【インタビュー】EINSHTEIN「気持ちが広くなっているからこそシビアなことも受け入れられる」
■知見が増えてくると自分なりに考えることが増えて視野も広がって
■自分のことを客観的に見られるようになりました
――EINSHTEINさんのラブソングはかねてから、女性が聴いて“こんなふうに愛されたらいいな”、“こんなふうに思ってもらえていたらいいな”と浸れる楽曲がすごく多い印象があったので、おっしゃっていただいたことには納得です。だから「24」みたいな切り口のラブソングはとても意外だったんですよね。
EINSHTEIN:あ、そうですね。確かに。めちゃくちゃ身勝手ですもんね(苦笑)。
――歌詞にも《俺はなんて無責任なんでしょうか》とあるとおり、その人を大切に思うからこそ自分では幸せにできない。ほかの人と幸せになってほしいと別れを選ぶ楽曲です。
EINSHTEIN:この曲が、冒頭で話したずっとラブソングを書いてきた相手に宛てた最後の曲なんですよ。『Letter』で彼女への思いは書ききったけど、ちゃんと最後を締めくくる曲を書こうという気持ちのもと書いたんです。だからかっこつけないで、リアルのリアルを出すことにしました。やっぱり実体験とはいえ歌詞を書くときはちょっと化粧したりするんですよ。でもこれはほんとに化粧ゼロ。ただの僕の気持ちそのまま、みたいな(笑)。ほかの曲と比べると、結構タガがはずれているかもしれないです。
――女性は本当に限界だと思えば離れていくので、離れないということは一緒にいたいということなんですけど、男性からすると《何かしてあげたいのに金はゼロ》といった状況は耐え切れないんだろうなとは思います。
EINSHTEIN:くだらない男のプライドですよね(苦笑)。何もしてあげられないことを勝手に気に病んでしまう。タイトルの「24」は24歳という意味なんですけど、この曲を書いたのが24歳で、実際に別れたのはそれよりも前なんです。でもこの曲を書いたことでようやくあの女性との恋愛が終わったなと気持ちに整理がつけられたので、「24」というタイトルにして。別れを切り出したのは俺だけど、ずっとその人は心の中にいたんですよね。
――大切に思う気持ちが大きいがゆえにお別れしたわけですから、そうですよね。ちなみにこの曲が書けるまでに何年掛かったのでしょう?
EINSHTEIN:何年やろ。3年弱くらいかな?
――となると、「花」の気持ちを書けるようになったのと同じくらいということですか?
EINSHTEIN:うんうん、確かに。そうですね。
――ということは、EINSHTEINさんの心の中に長い期間もやもやとしていたものが、ちゃんと音楽に反映できた分岐点が2021年だったのかもしれないですね。ずっと抱えてきた過去や思い出も、ちゃんと曲の中にしまえたということかも。
EINSHTEIN:ああ、確かに。思い出ってすごく綺麗だし、嫌な思い出も美化されていくじゃないですか。当時はそこまで重んじていなかったのに、いざ振り返ってみるとキラキラして見えて、あのときに戻りたいという気持ちが年々増したりして。今でも歌詞に思い出の情景描写をすることは多いですね。
――“誰かの青春の歌になって、それが思い出になって、聴いたらその青春が蘇ってくるような曲を作っていきたい”ともよくおっしゃっていますものね。
EINSHTEIN:僕自身、その当時聴いていた曲を聴くとその時期のことを思い出したり、その当時の光景が思い浮かんだり、匂いが蘇ったりするんです。だから聴いてくれる人にも同じような体験をして、幸せな気持ちになってほしいんですよね。思い出は自分を癒してくれるものですし、それが僕の場合は曲になっているのかなとも思います。
▲『Flower』
――そういった様々なラブソングがあるなかで、存在感を放つのが「UNROCK」。ラップで爽快に駆け抜けていくユニークな楽曲です。
EINSHTEIN:かなり気に入っている曲です。僕は友達としゃべるときにすごくふざけるタイプで、意味わかんないことばっかり言っちゃうんです。この感じも曲にできたらいいなと思って作ったのが「UNROCK」です。“で、結局この曲は何を歌ってんの?”みたいな感じのことがやってみたかったので満足しています。そういう曲も前から作ってはいたけど、こんなんリリースできへんわと思っていたんですよね。
――綺麗なものにしなきゃと思っていらっしゃったから。
EINSHTEIN:でも今回はそういうものも全部なしにしているので、フラットにこの曲入れちゃおうって思えましたね。たくさん言葉遊びをしてみました。
――ラストは「ヘベレケ」という飲み会を舞台にした楽曲ですが、前作のフルアルバムのラストに収録されている「乾杯」とも関係があるのでしょうか?
