ドレスコーズ、一夜限りの“裏・戀愛遊行”で示した『戀愛大全』の全て

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ドレスコーズが出演するライブイベント<L’ULTIMO BACIO Anno 22 12月21日のドレスコーズ>が12月21日、東京・The Garden Hallで開催された。そのオフィシャルレポートをお届けする。

◆ドレスコーズ画像

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終演後に公式Twitterで「先月のツアーのセットリストに入りきらなかったラブソングによる《裏・戀愛遊行》をお届けしました」と告げられた、年末恒例の恵比寿ガーデンホール公演。確かに11月30日に川崎CITTAで幕を閉じたツアー<戀愛遊行>と、重なりつつも趣を変えたセットリストで、これがどんな”裏”なのかと想像を掻き立てられるライブだった。

マンボの王様ペレス・プラードと米シンガーのローズマリー・クルーニーが組んだ「Sway」が流れる中、グラマラスに光るスパンコールのトップスで現れた志磨遼平を迎えたのは、ツアー・メンバー(有島コレスケ(B)、田代祐也(G)、ビートさとし(Dr)、中村圭作(Key))に、スペシャルゲストとしてケンゴマツモト(G/THE NOVEMBERS)を加えた面々。中村のキーボードがイントロを奏でた「やりすぎた天使」から、この夜は始まった。

シンプルに考えるなら、ツアーでは終盤に演奏した「やりすぎた天使」からスタートし、ツアーでは幕開けだった「ナイトクロールライダー」を終盤に持ってくる流れは、“裏”と言ってもいいだろう。だが、志磨遼平のやることだ。もっと別な意味での“裏”があるに違いない。

振り返ればツアー<戀愛遊行>は、そのベースとなるのは最新作『戀愛大全』のはずが全曲は演奏されなかった。もちろん、だからと言って不満を覚えるようなライブではなく、ドレスコーズの定番曲や「Mary Lou」「コミック・ジェネレイション」など毛皮のマリーズ時代からの代表曲、寺山修司の音楽劇『海王星』の曲など志磨の全てを凝縮したような内容だ。ラブソングという縛りに掛かる曲なら志磨には山ほどある。

この夜に演奏したのは前述のように「ツアーのセットリストに入りきらなかったラブソング」なのだが、最新作の「夏の調べ」「わすれてしまうよ」「横顔」の3曲は、むしろこの夜のためにとっておいた曲のようにも思える。「夏の調べ」はシティ・ポップス風の華やかさををまとい、「わすれてしまうよ」は軽やかに別れを告げる歌になっていた。中でも「横顔」のこの日の演奏は、ドレスコーズにとって会心のものだったのではないだろうか。歌い終えてからのMCで志磨が説明したように、録音では鍵盤だけで歌っているが、この日はバンドアレンジでドッシリしたバラードに変わり、志磨の歌も一段とドラマチック。間奏ではケンゴマツモトのフリーキーなギターソロが狂気を加えていたのが印象的だった。このアレンジが裏なのか表なのか、はたまたスピンオフなのか、今も思い起こしながらワクワクしている。

「横顔」の新アレンジとケンゴマツモトの参加はバンドにとっても刺激になったのだろう。この曲に続いた「ハーベスト」では志磨のヴォーカルが一段とパワフルになり、間奏ではケンゴマツモトが近づくと田代が応えるように立ち上がってふたりが向き合いプレイするシーンも。これには志磨も驚いていたようだ。







ツアーでも披露した曲も、スペシャルなライブである上にケンゴマツモトの参加もあり、アッパーな演奏になっていたようだ。「ぼくのコリーダ」はケンゴマツモトのギターが華を添え、「ラストナイト」はダンサブルな演奏に。本編最後を飾った「ナイトクロールライダー」は長いヴァージョンになってオーディエンスと応酬を楽しんだ。『戀愛大全』のレコーディングからツアーを経て仕上がったバンドの盤石の演奏が、この日はまた新しい味わいを持っていたのが面白い。

さて、最新作収録曲の他はガラリと入れ替わっていた。パワフルなドラムと裏腹に幽霊のようなポーズをとりながら歌った「Ghost」、オーディエンスのハンドクラップにバンドも熱を帯びた「才能なんかいらない」、お約束の銅羅を志磨が鳴らして始まった「上海姑娘」に場内は一段と湧き、志磨とともに腕を大きくなびかせた。そしてツアーでも演奏した「コミック・ジェネレイション」で更にヒートアップしたことは言うまでもなく、声を出せないオーディエンスの心の叫びを聴くように志磨は耳に手を当て「歌っちゃダメなんじゃないか?やめなさい!」などと呼びかけた。歌えない中で歌っていることを想像するアイロニカルな情景は、志磨の得意とするところ。オーディエンスを共犯に巻き込んで、してやったりというところだろう。

