-POP、洋楽など様々な音楽に積極的に触れてきたことも影響しているかもしれない。2019年にYouTube上に演奏動画をアップし、その2年後に配信リリースされた「Ginger」も、それまでの彼女にはないアプローチだった。“こんなことをやってみたい”という純粋な心に突き動かされるからこそ、音楽に対して大胆になれるのだろう。



彼女の表現は純度が高いがゆえに、様々な要素がない交ぜになっていることもポイント。2022年10月にリリースされたメジャー2ndデジタルシングル「17」リリース時のインタビューでも、彼女はソングライティングについて“比喩、実際の景色と自分の目を通して見た景色、心象風景、内面の抽象的な話が混ざっているというか、境目がない”と語っていた。“葛藤”がテーマのメジャー3rdデジタルシングル「Cinderella」もそれが顕著で、彼女の胸のうちや記憶がコラージュのように切り貼りされているようだ。具体的にどんな感情を歌っているのかは定かではない。だからこそ彼女の音楽は、我々の感性へとダイレクトに響いてくるのだろう。



人間が心地よさを感じるのは、複数のものが絶妙なバランスを保ったときだと聞いたことがある。TOMOOの多彩な楽曲群もおしなべてそれに当てはまると言っていい。物悲しさのなかに光があり、明るいムードが立ち込めながらもどこか仄暗くもあり、切ないけれど芯には強さが輝く。受け手のモードによって楽曲の捉え方が変わるのも興味深い。白黒割り切れない複雑な心境を、噓なく自分の呼吸で奏でていく彼女の音楽は、聴き手の抱えてきた行き場のない気持ちの拠り所にもなるだろうし、未知なる世界へと連れ出す力も秘めている。彼女の楽曲を聴いたときに得られる、よく知っている気がするのになんだか新鮮な感覚は、優しく包まれるような幸福感にも近い。それが彼女流のポップなのだろう。

昨年までに培った経験を年またぎ全国ツアー<TOMOO 1st LIVE TOUR 2022-2023 "BEAT">で育み、「Cinderella」で2023年の幕を開けるTOMOO。着実に活動を積み重ねてきた彼女は、これからも無垢な好奇心でもって、見てきた景色や感じてきた思いを楽曲へと昇華していくだろう。際限のない彼女のクリエイティヴィティは、息を呑むほどに美しい。

文◎沖さやこ

<TOMOO LIVE TOUR 2023 "Walk on the Keys">

[公演日時・会場]
2023年6月3日(土)NHK大阪ホール
2023年6月28日(水)東京・NHKホール

▼チケット料金
指定席 6,500円(税込)

▼チケット販売
オフィシャル最速先行
1/15(日) 20:00 〜 1/22(日)23:59
[受付URL]https://l-tike.com/st1/tomoo

◆TOMOO オフィシャルサイト
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