EINSHTEIN:毎回ラストは酒の曲を入れられたらなと思っているんです。僕が普段からお酒を飲むというのもあるんですけど、アルバムの最後は泣けるとか勇気づけるとかそんなんじゃなくて、酒飲んでパーッとやって明日からまた頑張ろうみたいな感じにしたいんですよね。
――コーラスやガヤもたくさん入っているので、楽しい雰囲気が伝わってきます。
EINSHTEIN:一緒に作ってくださったAKIRAさんという作家さんが、コーラスを60種類ぐらい用意してくださったんです。コーラスの入れ方なんて全然わからないんで、AKIRAさんがイチから全部ディレクションしてくれて。すっごい音数録りましたね。120ぐらい録ったのかな。それで完成したものを聴いて、すげえ! こんなことできるんや! これほんまに俺の曲!? みたいにテンション上がりました。
――『Flower』が完成したことはEINSHTEINさんのアーティスト人生でかなり重要な体験になっているのではないでしょうか。
EINSHTEIN:感じるものはいっぱいありましたね。でも2022年の3月には全曲完成していたのと、それ以降にもいろいろな曲を作っているので、実はもう次のモードに移っています(笑)。というのも、2022年は大人になったという実感がいちばん生まれた年だったんですよね。
――と言いますと?
EINSHTEIN:ただ曲を作るだけでなく、自分やシーンを分析してみたり、数字を気にしてみたり、今まで見てこなかったところに首を突っ込んでみたんです。知見が増えてくると自然と自分なりに考えることが増えて、視野も広がって、自分のことを客観的に見られるようになりました。自分の感情が最優先で、自分が良ければそれで良いと思っていたのが、今自分は何をすべきなのかを冷静に見極めるようになった。シビアなことと向き合わなきゃいけないことも多いですけど、気持ちが広くなっているからこそ受け入れられていますね。
――「花」みたいな曲が作れたからこそ、それだけ余裕が生まれたのかもしれませんね。
EINSHTEIN:うん、そうですね。だから2023年は新しいことにいろいろチャレンジできたらなと思っていて。事務所の先輩のONE☆DRAFT のDJ MAKKIさんと一緒に曲作ったりしているんです。
――へええ、そうなんですね。
EINSHTEIN:DJ MAKKIさんとは前々から仲良くさせていただいていて、よくごはんとか飲みに行ったりするんです。僕はワンドラさんの大ファンなので、カヴァーがしたいと話したら“カヴァーよりも作ったほうが早いんじゃない?”と言ってくださって、60曲くらい送ってくださって(笑)。それも皆さんに聴いてもらえる日を作りたいと思っています。2023年も精力的に活動していきます。
取材・文:沖さやこ
リリース情報
https://lnk.to/EINSHTEIN_Flower
品番:FMH-153
レーベル:FROG MUSIC
01:カレン
02:ジャスミン
03:ドラマ
04:24 (関西テレビ「ウラマヨ!」11月度エンディングテーマソング)
05:Glory
06:UNROCK
07:Fallin’
08:ひこうき雲
09:花(読売テレビ「カミオト夜」, 「すもももももも!ピーチCAFÉ 」1月度エンディングテーマ)
10:My Love
11:ヘベレケ
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