そんな遊び心もあったからこそ、アンコールのスペシャル感が際立った。「今年一番最初にできて、一番最初にみなさんにお届けした曲。心を込めて歌います」と始めた「エロイーズ」は抑制の効いた演奏がドラマチックな志磨の歌を引き立てた。そして曲の終盤、歌いながら志磨はピースマークにした右手をまっすぐ上に伸ばした。

「今年もお世話になりました。どうもありがとう。当たり前だったことが当たり前じゃなくなると言うのが今年だけじゃないけどここ数年何回も僕ら味わって。来年がどうかいいものでありますように、あと世界中の人に幸せなクリスマスが訪れますように。僕は戦争反対です。それでは、良いクリスマスを」

田代がクリスマスらしいリフを加えていった「クリスマス・グリーティング」は、この季節ならではの曲。だが今はこの曲の歌詞《僕らが旅したあの街に 争う街に 悲しみに暮れた街に同じ朝がくるよ クリスマスの朝が》がリアルに心を震わせる。《世界中の恋人たちに幸せを》《ぼくらにささやかな幸せを》といった無邪気に思えるフレーズも今は切実に響く。ステンドグラス風の照明が客席の壁を照らす中、ピースマークを掲げる人が何人もいた。

「2022年最後の曲です。また来年。それまでどうかみなさんお元気でね。お体に気をつけて。あと、来年も愛に気をつけてね!」

最後を飾った「愛に気をつけてね」は曲の途中にメンバー紹介を挟みながらバンドの熱も最高潮となり、志磨は下手のステージ外に置かれたスピーカーの上に乗って「Baby、あんたなんか、あんたなんか!」と煽り、反対側でも同様に「きらいきらいきらい!」とオーディエンスを指差し中指を立てて叫び続けた。彼ならではの最高の愛情表現だ。この逆説的な表現こそがキーなのだと、ラブソング縛りのツアーとスペシャルな夜を見て思い当たった。




なぜこのご時世に『戀愛大全』を出し<戀愛遊行>ツアーをやったのか。それは「コミック・ジェネレイション」で歌うように《愛も平和も欲しくないよ だって君にしか興味ないもん》というのが本音だとしても、そんな状態になるためにこそ愛も平和も必要なのだ。そんなアンビバレントな思いが『戀愛大全』になったのではないか。そんなことはおくびにも出さず回ったツアーを表とすれば、ストレートにピースマークを掲げて見せたこの夜を<裏・戀愛遊行>とし、両方をパフォームすることで『戀愛大全』は完成する。そんなことを私は想像している。

楽しいライブで年末を迎えた今こんなことを書くのは無粋だけれど、志磨が作ってきた楽曲が魅力的だからこそ、その曲にも彼の歌の機微にもライヴのダイナミズムにも、隅々まで覗き込み掘り下げ理解したいと言う気持ちを抱いてしまうのだ。彼が影響を受けてきた音楽の多くにはそうした力があったはず。それを受け継ぎつつ彼は新時代の音楽を作り続け歌い続けている。これからも、そうあり続けるだろう。

取材・文◎今井智子
写真◎森好弘

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■<L'ULTIMO BACIO Anno 22 12月21日のドレスコーズ>2022年12月21日(水)@東京・The Garden Hall セットリスト
01. やりすぎた天使
02. ぼくのコリーダ
03. Ghost
04. 夏の調べ
05. わすれてしまうよ
06. 才能なんかいらない
07. 横顔
08. ハーベスト
09. ラストナイト
10. 上海姑娘
11. コミック・ジェネレイション
12. ナイトクロールライダー

En1. エロイーズ
En2. クリスマス・グリーティング
En3. 愛に気をつけてね

セットリストプレイリスト:https://dress.lnk.to/2022christmas

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the dresscodesTOUR2022『戀愛遊行』LIVE Blu-ray & DVD「タイトル未定」

2023年4月19日(水)発売
予約リンク:https://dress.lnk.to/tour2022

■Blu-ray
KIXM-530 ¥6,380(税抜価格 ¥5,800)

■DVD
KIBM-956 ¥5,280(税抜価格 ¥4,800)

■特装盤
NXD-1082 ¥9,000(税抜価格 ¥8,182)
※KING e-SHOP限定商品
※形態:Blu-ray
※特典:豪華ブックレット

[映像特典]内容未定
※Blu-ray/DVD共通

[収録内容]※Blu-ray/DVD共通
01. ナイトクロールライダー
02. 聖者
03. 惡い男
04. みずいろ
05. 紙の月 (音楽劇『海王星』)
06. MAYBE
07. ラストナイト
08. すてきなモリ夫(モリー)
09. エロイーズ
10. Mary Lou
11. やりすぎた天使
12. コミック・ジェネレイション
13. 恋をこえろ
14. 愛のテーマ
15. (序曲)冬の朝

※収録内容は変更になる可能性がございます。

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